新年に、明るい話題として赤ちゃんの飲み物を取り上げます。昨夏、初孫が生まれ、育児の常識が、私の育児期からさらに変化したと気付きました。自分の末子を育てたのは25年前なので、当然と言えばそれまでですが・・・
当時は、湯上がりに白湯等を飲ませたものですが、私の長女は「今はそうではない」と言いました。昨年8月の朝日新聞「育児の常識の変化、感じたことありますか?」に、助言として「生後6カ月までの水分摂取は母乳・ミルクで十分。果汁も離乳食を始めるまで不要です」とあります。また、「みしま祖父母手帳」の「ここが変わった!子育ての今」に載っている「水分補給」では、「水分を欲しがるときは母乳やミルクを与えます。白湯やお茶でも良いでしょう」と書かれます。しかし、お茶にはカフェインが入るので出がらしでないと問題です。横浜市の「地域と家族の孫 まご応援ブック」の「白湯」の部分には「お風呂上りや帰宅時など、のどの渇きを潤すのも母乳。母乳をあげられない場合は、白湯やノンカフェインの飲み物を」とあり、こちらの方が親切な表現と考えます。それにしても、私の若かりし頃の労力は無駄だったのかとガッカリです。
なお、横浜に住む長女の母子手帳を見ると、「白湯をあげてはいけない」とまでは書いていないので、情報の受け取り方には注意を要したいものです。母乳以外の味に慣れるという意味で、安全な白湯を飲む習慣がある方が、離乳も容易に進むのではないか?と思います。ただし、私見でしかないです。
細菌の芽胞のことを考えると、野菜はもちろん、果物の手作りジュースを0歳児には飲ませられないし、リスクをゼロにしようと思うと、離乳食を与えるのが怖くなりますが、鉄不足の問題等があるので、生後半年くらいから適切に離乳食を与えて行かねばなりません。このこと自体は何十年も前と同様です。
なお、乳児に蜂蜜を与えてはいけない理由としてボツリヌス菌の芽胞を挙げながら「オトナの食育 2017年5月号」で説明したように、蜂蜜と並んで野菜ジュースは与えないようにしましょう。ただし、避けるべき食品の代表例として、果汁は書籍や食品安全委員会のファクトートに見かけません。
正直なところ、私の子どもたちが乳児の頃、自分なりに衛生に気をつけながら生のりんごをすり、ジュースにして加熱せずに飲ませましたが、今振り返ると、「よく大丈夫だったな」と思います。一方、どんなに飲食物に注意しても、赤ん坊はいろいろな物をなめたり噛んだりするので、うっかり土埃も口にするかもしれません。外出すれば、土埃が口に入ることもありえます。土には芽胞を形成するボツリヌス菌等がいる場合があります。一方、外気浴も健康増進には大切です。総合的に考えると、心配し過ぎるのも無意味とも思えます。そして、万一の危険な目に遭わないようにと、神頼みをしたくなるのも頷け、年始に神社仏閣で手を合わせるのも、無理もないことと思えます。
白黒つかない何ともすっきりしない文章かもしれませんが、飲食物に関して、大人だけでなく乳児についても多面的・総合的に考えて、実際の落としどころを探るしかないと考えます。言い換えると「リスクのトレードオフ」をいつも考えるということです。複雑で面倒な話に、今年もお付き合いくださいますよう、お願い申し上げます。
■引用文献等
朝日新聞2017年8月20日朝刊<今どきの育児に「へぇー」>
「叱り方・安全対策 変化を実感」「育児の常識の変化、感じたことありますか?」
三島市HP「ここが変わった!子育ての今」「みしま祖父母手帳」(2017年12月)
https://www.city.mishima.shizuoka.jp/media/05032020_pdf_2017104_rad5BCE4.pdf
横浜市こども青少年局企画調査課「地域と家族の孫まご応援ブック」
http://www.city.yokohama.lg.jp/kodomo/kikaku/wlb/magosodate.html
■主な参考文献等
一色賢司編「新スタンダード栄養・食物シリーズ8 食品衛生学 補訂版」東京化学同人(2016)
食品安全委員会HP ボツリヌス症 ファクトシート(更新日:平成26年10月17日)
www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/10botulism.pdf
オトナの食育 所感編 第94回 (通巻第132回)2017年5月10日号乳児ボツリヌス症をはじめ、食中毒を避けるために
http://www.nirako-dosokai.org/melmaga/shokuiku/shokan94.html
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