オトナの食育 
所感編 第117回(通巻159回)2019/11/10号掲載 千葉悦子(高28)

リスクの認知傾向を踏まえて、食生活を含む現実に対処を

 

 先月の台風19号や21号等の非害に遭われた方に、心よりお見舞い申し上げます。

 19号が近づく頃、テレビをつけていたら、「進路が狩野川台風に似ている」という表現が耳に入り、小学校の担任や親から聞いた狩野川台風の悲惨な話が心底怖かったので、ぞっとしました。と同時に、「勢力が非常に大きく、暴風圏が非常に広いので警戒が必要」といった重大な報道があるにもかかわらず、他の地方の人々が他人事に感じてしまい、備えを怠る虞があると心配になりました。私が知る限り、静岡県より他県の死者数が多く、報道における表現の難しさを改めて感じました。

 災害や食や健康を含む各種リスクの大きさを正しく受け止めたいものですが、実際には難しいです。

 中谷内一也「安全。でも、安心できない・・・」に、リスク認知研究の初期から広く知られる一次的バイアスについての説明として、次の部分があります。

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 簡単にいうと、あまり発生しない望ましくないことについては発生頻度を過剰に推定してしまい、逆に、大変多く発生している望ましくないことに対しては、発生頻度を過少に推定してしまうという認知傾向を指している。
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 かつて「3大嫌われもの」と言われた、食品添加物・残留農薬・遺伝子組換えは十分管理されていて安全性が高くても、いまだに実際よりリスクを過大にとらえる人が少なくないです。逆に、死因として大きな比率を占める糖尿病やがん、心疾患、脳血管疾患といった病気に関しては過少に受け止め、たとえば、減塩や健康的なダイエットに本気で取り組まない場合が多いことでしょう。

 リスク認知の一般的な傾向を踏まえて、リスクの大きさを正確に受け止め、個人の生活や政策に生かす世の中になることを望みます。そうしなければ、無駄な対策に追われて本当に大事な対策が遅れ、個人も国も貧しくなったり、被災したりするからです。

 私も食方面で、正確に受け止めて頂けるような情報提供に向けて努力し続けたいと思います。

■参考文献等
中谷内一也「安全。でも、安心できない・・・― 信頼をめぐる心理学」ちくま新書746 筑摩書房(2008
読売新聞オンライン2019112日「台風19号、死者89人・不明7人に…上陸から3週間」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20191102-OYT1T50253/
日本経済新聞20191016日朝刊「台風19号 農水畜産物への被害拡大」「キャベツ8%高/生乳を破棄」
日本経済新聞20191021日朝刊「脳卒中の死亡率 岩手・青森、男女とも高く」
朝日新聞2016323日夕刊「バランスよい食事 やっぱり大事」「7.9万人追跡調査」「脳の病気 死亡リスク2割減」

 

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