オトナの食育 

所感編 第156回(通巻211回)2025/4/10号掲載 千葉悦子(高28)

米の価格高止まりを契機に、食生活を見直し、
消費者・市民としての責任も考えると理想

 

 備蓄米が放出されたとはいえ、その量が国全体に対してわずかなので、米の価格は高止まり傾向と思われます。特に、食べ盛りの子どもを育てる保護者のご苦労はいかばかりかと思います。


価格高騰のピンチを健康的な食生活について再考するチャンスに

 以前の「オトナの食育」で書きましたように、米や「いも」イコール炭水化物と単純化しないようにしたいです。米さえ食べれば「いも」は不要と考えず、「いも」も食べましょう。「いも」には米にはない栄養素が含まれ、単なるカサ増しではありません。1日平均100 gの「いも」の摂取が理想です。「いも」も食べれば、高止まりする米を多く食べなくて済み、経済的でもあります。
 麺類やパンを多くするのは問題です。粉状ですと、細胞の中に含まれるでんぷんより血糖値が急上昇しやすいことを思い出しましょう。その上、ご飯を主食とする食事は、カルシウムを十分とることと減塩を心掛ければ、脂質が少なめで健康的です。
 その他、野菜や魚等も食べているか、再考する機会にしたいものです。


短期的な、個人が出来る工夫

 コメの品種を特定の物―たとえばコシヒカリ―にこだわらず、やや安価な他の品種を選び、十分美味ならOKと考えます。倹約だけを求めると辛くなりそうなので、いろいろな品種や産地を試すのを楽しんではいかがでしょう?同じ物ばかり食べるのは、リスクが高いですしね。
 経済面を重視するなら、備蓄米と思われるブレンド米も選択肢の一つです。ただし、各自が行く店にはないかもしれませんが、以前からブレンド米は、銘柄米よりはお値打ちなので、食べ盛りの男子が複数いるような家庭では重宝しそうです。

 私が米屋で最近購入した「つきあかり」という品種は、産地による違いがたいへん大きくて驚きました。思い返すと、コシヒカリも産地等により大きく違う場合がありました。ゆえに、1回試しただけで「この品種はダメ」と決めつけず、柔軟に選ぶことも必要です。
 スーパーだけでなく、米屋もお勧めです。少なくとも、私の住まいの近所では、価格とおいしさを勘案すると、スーパーより米屋に軍配が上がります。特に、5 kg未満ずつ買う場合は、1 kg当りの価格で販売する米屋が割安です。
 また、私は某生協の予約米を少しですが長年注文してきたので、昨年の「米がない」という騒ぎの最中も、安心できました。その上、上記米屋に住所と名前を登録する会員なので「以前からの顧客」として買えました。言い換えると、その米屋では登録がないと買いにくい時期もありました。つまり、普段からの契約や付き合いという感じのものも大事と分かりました。


長期的・広い視点で、消費者・市民として考える

 さらに、個人の面だけではなく社会的な面も一市民として考えたいです。食糧安全保障のためには、国産の米を食べる習慣を手放すわけにはいきません。30年以上前、米国に住んでいた義理のきょうだいの家で、カルフォルニア米のご飯を頂き、美味でした。当時は超円高でしたから特に「カルフォルニア米が入ってきたら、日本の米は太刀打ちできない」と思うほどの品質でした。
 長年続いた減反政策等がうまくいかなかったことが明白になり、また、農業従事者の高齢化という現実や持続可能も考え合わせると、選挙権を適切に行使することが必要です。農林水産省を含む省庁の人たちは、政治家の意向をくみながら施策を立てざるを得ないようだからです。
 政策が適切かを判断するには、農業や食料等に関しての知識が必要です。従来の品種や農業の方法にとらわれず、新技術や新しい発想も知ろうとしながら、関心を持ち続けましょう。
 ところで、最近のテレビ朝日のモーニングショーを視聴したら、米の栽培に関して、短期的と中長期的な対策をそれぞれが話して、議論がかみ合わない場面がありました。どの観点で話したり書いたりしているかも考えつつ、情報を受け取りたいものです。

 新年度にあたり、「食料は、まず、十分な量あることが大事」という基本に立ち、日本人にとって様々な意味で大事な米を中心に、いつもより長く書かせて頂きました。


■主な参考文献等

日本経済新聞2025311日朝刊
 「ビジュアルでわかる コメ不足は終わらない 農家の高齢化、後継者なし」

日本経済新聞2025318日朝刊
 「食料シーレーン、封鎖に懸念」「有事には価格高騰必至」「安定調達へ企業と連携」

日本経済新聞2025320日朝刊「画一的なコメ政策 転機」「余力ある地域は増産」

日本経済新聞2025320日朝刊
 「コメ増産、減反廃止後 最大」「今年 在庫不足解消へ一歩」

日本経済新聞2025320日朝刊「2回目入札2628日」「備蓄米、7万トンが対象」

日本経済新聞2025320日朝刊「きょうのことば 減反政策 国がコメの生産抑制」

日本経済新聞2025327日朝刊
 「マイナス金利 解除1年〈下〉 家計心理 見極める日銀」
 「利上げ判断に物価トレンド分析」「高まる食費割合 支出の3割に」

日本経済新聞2025331日朝刊
 「複眼 コメ高騰は止まるか」「需給安定には収量増加を」
 「流通多様化 投機わずか」「増産へ技術革新を継続」

 「アンカー 長期見据え供給力維持を」

日本経済新聞202542日朝刊
 「コメ放出、値下げ効果薄く」「備蓄米、2回目、2.3%安で全量落札」
 「農相、追加措置に言及」

日本経済新聞202543日朝刊
 <価格は語る 農産物高騰「備蓄米、一過性ではない」>
 「気候変動や農家減で構造変化」「肥料・重油、高止まり 生産コスト増を転嫁」

日本経済新聞202545日朝刊
 <コメ価格見通し「同程度」>「3月業界調査 不足なお警戒」

日本経済新聞202546日朝刊
 「コメ政策、内外から圧力」<「閉鎖的」批判、改革促す>「米騒動や関税で強まる」


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