オトナの食育
 

所感編 第128回(通巻174回)2021/4/10号掲載 千葉悦子(高28)

大学入学共通テスト英語第6問Bは取扱い注意



今年1月実施の大学入学共通テスト英語第6Bは、文章自体が非科学的で、食品安全に関するルールや実態を無視したものなので、学校や予備校、塾等で取り扱わないようにと願います。この「オトナの食育」を英語の先生方はあまり読まないでしょうから、読者の皆様には、先生方や高校生に伝えて頂きたいです。

6Bの冒頭は‶You are studying nutrition in health class. You are going to read the following passage from a textbook to learn more about various sweeteners.”で、種々の高甘味度甘味料を含む甘味料に関する文章が続きます。

 

日本では発がん性のある化学物質は、食品添加物(高甘味度甘味料も含まれる)として認められず、食品として使われることはないですが、まるで、そういう甘味料が実際に売られているかのような文章です。さらに「自然のイメージの物が人工的な物より安全」という思い込みを基にしていて、この方面をきちんと学んだ受験生を混乱させそうです。

そもそも、栄養学の教科書に、今回のような記述はあるはずがないので、私はとても違和感を覚えました。食物学科卒の者としては、栄養学を含む食物学を英語の問題関係者がなめているようで、憤りを感じました。

朝日新聞デジタル2021129日の小林未来氏の記事に、次の部分があります。「大学入試センターによると、問題は特定の出典元からの引用ではなく、複数の資料を参考に、問題作成部会で作ったものだという。」複数の資料と言っても、非常に偏った資料ばかりを基にしていて、問題作成者やそれをチェックする人たちの科学リテラシーが問われます。

「日本食品添加物協会」や食品安全情報ネットワーク(FSIN)」や私が長年所属する消費者団体「食のコミュニケーション円卓会議」から、大学入試センターに意見や要望を出しました。食品安全情報ネットワークのHPは、科学的に鋭く、簡潔な指摘なので、ぜひお読みください。

 英語の先生方は、FOOCOM.netの「大学共通テスト 添加物の誤った記述(多幸之介先生の健康と食の講座)」も読まれると、どこがどう問題視されたのか理解が深まることでしょう。

 今回のことをきっかけとし、高甘味度甘味料を含む食品添加物の安全性のこと等について多くの方々の理解が深まると、社会全体の科学リテラシーが高まって、より良い社会に向かうと考えます。それで、周囲の方々にお知らせくださいますよう、お願い申し上げます。

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 5月号は休ませて頂きますが、私の健康問題によらず、単に、多忙が理由なので、ご心配無用と申し添えます。

 

■引用文献等

小林未来<甘味料に「誤解与える」 共通テストの問題文で業界団体>
 朝日新聞デジタル2021129日 

https://www.asahi.com/articles/ASP1Y6DBDP1QUTFL00B.html

 

■参考文献等

食品安全情報ネットワーク(FSINHP【活動報告】その他の情報発信
「令和3年度 大学入学共通テスト(英語・リーディング)における問題文選定についての意見と要望」

https://sites.google.com/site/fsinetwork/jouhou/exam_english2021

 

長村洋一「大学共通テスト 添加物の誤った記述(多幸之介先生の健康と食の講座)」FOOCOM.net

 https://foocom.net/column/takou/21543/



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