オトナの食育 
所感編 第121回(通巻166回)2020/8/10号掲載 千葉悦子(高28)

『食品添加物はなぜ嫌われるのか      
    食品情報を「正しく」読み解くリテラシー』 のお勧め
 

 
 この夏は遠くに旅行しにくく、読書をするなら、畝山智香子氏の今年度の新刊がお勧めです。近年も、人々を惑わす食情報があふれていますが、週刊誌や各企業の宣伝等に惑わされずに、限られた予算で安全性の高い食生活を送るには、この本が一押しです。必ずしも高価な食品の安全性が高いわけではないことも分かります。さらに、食品を海外に販売したい方も必読です。各市町村の図書館や高校や大学をはじめとする学校の図書室に備えて頂きたいです。

本書の紹介は、FOOCOM.NETに森田満樹氏が書いてくださっています。http://www.foocom.net/secretariat/foodlabeling/18781/

 書名に食品添加物という言葉を含みますが、それ以外の例も豊富に取り入れながら、食品情報を読み解いています。

 私が特に印象に残った個所(p.5556)を抜き書きます。某大手化粧品メーカー飲料の成分に「ブドウ(茎・新芽・若つる)エキス」もあることに関しての記述です。

::::::::::::::::::::::::::::::::::

これが「美容に良い」かどうかはともかく、食品としての安全性が確認されているものだとはとうてい考えられません。食品添加物なら事前に安全性を証明して承認されないと使えないのに、食品であると強弁すればどんなものでも使われて販売されてしまう、というのが現状なのです。
 食品添加物悪玉論は、そういう都合の悪い、より大きな問題から目をそらしてしまう役割を担っているように見えます。

::::::::::::::::::::::::::::::::::

いわゆる健康食品に注意すべきであることは、「オトナの食育」でも書いたことがありますが、自分が使わないものには注意が向かないので、気が付きませんでした。皆様、どうぞ原材料をよくご覧になり、取捨選択なさってください。

 もう一か所、なるほどと感じた部分をp.173から抜き書きます。

::::::::::::::::::::::::::::::::::

 食品をめぐる問題は、食品そのものが同じである場合も、それを食べる人間のほうが変われば変わります。例えば高齢者が多くなると持病のある人が増えるので、食中毒が重症になるかもしれませんし、発がん物質のリスクの計算に使う「生涯」の年数も変わってリスクが変わります。食習慣が変われば当然暴露量が変わるのでリスクも変わります。食品について「もう十分知っている」と言えるような日は永遠にこないでしょう。

::::::::::::::::::::::::::::::::::

 ということで、新規食品も出てきますし、食に関するリスク、言い換えると安全性については、学び続ける必要があり、知らせたいことが次々と出てきそうです。私がある程度元気な内は、書き続けたいと改めて思います。

 本書の最後の方の「科学のレベルを維持するために必要なこと」「学生の手本となっているか」は、特に考えさせられました。日本の食品産業のレベルが世界の中で後れをとっていくそうで、何とかできないか?と思います。それには、長期的視点を持って、科学を理解する賢い政治家、政治家に忖度せずに行政官や研究者らが説明できる雰囲気、そういう人たちを支持する市民がそろわないと、と思います。

 残暑が厳しく、新型コロナウイルスの心配もありますが、皆様、どうぞお元気でお過ごしください。


■引用文献

畝山智香子『食品添加物はなぜ嫌われるのか 食品情報を「正しく」読み解くリテラシ―』化学同人(20206月)

■主な参考文献等

森田満樹【新刊紹介】食品添加物はなぜ嫌われるのか(食品表示考)
「畝山智香子さん(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長)の新著のご紹介」(会員向けFOOCOMメールマガジン第488号を加筆修正しています)

http://www.foocom.net/secretariat/foodlabeling/18781/



■■オトナの食育 全メニューへ