蒸し暑くなりました。そういう気候でもおいしく、青魚も野菜も十分とれて健康的で、作り置き可能、しかも、お財布にも優しい比較的手軽な料理の一つとして、今回の料理をお勧めします。
「NEW調理と理論」に「エスカベーシュとは、スペインの漁村の地名で、そこで行われている揚げ魚を酢油につけた料理をそうよんでいる。」とあります。それで、魚を揚げなくてはならないと思い込んでいた私はエスカベーシュを作りませんでしたが、昨年7月の朝日新聞に載った三國清三氏の指導によるレシピは、揚げずに少量の油で焼くので、「これは良い!」と思いました。
揚げるという料理を自分で行うのは、暑い時期には避けたいものです。また、揚げ物をすると、換気扇や台所がとても汚れるので厄介です。それに比べれば、アジの3枚おろしという薄い魚を炒めるなら手軽です。マアジは春から秋が旬ですから、この時期、美味なものが手に入りやすいことでしょう。いつも塩焼きか刺身では芸がないので、おなじみのマアジを、野菜も使う、目先の変わった料理にしてみましょう。
【材料と下準備】(2~3人分)…朝日新聞記事を左に太字で書き、私の意見は右に載せます。
アジ…3尾 3枚おろしにし、骨を抜く。お店でおろして頂けると簡単。
ただし、ぜんご(ぜいごともいう)が取り切れていない場合は、注意して取ると良い。
骨を抜くのが面倒な場合は、半分に切りながら、骨を除く方法もある。
塩、コショウ…適量 塩は、おろしたアジ250 gに対して、減塩を主とする場合、0.6 g程度でも美味。
強力粉…適量 新聞記事に「強力粉をまぶして焼くと、香ばしい焼き目がつけやすい」とあり、それに
越したことはないけれども薄力粉でも十分美味。なお、「調理と理論」の揚げ魚の
エスカベーシュの材料には「小麦粉」とあり、その種類までは指定していない。
「強力粉がないから作らない」と消極的にならないように。
オリーブオイル…20 g 大さじ1でも特殊加工のフライパンの場合は出来るが焦げやすく、その後、
フライパンを洗わずにそのまま野菜を炒めるのに不向きなので、
やや多めの量がお勧め。
<漬け汁>
オリーブオイル…60 g おろしたアジ250 gに対して40 gでもOK。これより減らさない。
オリーブ油がない場合は、サラダ油や他の油でもよい。
にんにく…1片 (2等分に切る) 厚ぼったい場合は3等分でもよい。
玉ねぎ…75 g (薄切り) これよりやや多めがお勧め。
にんじん…30 g (千切り) 他の野菜を増やすなら、にんじんも増やすと良い。
人参だけ増やすと、色のバランスが問題。
セロリ…30 g (千切り) これよりやや多めがお勧め。
ローリエ…1/2枚 1枚入れてもかまわないが、アジ6尾に対しても1枚で十分。
唐辛子…1本 (種を取る) ピリ辛が苦手、あるいは、幼いお子様がいる場合は、入れなくても十分
美味。使わなくて大人向けの場合、しょうがをやや多めにするのがお勧め。
白ワインビネガー…70 g 米酢60 gでも、リンゴ酢でもかまわない。
ただし、リンゴ酢の場合は甘いので、砂糖を控える。
水…40g オイルや酢を減らすなら、水も30 g程度に減らす。
グラニュー糖…15 g オイル・酢・水を減らしたら、糖も減らす。
甘くないのが好みの場合、10 g程度がお勧め。上白糖でも十分美味。
しょうが…4 g (すりおろす) 皮をむいた正味の量
塩…5 g 減塩を主とする場合、おろしたアジ250 gに対して、3 gでも十分美味。
【作り方】
1.
アジに塩、コショウをし、小麦粉をまぶす。
2.
熱したフライパンにオリーブオイルを入れ、1を皮目から焼く。焼き色が付くまで両面焼き、深めのバットに移す。
3.
2のフライパンで漬け汁を作る。オリーブオイルとにんにくを入れて熱し、にんにくに焼き色が付いたら
玉ねぎ、にんじん、セロリ、ローリエ、唐辛子を入れて軽く炒め、白ワインビネガー、水、グラニュー糖、
しょうが、塩を入れる。全体にしんなりしたら消火。
4.
熱い3を、2にかけるように入れ、粗熱が取れたら、冷蔵庫へ。
30分くらいたった頃から食べても美味。1晩おくと味がしみる。
【盛り付けに伴う衛生上の注意点】
以上の作り方で行えば、すべて加熱料理なので、バットや菜箸がきれいなら、衛生的に作り置きできます。しかし、写真のように、生のピーマンやレタス等を彩りに使う場合は、よく洗った野菜を食べる直前に盛り付けるのが理想。帰りの遅い家族がいる場合は、冷蔵庫に入れるなど対策をしてください。
【その他】
玉ねぎ、にんじん、セロリを元のレシピより10 gずつ増やして3人分とし、レタスを1人につき40 g添えると、野菜を1人100 g近くとれます。1日350 gの野菜が推奨されていますから、1食分として理想に近いです。仮に、野菜、芋、海藻等を使う汁ものを組み合わせれば、栄養バランスがさらに良いです。
三國シェフのレシピより、漬け汁を少なく提案するのは恐れ多いですが、捨てることなくほとんど全部頂くことを想定し、健康と環境とを重視しました。
日常食は1汁1菜が、作り手としてはやっとであると思います。「女性も社会で活躍を!」という時代ですし、また、幼い子どもを長時間、親一人で育てるような場合、料理ばかりしていていては、心身共に健康な子を育てることは不可能と思います。また、男性も料理をする時代になり、「どうせ作るなら、三國流に素敵な洋食を作りたい」という趣味的なニーズにも、「安い・早い・うまい・作り置き可」といった日常生活のニーズにも合うように書いたつもりです。
5月の日経の記事に「日本惣菜協会が24日発表した2017年の中食市場規模は16年比2.2%増の10兆555億円となり、初めて10兆円の大台を超えた。」とあります。私も惣菜を使いますが、手作りは家族の好みや健康に合わせた減塩をはじめとする調整が出来るという良さがあります。働き方といった世の仕組みの検討も含めて、男女皆が協力して、手作りの灯を消さずに、次世代にも残せることを希望します。
← 「作り方4」 バットに入れて漬けている最中、アジ5~6匹分
↓ ≪盛り付け方の例≫ それぞれ皿にアジ1匹分を盛り付けたもの。

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