このところ、放射性物質を処理した処理水の海洋放出に関連したニュースがテレビや新聞等に取り上げられます。処理水のことを汚染水と言い間違えた農水省大臣の謝罪もニュースになりました。
処理水とは。汚染水からトリチウム以外の放射性物質を取り除くという処理をしたものです。トリチウムというカタカナの名前ですと、得体のしれない悪い物質の印象になりがちと思いますが、3重水素(3H)と知ると、やや安心できるのは私だけでしょうか?トリチウムは、水中では水分子の2個の水素原子の片方を置き換えた形で存在しているので、どうしても除けないそうです。
トリチウムは、原発等がなくても、もともと自然界に存在すると知ると、量や濃度の問題と理解できます。今回の福島での海洋放出は、処理水を飲料水の国際基準より低濃度に薄めて放出するのですから、十分安全と納得します。
ところで、恥ずかしいことに、十数年前、私は食品添加物の保存料のことを殺菌料と区別して認識していませんでした。保存料を製造・販売をする企業の社員さんから「保存料は、菌の増殖を抑えるだけで、殺菌するほど強い作用はない。」と説明されて、やっと用語の意味の違いを認識できました。なお、殺菌料は食品の製造中に用いられても、製品中には残留しないことが定められているので、食品の表示には書かれていません。
このような苦い経験をしたので、「処理水」という用語を耳にした際も、何らかの処理をしているのだろうから、細かな言葉の違いに注意しようと気付けました。
より多くの人が、用語の違いに注意を払いながら、食品をはじめ、いろいろな問題を的確に判断すると理想と存じます。
■主な参考文献等
一色賢司編『食品衛生学 第2版』東京化学同人2019
日本経済新聞2023年9月1日朝刊<農相、処理水を「汚染水」>「発言を撤回し謝罪」
小林泰彦「トリチウム水(ALPS処理水)のリスクについて」
2021年6月18日(食のコミュニケーション円卓会議学習会資料)
http://food-entaku.org/img/file260.pdf
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