オトナの食育 
所感編 第70回(通巻104回)2014/12/10号掲載 千葉悦子(高28)

野菜・いも・豆・果物・海藻で
肉の脂・エネルギーを取り過ぎずにカリウムをとる



 先月、日本人の食事摂取基準(2015年版)研修会に参加し、栄養について改めて学ぶ機会を得ました。
 この食事摂取基準は5年に1度改定され、今回は健康の保持増進、生活習慣病の発症予防とともに重症化予防も視野に入れて作られました。食事摂取基準で念頭に置く主な生活習慣病は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病です。日本人の中高年に多い病気ですから、まだ発症していなくても予防するために、どなたでも気にかける必要があると考えます。
 11月号で書きましたように、和食の欠点である食塩の摂り過ぎについて、カリウムを十分とることで補います。カリウムを成人が3510mg(3.51g)以上1日に摂取するのをWHOは推奨しています。血圧が有意に下がるというデータがあるからです。実際どのくらい食べたものか、11月号の献立に沿って説明します。なお、野菜・いも・果物については11月号の写真をご覧ください。

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1日、野菜350g(内1/3は緑黄色野菜)・いも100g・果物200gの献立例

<朝食>
・野菜炒め…キャベツ80g・ピーマン25g・人参25g(バター・油・塩・胡椒)
 食パン70g6枚切り1枚程度)、ボンレスハム20g1枚程度)、牛乳200mL
<昼食>
・アボカド入りポテトサラダ…じゃがいも50g・アボカド30g・人参10g
                 ・レタス20g・(マヨネーズ8g・練りワサビ少々)
・みそ汁…長ネギ(白い部分20g、緑の部分5g)・(豆腐40g・みそ10g程度)
 ご飯(米で100g1.5膳程度)、焼肉(豚の肩ロース100g)
<おやつ>
・りんご…りんご100g
<夕食>
・ふろふき大根…大根100g・(みそ15g程度・砂糖・出し等)
・ほうれん草のお浸し…ほうれん草50g・(しょうゆ小1/3・出し小2/3
・さつまいもの甘煮…さつまいも50g・(砂糖・みりん・しょうゆ少々)
・かきたま汁…生椎茸10g・三つ葉4g・(卵・塩・しょうゆ・出し・でんぷん)
・デザートの果物…柿70g
 ご飯(米で100g1.5膳程度)、アジの塩焼き(1匹、骨等を除き60gと計算)
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 以上の場合、調理での損失(ゆでた時に成分が流失するなど)を無視して計算したところ、カリウムが3133mgです。男性や若い方々の場合、もう少しご飯やパンを召し上がるでしょうが、それでも精白米や白いパンにはカリウムが多くないので、WHOの基準に届きません。
 そこで、カリウム豊富な和食につきもの食品である納豆40g1パック)、しらす干し20g、のり1g(半枚)、を足して計算すると、カリウムが3466mgです。これでやっと、ご飯やパンを多めに食べる人であればWHOの基準に届きます。
 なお、食事摂取基準におけるカリウムの成人男性の目標量は3000mg以上、女性は2600mg以上ですから、11月号の例は、まあまあ良い線でしょう。
 実は、肉・魚もカリウムは豊富ですが、「獣鳥肉の脂は、飽和脂肪酸が多く、食べ過ぎてはいけない」ということが、食事摂取基準の説明でも読み取れます。そういう意味でも、肉ばかりでなく魚も食べ、カリウム豊富な野菜・いも・豆・果物・海藻を十分とりたいものです。
 こういったことを意識した食事を、自分や家族が実際にすると、おかずでお腹がいっぱいになり、ご飯やパンが減り、エネルギーもとり過ぎないで済みがちです。


肉に偏らないカリウム豊富な食事は、食物繊維も豊富

 上記のような食事ですと、食物繊維もとりやすいです。納豆・しらす干し・のりも含めると、食物繊維が19g以上取れます。食事摂取基準の成人男性の食物繊維の目標量は20g以上/日、女性は18g以上/日です。食物繊維は、現代のように、玄米でなく精白米というように精製した穀物を日常食べ、野菜・いも・豆・海藻・果物が少なめで、肉や卵が多く、加工食品をとりがちですと、不足しやすいです。目標量の半分程度ということが多いです。
 厚生労働省の健康局がん対策・健康増進課栄養指導室担当の「日本人の食事摂取基準(2015年版)スライド集」によると、次のようです。
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 食物繊維摂取量との関連が最も明らかな生活習慣病は、心筋梗塞であると考えられ、レビューの結果得られた成人における理想的な摂取量と日本人成人における摂取量の中央値との中間値を目標量を算出するための参照値とした。
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 つまり、食物繊維の食事摂取基準における目標量は、究極の理想ではなく、現実も踏まえて決めた数字ということです。いかに理想の食事をするのが難しいか、ご理解頂けることでしょう。


食物繊維はサプリメントでなく、食品の形でとりましょう

 そこで、手っ取り早くサプリメントはどうか?とお考えになるかもしれませんが、それでは健康に寄与するという保証はありません。「日本人の食事摂取基準(2015年版)スライド集」に、次のようにあるからです。
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 目標量の算定に用いられた研究の多くは通常の食品に由来する食物繊維であり、サプリメント等に由来したものではない。したがって、通常の食品に代えて同じ量の食物繊維をサプリメント等で摂取した時に、同等の健康利益を期待できるという保証はない。
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 だからこそ、食品から料理をする必要があります。


カリウムは、腎臓の悪い人は多くしないように注意

 食事摂取基準は、主に健常者を考えて作っているので、既にご病気の方々は、必ずお医者様の指示に従ってください。特に、腎臓病の方は、カリウムの多い食事で悪化する場合がありますので、注意なさってください。


正月の里芋・八頭、豆、山の芋等はカリウム豊富!

 正月料理としてよく使う、里芋や八頭、くわい、ゆりねは、じゃがいもやさつまいもよりカリウムが多いです。生で食べられる山の芋やじねんじょもカリウム豊富。また、きなこも豆もカリウムが多いです。そういう昔から日本にある食材を食べる習慣も大切にし、次世代につなげたいものです。

 皆様、どうぞご自分の好み・体調に合わせて考えながら、より健康でいられる生活をなさって、良いお年をお迎えください。


■引用文献
厚生労働省 健康局がん対策・健康増進課栄養指導室 日本人の食事摂取基準(2015年版)スライド集
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000056112.html

■主な参考文献等
香川芳子監修「食品成分表」女子栄養大学出版部(2011
日本人の食事摂取基準(2015年版)研修会 予習教材
http://kawaru.biz/shokuji2015/material.php

 

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