オトナの食育 

所感編 第142回(通巻196回)2023/7/10号掲載 千葉悦子(高28)

認知症関連の講演を拝聴して思うこと


   
 暑い時期なので、ゾッと寒く感じそうな話題として、認知症を取り上げます。先月に認知症基本法が成立しましたしね。

本年76日に水村直氏(東邦大学医療センター大森病院 放射線科)による「アルツハイマー病治療戦略におけるアミロイドPET検査の役割」という1時間の講演を拝聴しました。PETは、positron emission tomography (陽電子放出断層撮影)のことです。
 
 日本の65歳以上の認知症患者は2020年で約600万人と推計され、2025年には約700万人(高齢者の5人に1人)に達すると予想されています。


 認知症の多くがアルツハイマー病で、脳内に「老人斑」と「神経原線維変化」が出現し、更に脳の萎縮が進行するそうです。「老人斑」はアミロイドβ、「神経原線維変化」はタウというタンパク質が凝集沈着したものです。このアミロイドβ やタウをPETにより可視化できる診断技術が登場し、従来は死後でしか知り得なかった脳内のことを、生きた状態で観察可能となります。一方、アミロイドβ を除去する薬も開発されてきて、こういう薬がどの程度効いているか可視化できるというわけです。

 これだけお読みになると、明るい未来を感じるかもしれませんが、脳組織は可塑性がほとんどないため、進行を遅らせることはできても、認知機能を正常に戻すことは困難ですから、進行した認知症が若い頃のように良くなりはしません。また、このPET検査は、まだ、一般に使われていません。

 ごく最近の話題として、米国の食品医薬品局(FDA)は、日本の製薬大手エーザイと米医薬品大手バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」を正式に承認しました。これが上記のアミロイドβを除去する薬の一つです。ただし、日本での承認は、水村直氏によると9月くらいか?ということでしたし、薬価が非常に高価とのことでした。

 私は医学や薬学の専門家ではないですが、現在、一般の人にとって認知症の予防や進行を遅らせるために大事で、努力次第で可能なことは、適度な運動とバランスの良い食事と頭を使うことと改めて思いました。この結論は当たり前で、つまらないでしょうが、水村直氏のスライドを見ながら、再確認しました。なお、アミロイドβは、40歳代から少しずつ何十年もかけて増えて行き、高齢になってから症状が現れることが多いそうなので、中年の内から、特に気をつけたいものです。さらに、食習慣は急に変えるのが難しいので、子どもの頃から良い習慣を身につけると理想です。ということで、この「オトナの食育」を書き続けて行こうと存じます。



■主な参考文献等

・水村直「アルツハイマー病治療戦略におけるアミロイドPET検査の役割」

 要旨 第60回アイソトープ・放射線研究発表会 要旨集p.81

・「アルツハイマー新薬、米が正式承認 エーザイなど開発 進行抑制に効果」時事通信 エーザイの認知症薬 米が正式承認 - Yahoo!ニュース

 


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