オトナの食育
所感編 第90回(通巻128回)2017/1/10号掲載 千葉悦子(高28)
持続可能な漁業により、魚食文化の存続と国防を
新年おめでとうございます。 年頭に、一番お伝えしたいのは「魚や国を守るなら、今でしょ!」です。私が長年所属する「食のコミュニケーション円卓会議」の2016年9月定例会で、片野歩氏による「日本の漁業は復活できる!」を拝聴して、日本の漁業の惨状に仰天し、鰻や鮪のようにほとんど手遅れとならない内に、一人でも多くの人へ知らせようと思いました。 世界では漁業が右肩上がりなのに対して、日本は乱獲が主原因で衰退しているそうです。本来、指導するはずの水産庁が機能不全で、その情報を鵜呑みにしがちなメディアがあり、世界の漁業の様子を知らずに、昔ながらの考え方を変えられない漁業関係者や漁業に関心を持たない消費者がいて、票に結びつかない問題に冷淡な政治家が多い、という構図だそうです。 消費者には権利と義務とがあり、魚を将来も食べたいなら、それが可能になるように、漁業について知る必要があります。幸い、水産庁や勤務先とかに睨まれそうなことも含めて、勝川俊雄氏(東京海洋大学産学・地域連携推進機構准教授)や片野歩氏(長年、水産物の買付業務に携わる)が最近、それぞれ著書を出版なさいました。その統計資料豊富な本を読めば、真実に近付けます。残念ながら、日本の魚食は輸入物に支えられていること等が分かります。 「魚がなくても、肉を食べればタンパク質がとれるのだから、かまわない」と考えてはいけません。世界で漁業が右肩上がりなのは、魚食が健康に良いことが知られるようになったこともあるのですから。 「基礎栄養学」の「脂質の栄養」の章に、次の記述があります。 n-3系脂肪酸が不足した場合、特に母親の妊娠期、授乳期に魚の摂取やn-3系脂肪酸が不足した場合には、子どもの喘息やアトピー性皮膚炎の発症リスクが上がるというエビデンスは蓄積されてきている。 ::::::::::::::::::::::::::::::::: なお、n-3系とn-6系脂肪酸とのバランスをとることの重要性については、「オトナの食育 第4回」に書きました。栄養面ではモンサント社が遺伝子組換えの技術を使ってn-3系脂肪酸の豊富な大豆を開発したとはいえ、豊かな食文化を守るために、魚を守りたいものです。 「水産資源の管理の推進について」の講演のお知らせ と き :2017年1月13日(金)18時半~20時半 短く書くと誤解が生じそうで心配ですが、詳しくは講演を聴くなり、本を読むとかなさって頂きたいです。 ■引用文献 ■主な参考文献等
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