オトナの食育 
資料編 第22回(通巻116回)2015/12/10号掲載 千葉悦子(高28)

クローズアップ現代 本当にキケン?あふれる食品情報>
中央公論12月号「疑似科学」と科学のあいだ>

 
 師走なので、今月はお休みにしたいところですが、資料編として書いておきたいことが2つありますので、今月はその紹介です。

 1130日放送のNHKクローズアップ現代「本当にキケン?あふれる食品情報」を見逃した方は、HPで内容をご覧ください。実は私も所用があり、見逃しましたのでHPで見ました。
 今回の番組での主なコメンテーターは松永和紀氏、11月号の「オトナの食育」をはじめ、私が頼りにする食の安全関係のジャーナリスト、ライターです。また、この番組内で有識者の一人として登場された畝山智香子氏は松永様と共に、「オトナの食育」資料編21回(20157月号)で紹介した「食品の安全と安心 考える材料と見る視点」の著者です。
 私が書いてきたことと特段、変わりませんが、一家庭科教員である私が書いても、皆さんあまり信用しないでしょうから、NHKのクローズアップ現代のホームページでご確認頂きたいと存じます。

 1130日朝日新聞と日本経済新聞朝刊のテレビ欄の、クローズアップ現代の部分に、「食べると危険?安全?見極め方を伝授!」と書いてあり、危険か安全か?という白黒つける2分法の考え方が表れていると思います。しかし、グレーゾーンが幅広く存在することは、中央公論12月号の特集<「疑似科学」と科学のあいだ>の、鼎談<魅力的な“ストーリー”にご用心 「疑似科学」が人々を惹きつける理由>にも載っています。

 白黒二分法ではなく、グレーの濃淡でリスクを考えるべきですが、それをなかなか人々が出来ない理由として、心理学部教授の中谷内一也氏が宝くじの例を挙げて説明されていて、非常に分かりやすいです。氏は次のように述べていらっしゃいます。

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 (前略)低い確率は過大視し、高い確率は過小視するんです。宝くじを買う人は、「当たらないと思うけど、買わなければ確率はゼロだから」という言い方をします。極めてゼロに近くても、ゼロでなければ高く見てしまう。逆に100%大丈夫だと言われると安心するんですけど、99.9%大丈夫と言われると、残り0.1%のほうが気になってくるんです。リスクが限りなくゼロに近くても、ゼロでない以上は怖いと感じてしまう。

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 その他、「なるほど」と思うことがいろいろありますが、後は本書をお読みになってのお楽しみに!
 とは言え、本書の松永和紀氏「氾濫する怪しい健康情報 疑似科学を担ぐ医師と科学者たち」の「健康への近道は何の変哲もないこと」の次の部分は、特に抜き書きさせて頂きたいです。

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(前略)食の分野に戻れば、健康への一番の近道は決まっている。野菜や果物多めのバランスの良い食事を適量とること。(中略)疑似科学が主張する効果などと比較にならないほど大きな効果、そして強いエビデンスがある。
(中略)
 だが、なんの変哲もない結論で、新味がない。この内容でテレビ番組は視聴率を稼げるか、週刊誌が売れるか?そう考えると、メディアが疑似科学を伝えてしまったり、面白おかしくセンセーショナルに情報を変えたりする理由が見えてくる。
(後略)

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 だからこそ「誰ももうからない、(しかし個人個人は)知ってて得する食の情報」と、この「オトナの食育」を韮高同窓会HPで紹介して頂いています。

 12月は忘年会が複数あったり、また、お正月も飲食の機会が多かったりするでしょうが、先の番組の石田貴士氏(千葉大学助教)の「科学的に見ると、暴飲暴食や過度な飲酒などのほうが、よりリスクは大きい」というコメントを思い出しながら、健康に気を付けてお過ごしください。


引用文献等

中央公論201512月号の特集<「疑似科学」と科学のあいだ>
  中谷内一也、武田徹、竹内薫 鼎談<魅力的な“ストーリー”にご用心 「疑似科学」が人々を惹きつける理由>

1130日朝日新聞・日本経済新聞朝刊のテレビ欄
NHKクローズアップ現代「本当にキケン?あふれる食品情報」
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3740.html
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3740_all.html


 

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