オトナの食育 
所感編 第112回(通巻152回)2019/3/10号掲載 千葉悦子(高28)

輸入品をはじめ、小さいリスクを心配せず、
まずはバランスの良い食事の実行を


 4月に入学や就職等で親元を離れるお子さんをお持ちの方もいらっしゃることでしょう。「基礎栄養学」に「個々の細胞の寿命には長短の差があり、最も短い腸管の粘膜細胞は絨毛の底部で新たにつくられてから12日後には先端で剥げ落ちて行く。赤血球の寿命は120日(中略)細胞内の物質は(中略)常に古い物質は新しい物質によって置き換わっている。」とあり、バランスの良い食事は大事です。それを実行するためのお金や時間等は惜しまずに、健康を大事にすることを伝えたいものです。とはいえ、大学生への仕送りが少なくなっているとか、賃金が伸びないとかの統計資料があり、また、私の担当する学生がバイトで睡眠時間を削っていることを目の当たりにすると、安全性を確保しながら食費をかけない知識や知恵が必要と思います。

 輸入食品を避けて野菜や果物の摂取量が減るよりは、国産品が高騰するような際には輸入品も取り入れる方が良いと考えます。というのは、先月に厚労省が主催した「輸入食品の安全性~みんなで知ろう、話そう、考えよう~」という輸入食品の安全性確保に関する意見交換会に参加して、最近の様子を確認できたからです。日本の中では、食品の安全性は残留農薬や食品添加物や微生物など、輸入品でも国産品でも同じ基準が適用されます。

 20年くらい前は、輸入した冷凍野菜の残留農薬基準値違反がニュースになりましたが、そういう問題を受けて、日本の商社が輸入する産物の生産現場や加工工場を定期的に訪問するなど、食品安全自主管理システムを構築しているそうです。また、東京都の平成28年度の抜き打ちで食品を選ぶ違反調査結果では、国産の違反が0.07%、輸入食品が0.04%で、違反率は同程度ということでした。

 先月号に書きましたように、無視できるようなごく小さいリスクを大きく報道する場合がありますが、そういうものに惑わされず、あまりに陳腐で一般には興味を持たれない、けれども十分エビデンスがあるのでどの専門家も大事にする「バランスの良い食事」と、衛生に注意することとを実行して行きましょう。独り立ちするお子さんにも、どうぞお話しください。

■引用文献等
池田彩子・鈴木恵美子・脊山洋右・野口忠・藤原葉子編「新スタンダード栄養・食物シリーズ9 基礎栄養学」東京化学同人(2015

■主な参考文献等
厚生労働省 輸入食品の安全性確保に関する意見交換会 輸入食品の安全性~みんなで知ろう、話そう、考えよう~」
    資料(2019213日) 
 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/1111212865_00013.html

森田満樹「超加工食品ってなに?食べてはいけないの?」FOOCOM.
   NET 2019222http://www.foocom.net/column/cons_load/17671/

                      
オトナの食育 全メニューへ