オトナの食育
所感編 第20回(通巻49回)2010/5/10号掲載 千葉悦子(高28)
野菜の価格高騰に対処
カブとベーコンの洋風炒め煮
キャベツの値段の高さに驚き、他の献立に 4月初旬、ロールキャベツを作ろうと、肉屋で豚肩ロースをひくよう頼んでから、近くのスーパーマーケットに行ってビックリしました。キャベツが1つ300円台後半!いくら大きくてみずみずしくても、高過ぎです。 そこで最近ずっと作っていなかったシュウマイに献立変更。 野菜は他のものでとることにしました。 今年は桜の花が咲き始めた頃、寒が戻り、雨が多く日照不足、野菜が品薄で高騰し、NHKのニュースでもその話が出るほどでした。 太陽の光が豊富になければ野菜や果物などが育たないことくらい、皆知ってはいますが、現実になると困ります。 「野菜を食べないで過ごす」のは体に良くないので、あまりお金をかけずに、しのぐ方法を考えなくてはなりません。 野菜の高騰に多少でも対処する具体的な方法―健康を考えて まず、高過ぎない野菜を探し、その料理にするのが、手っ取り早い対処の一つ。葉物は最低限にし、保存がきいて価格が安定な玉ねぎ・人参・かぼちゃなど、あるいは日光とは関係ないもやしで野菜の分量を確保します。 ・緑黄色野菜を忘れずに摂る ただし、上記の中でカロテンが多く緑黄色野菜に分類され、ホウレン草や小松菜などの緑の濃い葉物に代われるのは、人参とかぼちゃだけ。カロテンは体の中でビタミンAに変り、粘膜を丈夫にするなどの働きがあり、風邪をひきにくくしますから、毎日しっかり摂りたいものです。「食費を切り詰めるためにもやしが売れる」という記事を見ると、心が痛みます。もやしばかりではカロテンが摂れませんから。 ・野菜に近いものをしっかり摂る じゃがいもは、食品群ではいも類に分類され、野菜ではないですが、加熱してもビタミンCの残存率が高いですし、無機質も豊富。たとえば、カリウムがキャベツやキュウリに比べ重量あたり多いです。保存がきくので、短期的天候に左右されずに価格が比較的安定します。 ・芽止めじゃがいもも選択肢に加えたい 照射して芽止めしたじゃがいもは、新じゃがが出て来たとはいえ価格が高い頃、便利です。今年4月下旬、北海道の士幌にあるじゃがいもの照射施設見学をし、芽止めじゃがいもを購入したら、10s1400円でした。その上に送料や振込手数料が掛かるので安価とは言い難いですが、お店で大量に購入し、小分けにすれば、十分低価格になりそうです。しかも、高品質な物を倉庫に保存して端境期前に照射し、再度倉庫に保存し、順次出荷するそうで、味も良いです。なお、芽止めじゃがいもの詳細は「オトナの食育」2009年2月号、所感編第5回、通算34回をご覧ください。 ・果物や海藻、乾物のマメも忘れずに摂る とりあえず栄養が摂れれば良いと考えるなら、いつもより野菜に比べ相対的に割安な果物や海藻も積極的に食べましょう。「果物は野菜の代わりにならない」と授業で話しますが、果物も野菜も不足ではより心配です。もちろん、糖分の摂り過ぎに注意しながら、常識的な分量にしましょう。 ひじき・わかめ、豆のような乾物は、短期的な価格変動の影響を受けませんから、お得感があります。なお、ひじきの洋風炒め煮は「オトナの食育」2008年6月号、基礎編第9回、をご覧ください。 わかめや長いもを使う、デパ地下のサラダに似たものも、たまには目先が変って良いですね。 高血圧の予防には、塩分を控え、カリウムの多い野菜・いも・海藻・豆を十分摂り、果物も適量、召し上がることが基本です。 ・輸入物も心配しないで使いましょう 便乗値上げではないかと勘繰るくらい、4月は保存のきく人参や玉ねぎなどまで高値でした。しかも、近所のスーパーには国産の人参が見当たらず「タスマニア産」しか置いていない日があり、買いました。味について特に問題はなかったです。なお「外国産が安全面で劣る」という統計的な証拠がないことは、「オトナの食育」2009年3月号、所感編第6回、通算35回をご覧ください。 ・冷凍物も上手に使う 冷凍すれば、いくらか栄養は減りますが、食べないよりずっと良いので、野菜が高騰している間は、上手に使いましょう。 ・あちこちの店に行ってお得な物を捜す 日本橋のデパートであっても、野菜の種類によっては近所のスーパーよりお得なときがあります。また、中堅スーパーより「八百屋さん」の方が安価な場合も多いようです。時間があれば、健康的な徒歩でいつもより少し遠い店まで行ってみるのも良いでしょう。 ・野菜は残さず使い切る工夫を 4月の終わり、キャベツが1個200円を切りましたが、少し小ぶりで、いつもならスーパーには並ばない外側の葉も付いていました。ゴミを嫌うお客さんが多いようで、その場で外側の葉を捨てていました。 食べる気がしないほどならともかく、細かめに切ってよく煮るスープにするれば十分食べられそうな葉もたくさんありました。 個人にとっては時間や労力も含めて考えて行動するのでしょうが、統計上、日本の食品ロスは大変多く、価格が高い時やその直後くらい、日頃の行動を反省する良い機会ではないでしょうか? ・案外栄養豊富なカブの葉も使い切りましょう ちなみに、私は、和の煮物では食べにくそうになった冷蔵庫に入れておいたカブを、緑の葉の部分も切って少量のベーコンと一緒に、「カブとベーコンの洋風炒め煮」を作りました。味付けは、ひじきの洋風炒め煮と同様、スープの素と少量の白ワインを使いました。また、カブの葉だけ残るときは、ポタージュにします。玉ねぎ・バター・牛乳・スープの素を使うと、カブ独特の食べにくい風味を感じにくくなり、おいしく頂けます。 ときには諦めも肝心 以上、いろいろ工夫の余地があるとはいえ、時間が本当にない場合や、高値が長く続くときは、高価格でも健康のために購入して食べることが必要でしょう。節約は他の部分でしなくてはならない場合があると思います。 ピンチをチャンスに この原稿を書いているうちに、キャベツが1個150円を切りました。ゴールデンウィーク中、天気が良かったのが幸いしたのでしょう。元の木阿弥で何も考えないのではなく、野菜高騰のピンチを「食生活を考え直すチャンス」に変えられると理想と思います。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ■主な参考文献等 「5訂増補 食品成分表2006」香川芳子監修 女子栄養大学出版部 「オールフォト食材図鑑」荒川信彦・唯是康彦監修 社団法人 全国調理師養成施設協会(1996) 「スタンダード栄養・食物シリーズ9 基礎栄養学 第2版」 倉田忠男・鈴木恵美子・脊山洋右・野口忠・藤原葉子編 東京化学同人(2007) 「ほんとうの「食の安全」を考える」―ゼロリスクという幻想― 畝山千香子 化学同人(2009) 「シリーズ 地球と人間の環境を考える11 食の安全と環境―「気分のエコ」にはだまされない―」 松永和紀 日本評論社(2010) 日本経済新聞2010 年4月14日朝刊「野菜、軒並み高騰」「天候不順響く」 「ネギ86%、ピーマン23%」」 日本経済新聞2010 年4月14日朝刊<スーパー、「小分け」で対応>「店頭価格にジワリ浸透」 日本経済新聞2010 年4月15日朝刊「冷食出荷額6%減」「昨年 ギョーザ事件の影響残る」 日本経済新聞2010 年4月15日朝刊「季節外れの寒さ、なぜ?」<「ジェット気流」強く> 日本経済新聞2010 年4月15日朝刊「規格外の野菜出荷を求める」「価格安定狙い農水省」 |