オトナの食育 

資料編 第28回(通巻183回)2022/3/10号掲載 千葉悦子(高28)

ほんとうの「食の安全」を考える』リニューアルのお知らせ
「がん予防」の参考に

 

 
 畝山智香子氏の2009年出版『ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想』を加筆・修正して文庫化した本の紹介です。初版本から10年以上たちましたが、食の安全に関しての考え方の基本は揺るぎません。しかし、新しい知見や話題―たとえば、ゲノム編集等―が出てきて、初版当時から変更となった規制もあるので、初版の「その後」も簡潔に書かれています。また、初版に比べて字は小さいですが、文庫なので持ち歩くのに適します。

 どの部分も大事ですが、特にお勧めなのは第2章「発がん物質のリスクの大きさをどう考えるか」です。日本人が一生のうちにがんと診断される確率は2人に1人と、皆に関わることでありながら、がんの原因や予防に関して誤解が多いと思われるからです。

 国立がん研究センターHPで「科学的根拠に基づくがん予防」を見ると、第1に「タバコは吸わない」、次が「他人のたばこの煙を避ける」です。飲食物に関しては「節酒する」「食生活を見直す。・・・減塩する。野菜と果物をとる。熱い飲み物や食べ物は冷ましてから。」とあります。

後は「身体を動かす」「適正体重を維持する」が載り、どれも生活習慣に気を付けることです。
れらを実行すれば、がんになるリスクが半減します。

食品添加物や残留農薬を避けてもがんの予防にはなりませんが、誤解したままの人がいるようです。上記のように、国立がん研究センターのがん予防では、食品添加物や残留農薬は書かれていません。畝山氏が本書で次のように述べていらっしゃいます。「食品添加物や残留農薬や環境汚染物質を心配するより、ふつうの食品のリスクを分散するための、バランスのとれた食生活が大切であるということで世界中の科学者が一致しているのです。(中略)残留農薬や食品添加物を避けることが健康的な食生活だという誤解も、バランスよく多様な食品を食べるという助言とは一致しません。むしろ選択肢を狭めることでリスクが高くなる方向に働きます。信頼できる情報源からの情報入手が必要です。

 食品添加物や残留農薬等を悪者にして利益を得る人がいるけれど、言論の自由が大事なので、取り締まりを完全には出来ないことを考慮し、各自が持つ食品等へのイメージを再考することをお勧めします。その際に、畝山氏の本を参考になさると良いと存じます。それで、各学校や市町村等の図書館に本書があると理想と思います。



 
■引用文献等

 畝山智香子氏『ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想』
                 DOZIN BUNKO 006
化学同人(202112月)


■参考文献等

 国立がん研究センター 癌情報サービス 最新がん統計

 https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

 国立がん研究センター 科学的根拠に基づくがん予防 更新・確認日:20201029

 https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html

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