オトナの食育 
所感編 第118回(通巻161回)2020/1/10号掲載 千葉悦子(高28)

オリンピックも発達段階に合わせて・栄養の重要さの再認識を
1964年、母の心を奪われて寂しかった経験から

    
   

 
 今年はオリンピックが日本で開催され、東京のあちこちの駅やホーム等が新しくなりつつあります。昨春90歳で亡くなった実母に手を引かれて歩いた東京の風景が無くなり、寂しさも感じます。

 1964年の東京オリンピックは小学1年生でしたから、家族に遊んでもらえず、つまらなかったです。幼い私には、開会式や観戦より石けりやトランプとかの方が楽しかったです。母は「オリンピックは、生きている内に日本に来ない」と言い、普段と全く違い、取りつかれたようにテレビを見てばかりでした。しかし、4年後には衛星放送で外国でのオリンピックがテレビで見られましたし、冬期オリンピックも日本で開催され、「親の言うことは、必ずしも当たらない」と批判的に思ったものです。

 教育に携わる人はご存じでしょうが、年齢や発達段階に合わせた教育等が大事です。私のようにオリンピック嫌いになっては逆効果です。

 今年は猛暑の中開催ということで、小学校低学年だけはオリンピックに招待されても辞退する学校があるとか。そういう判断も良いと思います。

 そのような私ですが、昨年の大河ドラマ「いだてん」は楽しめました。母は「金栗先生に女学校で習った」と目を輝かせて非常に誇らしげに話したし、「(水泳の女性選手)前畑頑張れ!」と楽しそうでしたからです。加えて、東京生まれ育ちの母方祖父母や母の生きた時代が興味深かったです。

 昨年、「今回の大河ドラマは金栗先生が主人公」と母に話しても、認知症のため反応がほとんどなく、私は残念で辛かったです。母は骨粗しょう症の症状が出るのが早く、圧迫骨折による最初の入院から16年間も患いました。しかも、その前に手首の骨折もありました。戦前は学校給食がなくて、母は牛乳を飲む習慣がなく、牛乳をそのまま飲むのが苦手で、戦争で十分食べられず、さらに、骨にカルシウムを蓄えるべき年齢で子どもを産み育て、骨密度が高まらなかったと考えられます。

 カルシウム等の栄養不足→骨密度の低下(骨粗しょう症)→骨折による安静や運動不足→骨に重力がかからず、より骨密度が下がる→何度も骨折→長く歩けなくなる→介護施設で暮らし、刺激が減る→認知症が進む、というような典型的な悪循環でした。

 せっかく金栗先生に教わりオリンピック好きであっても、長寿になった現代、栄養状態が悪くては元も子もありません。確かに、運動の試合を見るのは楽しく、特に、箱根駅伝に韮高の卒業生が出場すれば、私も気分が上がります。勤務先の大学が優勝すれば、単純にうれしいです。しかし、自分の健康や家族にとって大切なことを忘れないようにしたいものです。

 観戦しながら、スナック菓子や清涼飲料水やアルコール飲料をたくさん飲食したり、脂質の多い出前のピザ等に偏ったり、などということがないようにと願います。

   
    

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