オトナの食育 所感編 第94回(通巻132回)2017/5/10号掲載 千葉悦子(高28)
乳児ボツリヌス菌症をはじめ、食中毒を避けるために
ボツリヌス菌等は、菌として生育困難な条件ですと、いわば植物の種のように休眠状態の芽胞というものになります。1歳以上の人がハチミツ等の中に入っている芽胞を食べたとしても、たいがい大丈夫ですが、乳児の消化管は生育できる環境ということで、芽胞が眠りから覚め、菌として増殖できる状態となり、毒素を産生するというわけです。なお、「食品微生物学」によると乳児がボツリヌス症になるのは<腸内フローラが成人とは異なるためと考えられている。>とあります。 そういうわけで、いまどきの母子手帳には、乳児期にはハチミツを与えないよう注意書きがあります。しかし、私が3人の子どもを育てた際の母子手帳には載っていません。育児の常識・方法は時代と共に変わるので、お孫さんを預かるような際には、特に注意したいものです。また、乳児や幼児には、成人とは異なる注意点があるので、育てる際にはそれを学ぶべきということは、家庭科をはじめ学校教育で伝えねばなりません。そういう意味でも、家庭科を大事にしていただきたいです。 なお、乳児ボツリヌス症を避けるためには、ハチミツだけでなく、コーンシロップや野菜ジュースは避けるようにと、「食品微生物学」に載っています。私は、今回のような痛ましい事故が起こらないようにと願い、3月に共著で出版した「アクティブラーニングが育てる これからの家庭科」(「オトナの食育 本年3月号」で紹介)に、この注意点を書きましたが、力及ばず残念でなりません。 最近、ハチミツがブームのようですが、「自然のイメージのある物が何でも、どのような場合でも良いとは限らない」ことも肝に銘じたいものです。私は子どもの頃、両親がハチミツに対して、まるで信仰の様に健康食といったイメージを持っていることに対して、疑問を感じていました。私は両親が買ってくるハチミツの風味があまり好きではなかったからです。ハチが、もしも、いわゆる汚い場所にとまったら、ハチミツも汚れるのではないか?と子ども心に疑問を持っていました。皆さんもそういう想像をしたことがありませんか? 「食品衛生学」の「ボツリヌス菌による食中毒の予防」によると、<酸性化(pH4.5以下《中略》)により、ボツリヌス菌による毒素の生産を抑制できる。また、毒素は熱に弱いので、摂取前の加熱が効果的である。E型菌は4℃でも増殖するので、食品は3℃以下で冷蔵することが予防対策となる。>とあります。暑いからと言って、ビールや水ものを大量に飲めば、冷えて消化が悪くなるだけでなく、胃酸が薄まり、各種菌にも弱くなり食中毒になりやすいです。また、生ものはそれだけリスクが高いです。冷蔵庫を頻繁に開けて温度が高くなると、それも菌の増殖につながります。乳児だけの問題とせず、これを機に自分自身の食生活のリスク対策も、見直すようにしましょう。 :::::::::::::::::::::::::::::: 中西準子先生の文章が、ネットで無料で読めます。ぜひお読みください。 WEDGE REPORT 2017年4月24日http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9429 築地移転問題が改めて示した「ゼロリスク」の呪縛 ■主な参考文献等 |