オトナの食育
所感編 第49回(通巻82回)2013/2/10号掲載 千葉悦子(高28)
「食」や「栄養」の重要性の再認識を
3・11東日本大震災の後、テレビニュースを視聴していると、救援の食料としておにぎりや菓子パンが多く、野菜ジュースとかビタミン剤とかの配布の話は、なかったです。私が気付かなかっただけかもしれないし、テレビニュースや新聞だけでは現実を把握出来ないと言えば、それまでですが・・・ 昨年11月に生活科学系コンソーシアムのシンポジウム「災害に対する活動・展望・将来に向けて」を拝聴し、食物学科の先輩で、現在はS大学の教授をなさっている方とお話しできました。「大震災で、おにぎりや菓子パンばかりを救援し、栄養不足が明らかなのに、野菜ジュースとかビタミン剤とかを送った話がありませんでした。『健康で文化的な最低限度の生活』には、食が基盤の一つになると思うのに。食や栄養の重要性を多くの人が分かっていないからではないか?と思います。」と申しますと、頷いていました。 上記シンポジウムで、日本栄養・食糧学会を代表して板倉弘重先生(茨城キリスト教大学名誉教授)が、2011年5月の「災害時における栄養・食糧問題とその対策を考える」というシンポジウムの内容をまとめてお話しなさいました。おにぎりと菓子パンばかり続いては、たんぱく質・無機質・ビタミン不足になり、1つ1つ書き出すのは辛くなる不調が、体だけでなく精神にも現れます。 たんぱく質や水溶性ビタミンは、余分にとっても、分子の形は変わりますが尿中に排泄されるので、「食べ貯め」が出来ず、毎日、出来れば毎食、摂取しなくてはなりません。 ですから、この冬、非常に寒さが厳しくて、葉物を中心に生育が悪く、野菜の価格が高騰していますが、何とか工夫して野菜に期待される無機質・ビタミン・食物繊維等を摂取したいものです。具体的な工夫の方法は、「オトナの食育 所感編20回 2010年5月号」をご覧ください。 ◆サプリメントや総合ビタミン剤は、非常時など特別な場合に 日常の基本は、昔ながらの食品の形で摂取することです。安易にサプリメントやビタミン剤に頼るのは問題です。サプリメントの元の意味は、「補足」です。野菜・いも・豆・果物といった昔ながらの食品には、5大栄養素である無機質やビタミン、それから、食物繊維以外のいわゆる機能性成分も含まれていて、健康に良い作用をすることがあります。現在の栄養学で未解明な良い作用もあり得ます。 製薬会社やサプリメントの会社に頼まれたわけではありませんが、災害への個人の備えとして、日持ちの良い食品や水を買い置きすることと共に、総合ビタミン剤を常備しておくのをお勧めします。ただし、日常では頼らない努力を併せてお願いします。災害時や病気の場合と平時とを、具体的な方法としては分けて考えましょう。 なお、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンC・・・などと、一つ一つの種類を購入するのは、素人には無理なので、また、災害時にはどのビタミンや無機質も不足しがちでしょうから、日本人が不足しがちな無機質も含んだ総合ビタミン剤が無難と考えます。 ◆「食が大切である」ことの学問的な証明を待っていられません 食物学科の別の先輩で、社会学方面で博士号を取られた方とお目にかかる機会があり、冒頭で書きましたことを話してみました。すると<「生活には、他にも重要なことがあるのに、食が重要となぜ言えるのか?」と社会学の専門家は鋭く突くのです。>と説明してくださいました。社会学の中で、厳密に考えること自体に反対はしませんが、また、そういう厳密な学問も必要とは思いますが、きちんとした証拠が出て、論をきちっと構築するまで、誰も何も言えないとなると、手遅れになります。 昨年12月に起きた、食物アレルギーの児童が誤って給食のお代わりをして、死亡した事件は、本当に心が痛みます。「たかが食」といった食を軽く扱う気持ちが、多くの人々の心の奥底にあるから、学校を挙げての対応が厳密にならなかったのでは?と私は推測します。 「オトナの食育」は、学問的にはゴミ同然なのでしょうが、同窓生が息抜きしながら、ご自分の生活を再考し、万一に備える方法のヒントになれば幸甚と思い、気を取り直して書き続けたいと思います。 ■参考文献等■ |