オトナの食育 
所感編 第71回(通巻105回)2015/1/10号掲載 千葉悦子(高28)

三島馬鈴薯・みしまコロッケを例に、
地方の活性化を期待

 
 
新年おめでとうございます。
 今年は地方がより活性化し、校歌のように「地を踏みしめ」ながら、日本がより良い社会になっていけるようにと願います。

 昨年12月に、某生協で冷凍の「みしまコロッケ」を初めて購入し、自分で揚げて試食しました。一人でひっそり味わっても、十分美味でした。

 そのコロッケは、企画品(定番の商品ではない)のチラシの、東海地方の特産品の中にありました。あらかじめ三島市の箱根西麓(火山灰が適度にある土で、日照も良い)で栽培する馬鈴薯が美味しいことや「みしまコロッケ」のことを知っていたので、多くの商品の中で見つけて買おうと思いましたが、知らなければ埋没すると心配になりました。チラシに商品の良さを書けば、もっと注目されてより売れるのに、と思いました。届いた商品のパッケージには「みしまコロッケの会認定品」「箱根西麓でとれた三島馬鈴薯(メークイン)100%で作ったコロッケです」とありましたが、チラシの段階では分かりませんでした。

 ひょっとしたら、注文が多過ぎて生産する従業員が過労にならないようにと、経営者が判断したのかもしれず、そうであるならかまいません。また、箱根西麓は、私が見学した北海道の士幌(じゃがいもを生産し、ガンマ線照射で芽止めした馬鈴薯も含めて出荷)に比較すると、狭い面積なので、生産能力に限りがあるでしょう。その他、私の思いもよらぬ事情があるのかもしれませんが、各地方の特産品の良さを、上手に伝える努力をすれば、売り上げが伸びて、地方の活性化が進むのではないか?と考えます。

 以前、三島馬鈴薯のメークインを頂いたことがあり、味の良さに加え、大き目で、芽が浅く、泥が全然なくて、皮が美しいことに驚きました。東京辺りの高級レストランのシェフが、日本一の高値で買うという噂です。確かに、プロが見た目に美しい料理を作るには、もってこいです。

 この正月に、三島に住む義理のきょうだいに聞きましたら「この辺ではめったに売っていない。みなコロッケになってしまう。」と笑っていました。これは非常に残念です。というのは、第一に、中年以上の人にとって、揚げ物を食べ過ぎない方が健康に良いですし、揚げ物に加工すると素材の良さが分かりにくく、他の産地のじゃがいもとの差別化が難しいからです。

 第二に、自分の故郷や住む地方の産物がおいしくて高品質であれば、自然とその地域に誇りが持て、愛する気持ちになると考えるからです。それは、道徳を教科化する(評価が伴う)といった無理なやり方でなく、真に人の心を良い方向に持って行けることと考えます。東京に住む者のお節介ですが、ぜひ、地元でも加工していないじゃがいもが買えるような仕組みを作ってください。その際、日本一の高値でよいと思います。それでかまわない人に売れば、生産側も損をしないはずです。高級品ですから、贈答品として使うことも出来そうです。

 「今時、1から料理をする人は少ないので、素材ではあまり売れない。」「素材そのものより、付加価値を付ける方が儲かる。」という考え方も理解できますが、三島馬鈴薯の場合は、素材そのものの抜群の良さも大事にして頂きたいと願います。
 私自身が儲かるわけでもないのに、なぜこのようなことを書くのか?と不思議に思われることでしょう。実は、私の父方祖父(韮中卒)が、箱根西麓の土地に合う農産物の栽培を奨励したと聞いていて、私の約半分のルーツが三島であるからです。これは、「オトナの食育100号」にも書きました。

 ネットの時代ですから、東京をはじめ消費地の消費者の声をうまく集めて、販促に使わない手はないでしょう。また、ネットの時代だからこそ、直接会って話せる関東支部同窓会に、他の地域の同窓生も参加されるのは意味があると存じます。書くのは面倒であっても、話すのは気軽で楽しい場合が多いでしょう。同窓会という場ですと、初対面であっても比較的安心感を伴って話しやすいと思います。関東に住んでいるとはいえ、友人や親せきのつながりもあるので、そう無責任なこと(故意に思っていないことを話すなど)は言わないことでしょう。

 最近読んだ、飯田泰之著「日本がわかる経済学」に次の部分があります。

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アイデアは、1人の天才がいて、ポンと思いつくもののように思われるかも知れませんが、そういうタイプの新商品は、じつはそれほど多くありません。
 それよりも、その業界に長くいる人たちが「こんなものができたら面白いね」とガヤガヤしゃべっているうちに、何となくアイデアが出るという、非常にウェットな面が大きいと思います。

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 ある程度、真面目に人々が話すというのは、より良い社会を作る根本の一つなのだろうと直感します。経済学・社会学・哲学などの学者でない私が言うのはおこがましいですが、家庭科の勉強会でも「こんな案ダメだろう」と引かないで、思い切って話してみると、他のメンバーからより良い考えを引き出せることがあります。

 同窓会をはじめ、皆が心楽しく集まって話す機会が増え、より良い社会になっていく年であるようにと祈ります。

■引用文献
飯田泰之「日本がわかる経済学」NHK出版(2014

■主な参考文献等
箱根西麓三島野菜HP
http://hakoneseirokumishimayasai.jp/introduction/2011/08/post-2.html

三島市HPの旬産旬消
http://www.city.mishima.shizuoka.jp/mishima_info/shun/shosai003323.html

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