Greeting

会長挨拶

 同窓会会長の岩崎清悟でございます。
 このたび、直前同窓会役員の皆様を始め、多くの諸先輩方の強いお勧めをいただき、図らずも伝統ある韮山高校同窓会の会長を務めさせていたただくことになりました。
 齢67を数えるとはいえ、同窓会にありましては未だ若輩であり、浅学菲才であります上に、まことに申し訳ないことですが、同窓会会務の経験はまったくございません。
 この上は、久保田筆頭副会長をはじめとする今期役員の皆様のご尽力を賜りながら、同窓会活動の一層の充実に微力を尽くしてまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 実は、こうしてお話申し上げております私には、かつて味わったことのない重いプレッシャーがのしかかって来ております。
 静岡ガス株式会社のトップとして10年近く、株主総会や投資家説明会の会場に立ち、あるいは、県経営者協会の会長として、公の場に出ることも度々でありますが、これらとは明らかに異なる雰囲気がここにはあるのでございます。
 まさに140年の伝統の重みでしょうか、こうして多くの同窓の皆様を前にいたします時、それを強く実感しているのであります。
 この伝統をいかに継承し、発展させていくか、これが私ども同窓会役員に課せられた役割りであると認識しておりますが、中でも、私が考える今日的な二つの課題について申し上げます。
 
 一つは、われらが韮山高校の教育現場において、「自由闊達」、「文武両道」の良き伝統を継承して行って欲しいということについてであります。
 大学進学率が50%を超える中で、一流大学を出て一流会社に就職するという単一思考の風潮が高まり、勢い、進学準備の有利さだけで高校を選別する傾向が強まっているように感じております。
 かつては学年の40%以上を占めていた三島市域からの入学者が、近年では30%に低下しており、その理由に、「文武両道は勉強の妨げ」というご両親の判断もあるやに窺っております。
 学校の現況については、後に勝又校長先生からお話があると思いますが、全校生徒の7割近くが運動部に属するという中で、高校新体力テストでは、毎年、男女共に1位かこれに僅差の位置にあるなど、最優秀校の名を欲しいままにしているのであります。文化部においても、将棋や囲碁の全国的な活躍を目にしますし、美術や音楽でも優秀な成績を上げています。
 勉学におきましても、進路関係の年間シラバスを拝見しましたところ、入学時から大学受験に至るまで、学校行事や部活との両立を図りながら、希望進路への成長が図られるよう、実にきめ細かく指導方針が示されております。
 まさに「文武両道」を実践されているわけでありますが、この良さが十分に認識されていないところに、今日的な問題があると感じております。
 日本を代表する分子生物学者であり本年に文化勲章を受章された本庶佑博士、現在、静岡県公立大学法人の理事長を勤めておる方でありますが、この先生との懇談で、世界的な研究成果に至る最後の力を問いましたところ、『「集中力」であり、これを持続させる「体力」である』とのお答えでした。
 私が接してきました多くの経営者や社会のリーダーにおきましても、「青白き学才」は見ることがなく、多くが「強い信念」と「体力」を持った方々ばかりであったように思います。
 「自由闊達」、「文武両道」のわが校風は、まさに「世に出て輝く」人材を輩出する大きな力を秘めていると評すべきであり、校長先生を始め高校関係者の皆様におかれては、自信を持ってこの伝統の維持発展に努めていただくよう、私ども同窓会も応援してまいりたいと考えております。
 
 いま一つは、我が韮山高校の地盤たる伊豆地域の振興についてであります。
 今年5月に「日本創成会議」が発表した「消滅可能性都市」に伊豆地域から8市町が入っていたことからも知られるとおり、当伊豆地域の再興は待ったなしの状況にあります。
 同会議は、20才から39才の「若年女性」の人口流出が、国立人口問題研究所の推計以上に進むとしたわけですが、若者の東京圏への一極集中がますます進む現下の状況からは、過ぎた警告と軽視するわけには行きません。
 当地域の持つ「場の力」に磨きをかけ、魅力を増すことで、東京圏からの来訪や移住を促し、雇用機会を創出していく必要があります。
 伊豆地域は、今、場の力に磨きをかける格好の機会を迎えていると認識しています。伊豆半島全体が世界ジオパークへの加盟を目指しており、われらが学祖・江川坦庵公築造の韮山反射炉は、明治日本の産業革命遺産として世界遺産登録を目指しています。伊豆地域が日本はもとより世界からも注目される、そうした局面をまさに迎えているのであります。
 加えて、坦庵公の遺品4万余点が重要文化財指定を受けました。坦庵公のご業績につきましては、近年、明治以降の近代国家建設の礎を成したものとして、注目が高まっているところであります。
 本日のご講演をお願いしております小長谷建夫様からは、坦庵公の歴史的評価をお聞きすることができるのではないかと、大変楽しみにしております。
 また、ご来賓として、江川家42代ご当主の江川洋様においでいただいております。江川様からは、江川文庫代表として、重要文化財管理の今後の取り組みについてお話しいただけることとなっております。お二方、どうぞよろしくお願いいたします。
 学祖である坦庵公の足跡が歴史的に評価されますことは、われらの誇りでありますとともに、伊豆地域の振興にも大いに貢献することになると期待しているところであります。
 伊豆地域には、同窓から多くの首長さん、県会議員さんが揃っています。これらの方々を先頭に、我々同窓会も地域の振興に力を尽くしてまいりたいと考えております。
 
 結びに、本日は各地から300名近くの同窓の皆様にご参集いただいております。大いに旧交を温めていただきたいと存じますとともに、本日の総会設営をお願いしました中豆ブロックの皆様に御礼を申し上げ、開会のご挨拶とさせていただきます。
(2014年8月24日韮高同窓会総会)