オトナの食育 
所感編 第119回(通巻162回)2020/3/10号掲載 千葉悦子(高28)

新型コロナウィルスの対処
~リスクの考え方は、食の安全とも共通。冷静に対応を~

 



 
医療の素人ですが、現在の心配事「新型コロナウィルス」について、食や家庭科の面から書かせて頂きます。 
 
 食品をよく加熱すれば、ウィルスや細菌を死滅できて、食中毒
という急性のリスクはゼロと考えられますが、焦げると長期的な毒性のリスクがわずかにあり、リスクゼロには出来ません。それに、生食特有のおいしさはなくなり、熱により分解する栄養素―たとえばビタミンC―が減少します。
 
 
朝日新聞221日朝刊に神里達博氏が「広がる新型肺炎 弱者の視点に立つ契機に」で述べたように疾病との闘いは常に、リスクや利益のトレードオフ」になり、食の安全の考え方と共通します。
 
 32日から多くの学校が休校と急に決まり、学校や学童保育に関係する人や給食業者等は、特に大変な対応にさらされています。また、春の行楽や外国からの旅行者で収入を得るはずだった方々もお気の毒です。神里達博氏の「全ての社会活動を停止し、人の動きを止めれば、ウイルスは次の宿主が得られず、自然消滅するだろう。だがそれは、私たちの社会システムが「窒息」することでもある。そうなれば結果的に、感染症以外の原因で犠牲者が出ることもありうる」という話が現実となっています。

 思い返すと、20113月からの原発の問題でも、避難によるリスクが非常に大きかったというトレードオフがあります。「チェルノブイリの方が福島より放射性物質による汚染は大規模だったが、それでも、あまり線量が高くない地域の高齢者は引っ越せずにそのまま暮らして、健康の問題はなかった。環境を変える方がずっと大きなリスクとなる」という話を当時はしにくい雰囲気がありました。この「雰囲気」とか「空気」というのが厄介です。そういった過去の教訓を生かし、感情に流されず、冷静に科学や統計に基づく総合的な判断をしたいものです。

 トイレットペーパーが店頭からなくなったのは、私が高校生の頃の石油ショックの際に経験済みです。こういう時こそ、経験豊富な年長者の出番です。家庭科の教員としては、「消費者の権利と義務」を教える際に「社会的弱者に配慮」も具体例も添えながら話したいです。
 冷静に考える基は、普段からの学びにあると思います。「リスクのトレードオフ」といった概念や、古紙の状況、食料の自給率や主な輸入先を含む食の状況等、生活必需品に関しての情報を得ておくことです。今回は、引用文献等や参考文献等に挙げたものも参考になさってください。

 気持ちを安定させるには、西田昌規氏が「新型コロナウィルスと社会不安、メンタルヘルス」の中で、WHOの「コロナウィルス蔓延中のストレスへの対処」と題するパンフレットを意訳した中の、次が役立つと思います。
・信頼できる人と話すことが役立ちます。友達や家族と連絡を取ってみましょう。

 私は、微生物を研究している長女と電話で話しました。社会に漂う「空気」に遠慮せずに本音で話せる家族や信頼できる友人がいることは大事と改めて思います。

 新型ウィルスだけでなく、一般的な風邪や食中毒の予防として、手洗い・うがい、時々お茶など糖のない物を飲むといった、あまりお金をかけなくてもリスクを低減出来ることは、ずっと行っていきたいものです。ただし、手を頻繁に洗う主婦である私は、手が荒れるのでハンドクリームを手放せません。荒れた皮膚からたんぱく質が入って食物アレルギーを起こすかもしれないからです。これも一種のリスクのトレードオフですね。

 この原稿は10日より早めに書いていますので、感染の広がりによってはしっくりこないかもしれませんが、ご容赦ください。

 韮高旧学区は伊豆なので観光業の方や教員も少なくないでしょう。新型コロナウィルスの問題が大きくならず、バランスの良い食生活を心掛けながら、皆が健康に暮らせるよう、祈っています。


■引用文献等
朝日新聞2020221日朝刊 神里達博「月間 安心新聞+」「広がる新型肺炎 弱者の視点に立つ契機に」

西田昌規「新型コロナウィルスと社会不安、メンタルヘルス」 
  https://news.yahoo.co.jp/byline/nishidamasaki/20200301-00165332

■参考文献等
厚生労働省HP「令和2年3月1日時点版 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」
  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html
朝日新聞202033日朝刊 「専修大教授・ジャーナリスト 武田徹さんに聞く」
       「新型肺炎 危うい国主導の危機管理」「正念場の市民社会 急ぎつつ慎重な検討・対話を」

朝日新聞202032日夕刊 <最大の脅威は人間関係の「汚染」>「イタリア・休校中の高校長、生徒へメッセージ」
日本経済新聞202032日朝刊「新型コロナ 進まぬ検査」<「13800件可能」実際は4分の1
      「機器の活用や調整に不備」<「陰性」でも安心できず 精度に限界 受診殺到で拡大リスク」

日本経済新聞202031日朝刊「新型コロナのたんぱく質 細胞へのくっつきやすさ SARS1020倍」
日本経済新聞2020229日朝刊「中国産野菜、輸入6割減 新型コロナ
     人手不足、出荷滞る 2月前半 外食向け在庫手薄に」
日本経済新聞2020228日朝刊p.37 東京・首都圏経済「新型コロナ 検出素早く 理研など 新手法実用化めざす」
日本経済新聞2020228日朝刊「新型コロナ 政府専門家会議3委員議論」
     「感染しても8割が軽症 発症前の発見は難しく」<国内の早期収束「チャンスある」>

日本経済新聞2020226日朝刊<電車出勤後「手洗わず」18%>「13県の男女、民間調べ」
      <「自分は大丈夫」感染予防策、徹底されず>

日本経済新聞2020224日朝刊 医師 小柳津直樹「経済教室」「私見卓見」「感染症対策、平時から備えよ」
日本経済新聞2020217日朝刊「核心」「あなたの寿命 こう延ばす」「化学的根拠の効果じわり」
食の安全と安心を科学する会H.P.「食の安全・安心Q&A 番外編」
     「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防法について」 
     http://www.nposfss.com/cat3/faq/covid-19.html

 

 

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