オトナの食育 

   
資料編 第33回 (通巻第203回) 2024410掲載 千葉悦子(高28回)

「フェイクを見抜く」・「科学がつきとめた疑似科学」のお勧め

紅麹原料を含む機能性表示食品による健康被害の問題

  今月号は、食の安全に関して今年出版された本の紹介をする予定でしたが、3月下旬に「紅麹原料を含む機能性表示食品による健康被害の問題」が起きたので、これを取り上げます。ただし、今年度の予算として優先的に購入するとか、目を通すようお勧めするために、本の題名等は載せました。

 「紅麹原料を含む機能性表示食品による健康被害」の原因物質は、この原稿を書いている46日朝の時点では不明です。意図しない物質の一つとしてプベルル酸が発表されていますが、その物質が腎臓病を発症させるか否かについては、ほとんど研究されていないようです。

 紅麹からは産出されないと考えられる物質が含まれていたという事実から、長村洋一氏や小島正美氏らが指摘するように、GMP(適正製造規範)をしっかりすれば起こらなかったと思われ、再発防止にはそれが一番大切と考えます。GMPを実行するのは大変ですが、問題が起きれば企業の存続の危機だけではなく、日本のブランド価値も落ちてしまうでしょうから、皆で取り組むべきです。消費者としても、GMPのしっかりしている企業の製品を選ぶという視点を大事にしたいです。

 ところで、今回の問題そのものではないにしても、紅麹についての警告は、畝山智香子氏の著書『「健康食品」のことがわかる本』(2016)にありました。「オトナの食育」の資料編ではなく所感編ですが、通巻119回、2016/3/10号「健康食品の宣伝は、毎日がエイプリルフール?」で紹介した本です。次に、同書p.209210から抜粋します。

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 「紅麹」は「正常コレステロール値を維持する」と謳う多くの食品サプリメントに使用されるコメにつく赤カビです。ANSES(フランス食品環境労働衛生安全庁)は紅麹を含む食品サプリメントの摂取に関連すると思われる25の有害作用報告(主に筋肉と肝臓)を受けとりました。(中略)

 ANSESはモナコリン(千葉注:紅麹の有効成分)を含む紅麹食品サプリメントの摂取が、遺伝的素因を持つ、病状がある、治療中であるなどの感受性の高い人たちにはとりわけ健康リスクを引き起こすおそれがあると考えました。

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 なお、同書では「感受性の高い人」とは、妊婦、授乳中の女性、子供、青年、70歳以上の人、グレープフルーツを多量摂取する人などとしていますから、広範囲と感じます。

 本をすぐには読めないけれど、短時間で、もっと知りたい場合は、FOOCOM(科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体)の投稿コーナーにある「紅麹サプリ問題を2016年の著書で警告(畝山智香子さん)」をお読みください。https://foocom.net/column/contrib/24499/

 さらにSFSS(食の安全と安心を科学する会)が開催した「食のリスクコミュニケーション・フォーラム2020」での畝山智香子氏の資料「新規食品成分の安全性確保について」もご覧ください。

https://www.nposfss.com/data/risc2020_02_uneyama.pdf?_gl=1*16lbuup*_ga*MTg0NTMyMjY3MC4xNzEyMTQzMTc5*_ga_0WZB6HFY5W*MTcxMjIxNTA5Mi4yLjEuMTcxMjIxNTQ0Ny42MC4wLjA.

この資料p.2右下の図のように、一般の人が抱く健康食品に対するイメージより、研究者が抱くイメージの方が、はるかにリスクが大きく、図の上のスライドに、健康食品は「きわめてリスクが大きい」とあります。

 なお、畝山氏は「オトナの食育 資料編 第28(通巻183)2022/3/10号」でお知らせした本『ほんとうの「食の安全」を考える』の著者でもあります。

食情報に関しては、健康食品についてだけでなく、広く知る方がよく理解できるので、今年出版された「フェイクを見抜く」「科学がつきとめた疑似科学」の2冊もお勧めします。一部の個人や企業を利する、針小棒大なリスク情報に振り回されず、本当にリスクの高い物から対策できるよう、「オトナの食育」で紹介したような本が、各図書館等に置かれ、より多くの人が読むよう希望します。

■引用文献
畝山智香子『「健康食品」のことがわかる本』(2016)日本評論社

■主な参考文献等
畝山智香子「紅麹サプリ問題を2016年の著書で警告」寄稿コーナー)
 FOOCOM.NET 44https://foocom.net/column/contrib/24499/

畝山智香子『新規食品成分の安全性確保について』
  SFSS
2020830日に開催した「食のリスクコミュニケーション・フォーラム2020

  第2回『健康食品のリスコミ~天然成分のリスクは?~』の資料

 <畝山先生講演レジュメ/PDF:423KB
https://www.nposfss.com/data/risc2020_02_uneyama.pdf?_gl=1*16lbuup*_ga*MTg0NTMyMjY3MC4xNzEyMTQzMTc5*_ga_0WZB6HFY5W*MTcxMjIxNTA5Mi4yLjEuMTcxMjIxNTQ0Ny42MC4wLjA.

松永 和紀
 「なぜ紅麹サプリで健康被害が起きたのか…カビ毒の専門家が「プベルル酸とは断言できない」と慎重になる理由」
  (プレジデントオンライン)


(松永氏が小西良子・東京農業大学応用生物学部教授に伺った記事)44https://news.yahoo.co.jp/articles/c76393da6dcc071204722c42cb994f60b893e663?page=1

小島正美
 
「〈メディアが報じぬ問題の本質〉小林製薬の責任は重大だが、紅麹サプリメント事故で問われるべきある課題とは?」Wedge(ウェッジ) Yahoo!ニュース4/3配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/1a5f466612fb2734f3a6d2c7da5a831f7f333273?page=1

長村洋一
 
「保健機能食品制度の制度的欠陥が引き起こした紅麹事件」42FOOCOM.NET https://foocom.net/column/takou/24483/

児林聡美
 「国が責任を負ってくれない?機能性表示食品とは ? 43FOOCOM.NET https://foocom.net/column/nutrepi/24487/


日本食品添加物協会<食品添加物「ベニコウジ色素」について>329
https://www.jafaa.or.jp/wp-content/uploads/2024/03/%E9%A3%9F%E5%93%81%E6%B7%BB%E5%8A%A0%E7%89%A9%E3%83%99%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%82%A6%E3%82%B8%E8%89%B2%E7%B4%A0%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6.pdf


森田満紀「ベニコウジ色素(食品添加物)と、小林製薬の紅麹原料(食品)は違うもの」326https://foocom.net/secretariat/foodlabeling/24470/

日本経済新聞202441日朝刊
  小林製薬「紅麹」で調査 和歌山工場立ち入り 厚労省など 台湾、摂取6人「体調不良」


日本経済新聞202444日朝刊
 「紅麹」流通 全都道府県に 回収命令3
商品、86万個

日本経済新聞202446日朝刊
 「紅麹」健康被害 やまぬ不安 医療機関の受診1100人超す 厚労省「仕入れた173社は被害なし」 


腎臓の病気「ファンコニー症候群」筋力が低下 骨に痛みも サプリ被害者に多く 学会独自調査

オトナの食育 資料編 第28(通巻183)2022/3/10号掲載 千葉悦子
 『ほんとうの「食の安全」を考える』リニューアルのお知らせ
 「がん予防」の参考に
 http://www.nirako-dosokai.org/melmaga/shokuiku/date28.html

オトナの食育 所感編 第81(通巻119)2016/3/10号掲載 
 健康食品の宣伝は、毎日がエイプリルフール?
 http://www.nirako-dosokai.org/melmaga/shokuiku/shokan81.html

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