オトナの食育 

所感編 第164回(通巻223回)2026/5/10号掲載 千葉悦子(高28)

大きく報道された「あの問題」は、今どうなの



 
20年ほど前、「それ以前にマスメディア等で得た食情報は間違っていた」と気付きました。認識を誤ったのは私だけではなく、世の中には同様の人が少なくないことから、何とかしたいと思いました。そういう理由もあり、この「オトナの食育」を書き続けてきました。
 先月、畝山智香子氏がFOOCOM.NETに「広く報道された情報は更新されたことも広く伝えられるべき食品添加物AF-2」を書かれたので、今月はその話題です。
 日本で殺菌料のAF-2が禁止されたのが1974年で、私は高校生でした。
禁止される前、AF-2についてマスメディアが「極めて危険」というイメージで大々的に報道しました。当時の発がん性に関する研究が、今考えると遅れていて、試験管内試験で陽性であれば、それだけで「発がん性がある!」と衝撃的な報道がされたものでした。しかも、現実にはあり得ない大量投与で「実験動物にがんが出来た!」としたのです。
 1960年代は、阿賀野川有機水銀中毒やカネミ油症といった、本当に危険な問題がありましたから、70年代は、食品の危険性に関することに人々がとても敏感でした。また、報道する側も、現在ほど食の安全に関して学んでいなくて、研究者の中では一般的ではない、量などを無視した論を報道することがよくありました。
 当時は、現在より衛生状態が悪くて、殺菌料の意義がより大きかったのです。しかし、ネットも食品安全委員会もない時代、私自身、報道が真実か否か分からないでいました。
 私は20年程前から食の安全について本腰を入れて学び始め、食品衛生学会での西島基弘氏(東京都立衛生研究所に勤務され、本講演の頃は実践女子大学教授)の講演で、「安全性が高くて殺菌できるAF-2が見つかり、食中毒を防止でき、本当に良かったと思ったものだ」という主旨の話を拝聴しました。
 さらに、AF-2をかつて製造販売した会社に勤務される方と話したこともあります。私が「AF-2の安全性が高いなら、それを広く説明しては?」と申しますと「説明すればするほど怪しまれ、危険視される」の主旨を辛そうに答えられました。これでは、本当のことが世の中に伝わらず、食品添加物のリスク(言い換えると「安全性」)に関する認識がゆがんだままで、より良い判断が出来ないとやるせなかったです。だからこそ、利害関係のない第3者が世の中に対して説明するしかないだろうと判断しました。


赤身肉・加工肉の発がん性騒動も似た面が

 昨年、小学校教員免許取得のための科目を担当して、受講生のレポート中に「以前、親が発がん性を気にして加工肉を避けていた」とありました。加工肉の発がん性の心配より、たんぱく質不足の方がずっと大きなリスクになるので、いまだに以前の報道にこだわっている人は、唐木英明氏の「赤身肉・加工肉の発がん性評価を巡る論争の大きな影響」をお読みください。


 あまり長くなると、少しもお読み頂けない虞があるので、今回はAF-2に焦点を当てさせて頂きました。
 AF-2自体は、若い人には「古い話」でしょうが、いまだにネット上に、リスクが低いにもかかわらず、人々を怖がらせる表現の文章が散見されるので、今回の話題が役立つのでは?と期待いたします。



■主な参考文献等

唐木英明  2026430

赤身肉・加工肉の発がん性評を巡る論争の大きな影響 – NPO法人 国際環境経済研究所|International Environment and Economy Institute


畝山智香子
   「広く報道された情報は更新されたことも広く伝えられるべき― 食品添加物AF-2
   202649
   https://foocom.net/column/noraneko/26199/


畝山智香子
   『食品添加物ははぜ嫌われるのか 食品情報を「正しく」読み解く』
   DOJIN
選書(2020

 

斎藤 勲
  「AF2(フリルフラマイド)は悪の添加物だったのか?」  20238

 https://foocom.net/column/residue/24101/


細貝祐太郎編集
  「食品衛生の歴史と科学」  中央法規(2013

 




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