今年6月末頃、私が30年以上所属する「家庭科の授業を創る会」から家庭科教師の成長に関する本(書名は出版社と相談の上、決定)を出版する予定です。11名のメンバーが自分のライフヒストリーを書いて読み合い、修正・加筆をしてさらに読み合うことを重ね、家庭科教育の研究者である会員が主導し、成長等に関して分析をしました。その一部は、「静岡大学教育実践総合センター紀要 No.34」に「ライフヒストリーの読み合いにおける家庭科教師の省察の様相:読み合いの記録に見られる気づきに着目して」という論文になり、公開中です。
必要な方へ本を差し上げるので、千葉に知らせてください。6月第1土曜日開催の関東地区同窓会で、名刺と共にその旨をお話し頂くか、私にメール等をお送りくださいますようお願いいたします。家庭科教員、あるいは、それを目指す人がご家族や親戚であってかまいません。そういう人を本書が励ますことでしょう。
家庭科は単位数が少ないので、各学校に家庭科教員1名配置が多く、同じ教科を担当する者同士が、日常的に悩みや課題を共有することは不可能です。それで、様々な学校の教員が月1回程度、本音で話す機会は貴重です。都道府県単位の研修が少しあるとはいえ、学習指導要領等に縛られ過ぎるきらいがあるでしょう。しかも、非常勤講師は蚊帳の外です。
中学校では「技術・家庭」という教科名で、男性(生徒指導に都合がよいなどと考えられたよう)が多い技術科の先生を専任とし、女性が多い家庭科は非常勤講師という形がよくあります。その上、常勤の高校家庭科教諭であっても、学級担任や校務分掌の仕事に追われ、また、担当する生徒数が非常に多くて指導や評価に時間や労力がかかり、学校内で教科そのものにじっくり向き合う時間が少ないという実態があります。
「家庭科の授業を創る会」は上記のような孤独に陥りがちな家庭科教員が集い、会の名前のごとく、より良い授業を目指して研究を積み上げ、日本家庭科教育学会で発表し、簡素な装丁の冊子や書籍を作ってきました。
簡単な指導案では同じように見える授業であっても、各教員の信念によって様々であると研究会で気付き、信念を探ることも含めて、ライフヒストリーを書くことにしました。試行錯誤しながら10年以上経ち、途中で冊子を作りましたが、今回はより考察を深め、東京学芸大学出版会から上梓する運びとなりました。
私が他の研究会等で書籍の出版に関わった際に比べて、今回は、隅々まで会員同士で目を通し、議論を重ねて参りました。もしも、共著の書籍作成に係わったことがなければ、それがどれほど大変で、貴重かピンとこなかったでしょう。お偉い先生1名程度や出版社に任せる、言い換えると、最終調整や判断に口をはさむ余地がないのではなく、時間や手間をかけて忌憚のない意見交換をし、互いに納得できる形にすることが、いかにありがたいかは、そこまで丁寧ではない経験があったからこそ分かるのだと気付きました。
私はそろそろ退職の年齢で、今回、自分にとって最後の出版となりそうです。それで、食分野を含む家庭科の共著の書籍に関して、書かせて頂きました。
■主な参考文献
『静岡大学教育実践総合センター紀要 No.34』「ライフヒストリーの読み合いにおける家庭科教師の省察の様相:読み合いの記録に見られる気づきに着目して」
https://shizuoka.repo.nii.ac.jp/search?page=1&size=20&sort=custom_sort&search_type=2&q=1710311358788
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