オトナの食育
誰も儲からない 知ってて得する食の情報
第4回 2006/4/10号掲載    千葉悦子(高28)


バランスのよい食生活 その4
脂質の過剰摂取を避けるには Ⅱ 子ども中心


 花の季節になりました。
 スギ花粉は、この原稿が公開される頃おさまっているのではと期待しながら、書いております。
 脂質の取り方が、花粉症といったアレルギー疾患の症状を左右する場合があることも含め、皆様の健康に関わることを書きますので、春なので眠くなりがちなところ、いつもより化学の授業に近くなる内容で恐縮ですが、校訓「忍」を思い出し、お付き合いください。
 
Ⅰ脂質の内訳は?
 前回、「動物性の脂肪は少なめにし、植物性や魚の油をしっかりとることを心掛けましょう。」と結んでおきました。
 前回は2月、真冬でしたので、肉料理が多くなりがちかな?と思い、また、極端に脂質を減らすと、皮膚がかさかさしやすいという問題もあるので、とりあえずそう書きました。が、植物性の油ならたくさん摂取しても大丈夫と誤解なさらないでください。どの脂質も脂質共通の問題があり、前回PFC比率のところで書きましたように摂り過ぎれば肥満・高脂血症等の問題が起こります。
1.脂質の化学構造
 脂質の基本形と言えるトリアシルグリセロール(トリグリセリド、中性脂肪の主なもの)は、グリセロール(グリセリン)に脂肪酸が3つ結合したものです。脂肪酸の種類と量により、脂質の性質、体の中での働きが異なります。
 なお、よく問題となるコレステロールも脂質の一種で、4個の環構造を持つ独特の形に特徴があります。
2.脂肪酸の種類・性質・主な所在
 脂肪酸は、長い炭化水素(炭素と水素から構成)の鎖をもつカルボン酸(COOH基を持ちます)です。
 脂肪酸は二重結合のない飽和脂肪酸と二重結合をもつ不飽和脂肪酸とに大別できます。不飽和脂肪酸は二重結合の数により、一価不飽和脂肪酸二価不飽和脂肪酸多価不飽和脂肪酸(二重結合を2つ以上持つ脂肪酸の総称)に分けられます。
 さらに、二重結合の位置により不飽和脂肪酸を分類します。メチル末端(CH₃-)から数え、最初の二重結合の位置が3番目の炭素からの場合は、n-3系列とよび、最初の二重結合の位置が6番目の場合はn-6系列とよびます。
 飽和脂肪酸は、血液中の中性脂肪やコレステロールを増やす働きがあり、不飽和脂肪酸は、おおむねコレステロールを低下させるなどの働きがあります。飽和脂肪酸は牛・豚などの肉類に多く、融点が高いです。こういった常温で固体の脂質を「脂肪」と呼ぶことがあります。
 不飽和脂肪酸は一般に植物性油脂・魚油に多く、二重結合が多いほど融点が下がり溶けやすくなります。 
例外もあります。植物性油脂のパーム油は、飽和脂肪酸約50%、不飽和脂肪酸のうち一価不飽和脂肪酸約40%、多価飽和脂肪酸約10%です。パーム油は日本の家庭では直接使いませんが、比較的安価のようで、クッキー・ドーナツ・チョコレートなどのお菓子やアイス、スナック・ファーストフード・インスタントラーメン、マーガリンの原料等に多用されます。これからは冷菓を子どもたちが食べる季節になります。たまには子どもが食べるものの品質表示をチェックしましょう。もっとも、「パーム油」より「植物性油脂」と表示する方が消費者に受けると思う業者もいるようで、「植物性油脂」としか書いていない場合もよく見受けられます。つまり、私たちは知らずにパーム油を摂取していることが多そうです。

 n-3系脂肪酸はα-リノレン酸・EPA・DHAなどで、魚油や一部の植物油に、n-6系脂肪酸はリノール酸・アラキドン酸などで、植物油に多く含まれます。
 ヒトや動物の酵素には、二重結合を入れられる位置が限定されていて、ヒトは必要であるのにもかかわらず、α-リノレン酸やリノール酸を作ることができません。それでこれらを必須脂肪酸と呼び、食物から摂取しなくてはなりません。また、n-3系列とn-6系列の間では互いに変換することができません。しかも互いに競合する働きを持ちます。
たとえば、n-6系列が善玉といわれるHDL‐コレステロールの低下や、動脈壁における悪玉といわれるLDL-コレステロールの酸化(動脈硬化促進)をするのに対し、n-3系列が血栓症、動脈硬化の予防をします。 また、n-6系列のアラキドン酸が過剰になると、それがつくるエイコサノイドがアレルギーを悪化させるそうです。
 これだけ書くと、n-6系列が悪くてn-3系列が良いようですが、n-3系列に「肝臓障害」も書いてある本があり、また、アレルギーには良くても、感染症には弱いという面もあります。
 以上のようなわけで、n-3系列とn-6系列の脂肪酸をバランスよく摂取する必要があります。

3.脂肪酸の種類による流行廃り
(1)リノール酸について

 20年以上前、韮高同期で薬剤師になった友人の一人が「リノール酸の多い油を頂くとすごくうれしいの。」と話したことが印象的です。
 いつしかリノール酸は廃れ、比較的最近はオレイン酸が脚光を浴び、さらに「コレステロールを下げる」「体に脂肪がつきにくい」などとうたった特色のある油や機能付き油が売れているとか。
 一般の消費者は、「科学の進展」や「企業の都合」に振り回されている感じがすることでしょう。しかも、何がなんだか分からない不快感も伴いがちです。
 この辺りの事情をよく知りたい方は、「こんなおもしろい脂肪があった!」をお読みください。なお、この本は分かりやすく書かれているので、「スタンダード栄養・食物シリーズ」といった固い本ではすぐに理解できない場合、先に読んでおくと概要がつかめ、固めの本でも読めるようになります。
 かいつまんで説明します。1950年代、朝鮮戦争で若い兵士の尊い命が失われ、20歳代でも動脈硬化が進んでいると判明し、脂肪の研究が進みました。当時、既にアメリカ人は動物性の飽和脂肪酸を大量に摂取し、
血中のコレステロール値が高くなり、動脈硬化を促進していました。
リノール酸にコレステロール値を下げる働きがあると分かり、日本にもリノール酸ブームが起こりました。リノール酸は植物油―特にサフラワー油(べにばな油)―に多く含まれる脂肪酸で、バターよりも植物油やマーガリンなどがもてはやされました。
コレステロール値を下げる働きは、リノール酸以外の不飽和脂肪酸にもあり、日本人は既にちゃんと不飽和脂肪酸を摂取していたので、リノール酸の効果はあまりなかったようです。反面、動物性の脂肪に対して魚や植物の脂質をあまりとらない、つまり不飽和脂肪酸の摂取の少ないアメリカ人にとっては、リノール酸の効果大でした。日米の食生活の違いを含めた研究結果の受け止め方をきちんと考えずに、日本ではアメリカの真似をしたというわけです。
 困ったことに、リノール酸摂取量が増えると、善玉といわれるHDLコレステロールまでも下がり、また、アトピー性皮膚炎・花粉症などのアレルギー体質の人にも向かないそうです。
 さらに、二重結合が2つ以上の脂肪酸は、リノール酸も含め、酸化されやすいという問題もあります。酸化された脂質には、食中毒の問題や最近マスコミやサプリメントの宣伝等でよく見かける活性酸素と同じような悪い面―老化やさまざまの病気の原因―があるのです。
 リノール酸は必須脂肪酸の一つであり、大事な脂肪酸であることは確かですが、1990年代に入り、無理にリノール酸をすすめることもないというふうになりました。

(2)オレイン酸について
 多価不飽和脂肪酸は酸化の問題があるため、2重結合を一つだけ持ち、酸化されにくい一価不飽和脂肪酸のオレイン酸が脚光を浴びるようになりました。オレイン酸を豊富に含む油の一つがオリーブ油で、近頃レストランでパンを頼むと、バターでなくオリーブ油が出てくることがありますね。
地中海地方は脂肪の摂取量が多いのに、比較的心筋梗塞が少ないことから、この地方でよく使われる油のオリーブ油が注目されたのです。
 オレイン酸の弱点は、多価不飽和脂肪酸に比べて、コレステロール低下の効果が少ないことです。「こんなおもしろい脂肪があった!」のp.90、13~14行によると、「日ごろから多価不飽和脂肪酸を多くとっていると、一価不飽和脂肪酸の比率を高めても、それ以上のLDLコレステロールの低下はあまり期待できないというわけです。」
 オレイン酸を多く含む食品は、他に、菜種油、米ぬか油、ごま油、アーモンド・カシューナッツなどです。
 2月号で紹介しましたギリシア風煮サラダにも、オリーブ油を使っています。
 酸化の問題に対処するには、抗酸化物を摂取することも大事です。
ビタミンCやE、ポリフェノール、カロテノイドなどです。イタリア料理を始め、オリーブ油をよく使う地中海地方の食材には、抗酸化物を含むトマト・レモン・赤ワインがよく使われます。さらに、ヨーロッパとしてはよく魚介類を使うので、心臓病の発生率を抑えてきたのではないか、といわれています。

4.上記の歴史から学ぶこと
 2006年2月26日 日本経済新聞朝刊 なるほど予防学「日本人対象の研究必要 脂肪と病気の関係」に国立がんセンター予防研究所部長 津金昌一郎氏が次のように書いています。「脳卒中には、血管が破れる タイプの出血性と、つまるタイプの梗塞性がある。血清コレステロールが低すぎると出血性の、高すぎると梗塞性の脳卒中が増えると考えられている。(中略)総合的に、健康で長生きするためには、どの程度の摂取量が最適なのか、日本人を対象とした疫学研究に基づく証拠が求められる。」
 つまり、食について現在の科学では分からないことが多々ありますし、食に関する情報の中には、まだ動物実験でしか確かめられていなかったり、欧米の人種にしか大規模な調査がなかったりすることが多いです。
宣伝は鵜呑みにせず、新聞記事も忙しい記者が専門知識を充分持たないまま書くことが多いようなので、「そういう見方もある」という程度に
し、一つ二つの記事だけで間違った解釈をして、偏った食生活を送らないようにしましょう。

Ⅱ子どもの頃から脂質の取り過ぎなどに注意を
 「スタンダード栄養・食物シリーズ1 人と健康」p.147によると
高脂血症とは、トリアシルグリセロール、コレステロール、リン脂質などの血漿脂質のうち、1つ以上の脂質が異常に増加している状態である。」ということですが、コレステロールを例にとって以下に書きます。
 「スタンダード栄養・食物シリーズ9 基礎栄養学」p.65によると、日本動脈硬化学会、“動脈硬化性疾患診療ガイドライン2002年度版”よりということで、高コレステロール血症は総コレステロールが220 mg/dl以上ということです。(孫引きで失礼いたします。)
 「2002年国民栄養調査」によると、男女ともに総コレステロールは20歳代から50歳代にかけて増加傾向があります。しかも女性の50歳代の平均値は224.3mg/dlと正常値を越しています。また40歳代男性の32.2%が220mg/dlを越しています。しかも、年々総コレステロール値は上昇傾向です。
 「平成12年度 児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書」によると、基準を総コレステロールの値が200 mg/dlとした場合、高コレステロール者の比率が、小学校3・4年生男子13.3%、女子13.8%、中学生男子9.5%、女子18.7%、高校生男子11.2%、女子21.8%です。
 中2の授業で「中高校生の男子約10人に1人、女子の5人に1人が高コレステロール。高コレステロールを含む高脂血症は肥満・高血圧・糖尿病とともに『死の四重奏』の一種で、動脈硬化につながりやすい。動脈硬化は血管が詰まるまで自覚症状なし、サイレントに進行。ある程度以上進むと元に戻らない。」などと説明すると、いつもはお気楽・いたずらそうな男子が「このクラスに5人もいるってこと!」と渋い表情になります。
 子どもが持ち帰る書類のうち、一番しっかり見なくてはいけないのは、通知表でなく血液検査結果を含む健康調査と私は思います。
 塾通いのために食事がおろそかになり、食事時間が遅くなり、高脂肪のファーストフードやお菓子、砂糖たっぷりの清涼飲料水を利用する回数が増えるのは、情けないです。

Ⅲ食生活上、現在の日本で一番大事なこと―個人の立場で
 食品添加物、残留農薬・ポストハーベスト、土壌や川や海の汚染による食品の汚染、BSE、鳥インフルエンザ等々、次々食に関する難問が取り上げられます。私は学生向けの授業や再教育講座を受け、いろいろ読んで自分なりに考えましたところ、今のところの結論は次です。
 現在の日本に住む人たちにとり、個人の立場としては、脂質の過剰 摂取や肥満の問題への対処を初めとするバランスの良い食生活が最も重要と考えます。
 マスコミや宣伝に流されず、生活全体を振り返り、何が一番大切か熟考して行きたいものです。

お薦めの料理・・・キャベツ・玉ねぎ・豚肉を使った料理2種

豚肉について 
 魚を推奨する話を書きながら豚肉料理ですが、経済・買い物の手間等考えますと、毎日、魚を主なおかずにすることは、なかなか難しいことでしょう。
 「スタンダード栄養・食物シリーズ5 食品学」p.49の“五訂 日本食品標準成分表”および“日本食品脂溶性成分表”より、という表によると、豚脂は牛脂より、飽和脂肪酸がやや少なく41.4%で、残りは不飽和脂肪酸です。なにも全部飽和脂肪酸というわけではありません。豚は牛より安価、飼料も少なくてすみ、社会全体としても日常食としてよいでしょう。
 豚肉には良質たんぱく質・鉄が多く、貧血の予防にもなります。ビタミンB₁が他の獣鳥肉より多く含まれるので、エネルギーをたくさん使う成長期の子ども、運動をよくする人、脚気になりやすい人には、お薦めです。気温が上がるとだるくなりやすいので、ビタミンB群もしっかり取りたいものです。それで、夏ばて対策には毎年、豚肉料理が登場します。

キャベツについて
 一年中キャベツが店頭にありますが、春のキャベツは安価な上に、特別に柔らかく、新鮮な感じで、洗って千切りにし、好みのソースやドレッシングをかけるだけとか、塩もみ・浅漬けとかでおいしいです。ぜひ、付け合せやサラダになさってください。
 けれど、そういう食べ方だけでは、新鮮なうちに1個使い切ることはできないでしょう。そこで加熱料理でかさを減らして、おいしく食べる方法2種を載せます。
 キャベツ100g当りビタミンC が41mg含まれ、食事摂取基準の大人の推奨量100mg/日の1/3以上です。生の千切りではいっぺんに100gは無理でしょうが、次の2種の料理ならおいしくて容易に食べられます。
 また、キャベツは緑黄色野菜ではなく、カロテンは少ないですが、ビタミンUという抗潰瘍因子が含まれます。

玉ねぎについて
 「スタンダード栄養・食物シリーズ5 食品学」p.187によると、「血栓や動脈硬化の予防に効果のある血小板凝集阻害作用が認められている。」ということですので、獣鳥肉と一緒にとると良いですね。

にんにくについて
 にんにくの成分の1つ、アリシンは抗菌作用があり、また、がん予防の可能性のある食品としてリストアップされているそうです。
たった1片のにんにくが、豚肉料理をぐっとおいしくします。ですが、夕食時にしないと、にんにくのにおいが残りそうなので心配です。伴侶が外食から帰って来た時「今日は中華料理を食べたに違いない」などと感じたことがありませんか?強いにおいは残ります。お気をつけて。

【ロールキャベツ】
 暮しの手帖社「ロイヤルホテルの家庭料理Ⅰ」p.47,50~53に『春から初夏の料理』の一つとして掲載されている料理です。今回の掲載に当たり、暮しの手帖社にお願いをし、ご了承を頂きました。レシピ等を転載されるときは、暮しの手帖社に了承をお願いなさってください。

お薦めの理由 
 筆者がこの本のロールキャベツをほぼこの通りに作りましたとき、すごくおいしく、また、実母がロールキャベツを作るときに使う楊枝が不要、形良くできることに感動しました。楊枝の生産者には申し分けないのですが、少しでもゴミを減らせますし、ゴミ出しの時、袋に穴が開かなくてすみます。 
注意点
分量について
 この本には4人分とありますが、他におかずがたいしてないときは、もう少し大目の方が満足感はあるでしょう。成長期の子どもがいると、この分量では親の食べる分がなくなりそうです。
 私は大体この2倍くらいの分量で作り、かつて小さい子を含む5人分、現在は食べ盛りの中2の息子を含む4人分と、あと少し余ります。
 もっとも、おいし過ぎて食べ過ぎる心配はありますが・・・
それだけに、キャベツの葉は、1つにつき2枚位使うと、健康的でしょう。
作り方について
作り方(1)「キャベツの芯のまわりに包丁を入れる」のところは、慣れない人には怪我しそうで、難しく感じられるかもしれません。 そういう時は、キャベツを丸のままゆでることをお薦めします。
ゆでると、芯もやわらかくなり、包丁を入れやすくなります。
 また、キャベツを1枚1枚はがすのも、楽になると感じます。
 なお、春のキャベツはたいへん柔らかいので、加熱時間は短めにします。加熱し過ぎると、葉が破れてしまいます。加減してください。
 キャベツを丸ごと使うのは、余るのでもったいないとお感じになるかもしれませんが、もしも2倍くらいの分量で作るなら、キャベツはそれほど残りませんし、内側はあまり加熱されないので、冷蔵庫で保存すれば、しばらく大丈夫です。
 少し加熱されたキャベツは、使うとき再度ゆでるか、電子レンジにかけて、適当な大きさに切り、胡麻和えとかにしてもおいしいです。
 炒め物でもよいでしょう。
 あるいは、ロールキャベツを作るとき、いっしょに入れてキャベツのトマト味煮込みや、薄くしてスープとして、他の日に召し上がってもよいでしょう。
 ご自分の家庭に合わせ、上手に使い切る工夫をなさってください。
 作り方(5)水気を蒸発させないように紙の落としぶたをしています。これは省エネにもなりますし、煮汁から出ている部分もしっかり煮えるようにという意味でも有効です。ただし、無水鍋といった、鍋本体と蓋がぴったりして、熱容量も高い鍋を使うときは、蒸発量が少ないので、紙ぶたという手間は省いても大丈夫です。こういう鍋では40分煮なくても、十分やわらかくなるでしょう。
 作り方(6)この本の作り方は「おしゃれなおご馳走」といった感じと思いますが、日常の「お惣菜風」でよければ、(5)までで終わりにして、スープの中にロールキャベツがあるといったものでも十分おいしいと思います。本の通りですとバタをさらに加えるので、おいしいですがその分脂質が多くなります。本の通りの分量しか食べないのであれば、それほど過剰になりませんが、もっとたくさん食べてしまう我家の場合、この(6)は余分と感じます。それぞれのご家族の健康状態・手間隙のかけられる度合い・召し上がる量等考えて、アレンジして
ください。

■■■材料(4人前)■■■
キャベツ 大きい葉14,15枚
豚の挽肉 250g
玉ねぎ  1/2個(100g)
ニンニク   1片
パン粉   大さじ2杯
トマトジュース 小2缶(195g入り)
チキンの固形スープ 1個
バタ
(千葉注:塩・こしょうもいります)   

作り方
(1) キャベツは底の芯のまわりに庖丁を入れて、芯を取り出し、そのまま、まわりを手の平でギュッと押して、やわらかくしてから、14,15枚はがします。ロールキャベツは8コ分ですが、穴があいたりしますから、余分にはがします。
大きなナベにお湯を煮立てます。塩茶サジすり切り2杯入れて、芯がちょっとやわらかくなるまで、5、6分ほどゆがきます。
(2) ゆで上がったら、水にさらしてから、水気を切ります。  キャベツをひろげて、白い芯は庖丁で切り取ります。
(3) 玉ねぎはみじんにきざみます。ニンニクもみじんにきざみます。 ナベにバタを大さじ1/2杯とかし、ニンニクを入れて炒め、玉ねぎを加えて、よくいため、冷まします。
  ボールに肉をとり、いためた玉ねぎと、パン粉を大サジ2杯入れ、塩茶サジ1/2杯、コショー一ふりして、手でよくまぜ合わせます。これを8等分して、ちょっと細長く丸めます。
(4) キャベツをまきます。キャベツをひろげ、かるく塩、コショーをします。芯をとった穴に余分のキャベツを半分くらいしきます。他に穴のあいたところは、補強します。
  肉を芯に近い方におきます。キャベツの左側を肉にかぶせ、端からくるくるとまきます。まき終わったら、手にもって、指で葉の端を、ぐっと肉の中へ押し込みます。
(5) 平らなナベに、ロールキャベツをならべ、動かないように余ったキャベツをすき間につめます。
  この上に、トマトジュースを2本と水カップ1杯を加えます。
チキンの固形スープ1コをつぶして入れ、塩茶さじ1/3杯を入れて強火にかけます。
 水気を蒸発させないように、ワックスペーパーを、ナベの大きさより一まわり大きく切り、真中に小さな穴をあけてかぶせます。フタをして、煮立ったら火を弱くして、やわらかくなるまで40分くらい煮ます。
(6) ソースを作ります。
  ロールキャベツを取り出し、その煮汁を3分の2くらいに煮つめます。ここへバタを大さじ山1杯入れ、泡立器でまぜ合わせます。味をみて、塩を茶サジ1/3杯くらい加えます。
  ロールキャベツを2個ずつ盛り、ソースをかけます。

【お惣菜風豚の蒸し煮】
 「ロイヤルホテルの家庭料理Ⅰ」p.159,163~165に載っている「豚の蒸し煮」を惣菜風にしたものです。元のおいしさは残し、身近な食材に替え、油は減らし、箸で食べやすくし、手間は省いています。見た目を良くし、お客さま向けにしたいときは、「ロイヤルホテルの家庭料理Ⅰ」をご覧ください。

■■■材料分量 4人分■■■
豚肉   400g 
       部位は肩ロースがおいしいと思います。食べやすいように2cm角くらいをお薦めします。

キャベツ 400g  (1/3個くらい。もっと多くても良いです)
玉ねぎ  160g  およそ中3/4個(少し多くても少なくても大丈夫)
にんじん 120g  およそ1/2本(嫌いでなければ多くても良いです)
ニンニク  1片
白ワイン 160cc(3/4C強)(少し多くても少なくても大丈夫)
サラダ油 20cc(大さじ1と1/3)
      (豚肉の5%を目安にし、鍋の種類・豚肉の部位―脂肪の量)によって調節してください)
塩 豚肉用 豚肉の1%  4g(大さじ4/5)
   野菜用 野菜の0.7%  4.8g(大さじ1弱)
    キャベツを洗ったときの水がついていると計量が狂うので、控え目に味をつけ、仕上げで調節

こしょう      小さじ1/5
タイムかセージ 小さじ1/3~1/2(なければ、ロリエの葉1枚を一緒に煮込めばよい)
フレンチマスタード 和がらしでも良い

作り方
(1) 一口大の豚肉に塩・コショウ・タイムかセージを混ぜたものをすり込みます。
(2) キャベツは洗い、芯のかたいところをとり、約6cm角くらいの大きさに切ります。
玉ねぎはくし型切り、にんじんは一口大の好みの形に切ります。
(3) 厚手の大きめの鍋(筆者の場合、直径22cm、深さ8cmで4~5人分)があれば、油を熱し、にんにくを入れ、強火で豚肉の周囲が白くなるまで炒めます。そういう鍋がなければフライパンで炒めて、蒸し煮にする鍋に移してください。白ワイン・水を入れます。水の量は蒸発量によるので、鍋の種類・火加減によります。
鍋本体とふたがぴったり合う無水鍋的な蒸発の少ない鍋なら、50cc(1/4C)程度、そうでなければ150cc(3/4C)程度入れます。沸騰したらあくを取るとよいでしょう。
(4) 野菜・塩を入れ、ふたをして煮ます。沸騰したら弱火にします。野菜が均一に煮え、味も均一になるように、1回は混ぜましょう。加熱時間を短縮したい時は、肉は煮汁の中にあるよう、上にある野菜だけ混ぜてください。
 なお、筆者の鍋の大きさですと、最初キャベツのかさがあるので、やっと入るといった感じです。
(5) 肉に火が通れば食べられますが、最低15分、できればもう少し煮込んでください。先日肩ロースで作りましたが、35分煮込んでも煮込み過ぎということはなかったです。最後に味見をして調節してください。
(6) 盛り付けて、マスタードをそえてください。煮汁に旨味と栄養分が入っていますので、汁も具と一緒に召し上がってください。

引用文献
2006年2月26日 日本経済新聞朝刊 なるほど予防学
「平成12年度 児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書」(財)日本学校保健会
スタンダード栄養・食物シリーズ1 人と健康」大塚譲・河原和夫・倉田忠男・冨永典子編 東京化学同人(2003)
スタンダード栄養・食物シリーズ5 食品学」久保田紀久枝・森光康次郎編 東京化学同人(2003)
「こんなおもしろい脂肪があった!」体脂肪を減らす「中鎖脂肪酸」
   近藤和雄著 ジーオー企画出版(2003)
「ロイヤルホテルの家庭料理Ⅰ」暮しの手帖社(1986)

参考文献
「カラーグラフ食品成分表5訂」実教出版
「オールフォト食材図鑑」荒川信彦・唯是康彦監修 社団法人全国調理師養成施設協会 (1996)
「国民栄養の現状 平成13年度厚生労働省国民栄養調査結果」
    健康・栄養情報研究会編 第一出版(2003)
スタンダード栄養・食物シリーズ3 人体の構造と機能 Ⅱ.生化学」
   近藤和雄・脊山洋右・藤原葉子・森田寛編 東京化学同人(2003)
スタンダード栄養・食物シリーズ7 食品加工貯蔵学」本間清一・村田容常編 東京化学同人(2004)
スタンダード栄養・食物シリーズ9 基礎栄養学」倉田忠男・鈴木恵美子・脊山洋右・藤原葉子編 
    東京化学同人(2004)
スタンダード栄養・食物シリーズ10 応用栄養学」近藤和雄・鈴木恵美子・脊山洋右・藤原葉子編
    東京化学同人(2005)
「お茶の水女子大学LWWC再教育講座 化学物質総合管理法学3(医薬品と食品の安全)
   2005年6月6日講義資料」佐々木久美子(国立医薬品食品研究所)