オトナの食育 

所感編 第153回(通巻208回)2025/1/10号掲載 千葉悦子(高28)

新生児・乳幼児初期にビタミンKを与える・・・新しい知見を大切に

 


 今年もよろしくお願いいたします。

 昨年の11月・12月号を休ませて頂きましたのは、11月初めに2人目の孫が生まれ、赤ちゃんとその母親(私の長女)が我が家で過ごすなどして、多忙でしたからです。


ビタミンK2シロップを1週間ごとに与える!

 新生児期を過ぎてから、再度、年末に、我が家へ母親と子どもたちがやって来ました。すると、母親が「ビタミンK2シロップを1週間ごとに与える。7歳上の第1子の時は、それほど与えなかったけれど。」と話しました。

 つまり、「たった7年間の間に、乳児に対する良い方法が変わった」のです。科学がどんどん進展するので、祖父母世代の昔のやり方や「普通」と考えられていたことは脇に置き、現在の親世代の説明をよく聞くべきと改めて思い知らされました。

 手持ちの本を調べると、2015年発行の『応用栄養学』に「母乳栄養の問題点」の項目として「母乳はビタミンKが不足しているため、母乳栄養児には新生児出血(頭蓋内出血)が見られることがあるので、近年、新生児にビタミンKが投与さている.」とあります。

 2019年発行の『基礎栄養学』に「ビタミンKは血液凝固因子の合成に必要であるため、ビタミンKが不足するすると血液凝固の遅延や出血が起こりやすくなる.特に、腸内細菌叢が未発達な新生児に消化管出血、乳児に頭蓋内出血が発症したため、このようなビタミンK依存性出血症の予防のため、現在では新生児にビタミンKシロップが投与されている.わが国では、出生時、1週間以内、3か月児検診の3回投与している.」とあります。

 2021年の日本小児科学会「新生児と乳児のビタミンK欠乏性出血症発症予防に関する提言」を読むと、上記3回の投与だけでは予防できない症例があり、生後3か月まで週1回ビタミンKを与えるようになったと分かりました。

 なお、ビタミンKにはK1K2といった種類があるので、「K2シロップと母親が言ったのです。

 人工栄養(粉ミルク等)にビタミンKが添加されていて、母乳では不足する場合がありますが、全体的には人工栄養に比べて母乳の方がより良いです。もちろん、母乳を出す母親が、栄養バランスの良い食事をとることも大切です。

 成人の食事を考える場合も、「〇〇という食品が良い」「○○はあまり摂らないように」といった細かな事だけに気を取られて、食事全体のバランスを崩すことがないようにしたいものです。言い換えると、リスクのトレードオフに陥らない様に心がけましょう。


成人もビタミンKを十分とりましょう…骨粗しょう症の予防

 「骨と言えばカルシウムが大事」とまず思うでしょうが、他の栄養素も必要で、今回はビタミンD(キノコや魚に多い)とビタミンKを取り上げます。中学家庭科教科書に、ビタミンDの説明として「骨を丈夫にする」と以前から書かれています。

 さらに、ビタミンKも大事です。ビタミンKは、納豆をはじめチーズ等の発酵食品、ほうれん草やブロッコリー等の緑葉野菜や海藻等に含まれます。そういう意味でも、日本人の摂取量が減少傾向の野菜を十分とると理想ですね。

 抗生物質を服用すると腸内細菌が減り、ビタミンKを作れなくなるので、風邪をこじらせて抗生物質も飲むことにならないようにしたいです。これは自戒を込めています。

 寒さと乾燥が厳しい季節、年齢を重ねたら若い時と同じようにはいかないので、健康の基本を重視したいです。すなわち、体を冷やさず、温かい飲食物をとり、自分に合う運動をし、睡眠も十分確保して過ごしましょう。



■引用文献
池田彩子・鈴木恵美子・脊山洋右・野口忠・藤原葉子編 『基礎栄養学 補訂版』 東京化学同人(2019

近藤和雄・鈴木恵美子・藤原葉子編『応用栄養学』東京化学同人(2015

■主な参考文献等

公益社団法人 日本小児科学会「新生児と乳児のビタミンK欠乏性出血症発症予防に関する提言」
 2021
1130

 新生児と乳児のビタミンK欠乏性出血症発症予防に関する提言|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

板倉弘重・近藤和雄編 『分子栄養学-科学的根拠に基づく食理学―』 東京化学同人(2019

NHK1日に摂取する野菜の量 過去最少に 平均250gあまり 厚労省調査」
 2024128
 1日に摂取する野菜の量 過去最少に 平均250gあまり 厚労省調査 | NHK | 厚生労働省

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