新年おめでとうございます。
毎年、良い年を期待しますが、昨年はロシアのウクライナ侵攻という思いもよらぬ事態となり、食料確保の課題が現実味を帯びました。
先月「いよいよ日本でも遺伝子組み換え作物の出番か~食料安全保障のあり方を考える生産者のホンネトーク~」というテーマのセミナー(主な参考文献等 ①)に参加しました。
パネリストの徳本修一氏(鳥取市で80 haの農地で水稲、飼料の生産を行う)の話は、特に印象に残りましたので、それを交えて年頭の話とします。
徳本氏が制作した動画「世界はこんなに進んでいる!アジア農業バイテク最前線」(主な参考文献等 ②)を視聴しました。この動画は、2022年10月10日~15日、フィリピンで実施されたPan-Asia
Farmers Exchange Program (汎アジア農民交流プログラム)に徳本氏らが参加して得られた現地のバイテク情報をまとめたものです。
フィリピンの農家では遺伝子組み換え農作物を栽培することで反収が倍増し、子どもを大学に通わせるようになったそうです。なお、従来の方法ですと、フィリピンの気候では安定した収穫がありませんでした。また、ベトナムやインドで遺伝子組換え農作物の栽培をする農家の話もあり、2 ha程度の小規模農家でも、農薬を減らせ、かつ、反収が増えたそうです。
日本では、インドのBtコットン(遺伝子組換え作物)を栽培する農家に自殺者が多いという噂がありますが、そんなことはないと現地の人が動画で話しました。
このような都市伝説といった話を打ち消して行きたいです。
日本の農業従事者の高齢化が進み、団塊の世代があと10年程で働けなくなり、その農地を任されるだろうが、徳本氏は「広大な農地は、従来の方法では手に負えない」と語りました。
効率的に農業をするには、GPSやドローンや高性能な農機具だけではなく、遺伝子組換え等の技術も必要ということでした。
残念ながら、「失われた30年」は、日本の農業にも言えると、このセミナーで改めて突き付けられました。ゲノム編集といった新技術により、以前に比べて的確に短期間で目指す品種を作れるとはいえ、困ったことに、各土地の気候風土に合う品種の作成には、年月が要ります。
たとえば、徳本氏の農地のある島根では湿害の対処が必要で、世界には乾燥耐性の作物はあっても、湿害に対処する品種はなく、作出するには年月が要ります。その上、良い新品種が出来てから、日本での法整備となり、さらに年月がかかります。
技術を伝えるメディアが「遺伝子組換えがSDGsに貢献出来る」という利点をしっかり伝えることも必要ですが、それを市民が理解し、人々を怖がらせる都市伝説のような話で儲ける人たちに惑わされないようにしたいです。
有機農業や従来の方法だけでは、誰一人残さずに十分食べていけるわけではないことを理解し、遺伝子組換え農作物の作付けに反対運動をしないようにと願います。
多くの市民が遺伝子組換え農作物の作付けに寛容で理解を示せば、政治家や官僚が遺伝子組換え作物に関する法体系の整備やそれに合わせた行政指導を推進しやすくなります。
地元の理解が得られて反対運動の心配がないと、農業従事者が安心して新しい方法を取り入れられます。言い換えると、現状の日本はそうなっていないです。
平成3年には基幹的農業従事者130.2万人の平均年齢が67.9歳で、年々平均年齢が上がっていて、しかも、65歳以上が90.5万人という統計を踏まえると、早く対処しなくてはなりません。
狭い意味の国防だけではなく、食料の安定供給も含めて先を見据えて備えたいものです。
私の説明だけでは納得できない方々は、徳本氏の動画や文章や対談等をご覧ください。
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■主な参考文献等
① フードエボリューションファンサイト
★いよいよ日本でも遺伝子組み換え(GM)作物の出番か★
~食料安全保障のあり方を考える生産者のホンネトーク~
2022年12月16日開催セミナー開催のお知らせ
https://foodevolution-fan.jp/news/202211.html
② 「アジアの農業はこんなに進んでいた!
日本人農家として初めて Pan-Asia Farmers Exchange
Program に参加してきた」
https://www.youtube.com/watch?v=J760h_0Z5-Y
③ 過度な「食の自然信仰」を生む心のカラクリとは「人工は悪」と決めつける認識はなぜ生まれる?
JCPA農薬工業会 2022/12/09 制作:東洋経済ブランドスタジオ
https://toyokeizai.net/articles/-/631940
④ 農林水産省HP 基農業労働力に関する統計 基幹的農業従事者(個人経営体)
https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html
⑤ 日本経済新聞朝刊2022年12月6日
「成長の未来図 北欧の現場から②」「古いままが最も怖い」「デンマーク、元祖学び直しの底力」
⑥ 日本経済新聞朝刊2022年11月13日
「チャートは語る」「アジア 膨らむ小麦リスク」「10年で消費3割増 ロシア依存 安保に影」
⑦ 日本経済新聞朝刊2022年11月25日
「国産大豆ミール最高値」「10~12月上昇
原料輸入費が重荷」「畜産農家の経営圧迫」
⑧ 日本経済新聞朝刊2022年11月29日
「新米価格、3年ぶり上昇」「主食にもインフレの波」「店頭2%高、円安・資源高を転嫁」
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