オトナの食育 
資料編 第14回(通巻59回)2011/3/10号掲載 千葉悦子(高28)

共著「わたしがつくる 朝ごはん」の紹介・
母校への著書寄贈のお勧め



  共著で中学生向きレシピ本を作成
 今月始め「朝食ナビ わたしがつくる 朝ごはん」という、中学生の副教材である初心者向けのレシピ本が出来ました。私が所属する「お茶の水女子大学附属学校家庭科研究会」のメンバーの内、10名で作成しました。中学生向きですが、料理の初心者なら何歳であっても役に立ちます。4月から自炊が始まる方、大学に入学したり定年を迎えたりして、1から料理を習いたいと思う方など、税込300円という低価格でたしかな知識を楽しく得られ、さらに、これをもとに実際に作れば、技術も向上することでしょう。

プロセスを丁寧に、イラスト豊富に説明
 ネットや新聞・雑誌で料理のレシピを見ると、「熟練主婦には分かり切ったことを省略していて、初心者には作れない」「塩分が多過ぎて食べにくいし、不健康」と思うものがあります。その点、この本は担当者が分量を量りながら実際に作って慎重にレシピを決めましたし、独りよがりではなく他の先生方の目も通っていますので、間違いが少ないです。また、どんなに簡単なプロセスも、豊富なイラストを添えて説明しますから、初心者が本を見るだけで分かることでしょう。まさに「料理のナビゲーター」です。

ナビの弱点を補強・・・基礎的知識・応用も
 しかし、「ナビ」があると自分で考えなくなりがちで、応用が利かないのではないか?という懸念があり、このことは私が18年間所属する「家庭科の授業を創る会」で問題になって来ました。
 この本は、個々の料理が作れるhow toだけでなく、調理の基本や食品の基礎的な知識や、ときにはその料理の応用例もあります。
 もちろん栄養のことも配慮し、料理ごとにエネルギーや食品群別の摂取量も入れ、さらにその料理を含んだ朝食献立例も載せました。中学校家庭科教科書には、食品群別の摂取量の目安がありますので、それと対応させると栄養的にどの程度にすれば良いか、およその見当がつきます。
 さらに料理と栄養を結びつけられるよう、「およその分量を知ろう」というページを冒頭に設け、鶏卵1個(中身が)50gと同じ重さの野菜の写真も載せ、およその目安がつくようにしました。

おいしく作るだけなく、環境配慮も
 単においしさを求めるだけでなく、環境に配慮する具体的な方法も入れています。たとえば、材料を無駄なく使う方法をイラストで示し、油料理の後のフライパンの後始末、ごみの処理なども載せました。日常食は、この観点も大事です。

安全に配慮
 保護者が子どもに対して、つい任せられない理由の一つは「料理は危険が伴う」ことが考えられます。私がここ数年所属する「食のコミュニケーション円卓会議」男性会員で、定年退職後料理を始めて最近は慣れてきた方が「自分の指まで料理しちゃいました」と、包帯でくるんだ指の説明をしました。何十年も料理してきた私も、たまに爪くらいは切ってしまうし、自分で手当てできる程度の軽いやけどをすることがあります。それで、この本では「!注意」として、衛生的な取り扱いの方法や事故を防ぐための注意点も載せました。
 長年、児童・生徒・学生に調理実習を通して教えてきた面々が、「初心者はこういうことが分からない・危ない」という経験をもとに、注意すべきことを添えました。

私の担当部分
 30のメニューの中で、私が担当したのは野菜いため・青菜のおひたし・卵焼きです。野菜いためは、地域教材社ホームページのこの本の紹介に、例として掲載しています。青菜のおひたし・卵焼きの、自宅での練習の写真を今回載せます。本の写真は、出版社が用意した器に盛り、プロのカメラマンが撮ったものです。
 なお、卵焼き器については「オトナの食育」本編第2回、2005年12月10日号の最後の方に書きました。必要な方はご覧ください。

見栄えを気にし過ぎず、とにかく朝食を作って食べましょう
 本の場合、「おいしそう!食べたい」と思わせて本を買って頂き、実際に作ってみようという気になってもらうために、見栄えを重視します。それで、実際の普通の家庭よりは、材料の種類を豊富に使いますし、朝食とはいえ、器やテーブルクロス等もある程度見栄えを考えます。
 しかし、まったく同じにと考えずに気楽に作って、朝ごはんを食べること自体が第一です。たとえ「写真にするとちょっとね・・・」というものであっても、家族が作れば衛生的に安心でき、作りたては本当においしいものです。
 反面、朝は忙しいので時間を短縮したいということで、ブロッコリーやカリフラワーのような、ゆでないと食べにくい野菜はほとんど入れず、トマト・きゅうり・レタス・ベビーリーフのような生野菜が多く登場します。しかし、実生活では季節の野菜をたくさん上手に使ってください。

昼食やお弁当にも応用を
 「朝食」ということで本をまとめましたが、卵焼きのように弁当のおかずに使えるものもありますし、日常食なら昼食にしても良いものもあります。気に入られましたら、書店では置かない本なので、出版社から直接お買い求めになるか、取引があるお店の場合は注文してください。どうぞよろしくお願い申し上げます。


母校への著書寄贈のお勧め
 今回出版した本も、韮山高校の図書室に寄贈予定です。
 メルマガ100号に、韮高PTA会長下山浩様が「韮高OB著作コーナーへの寄贈のお願い」を書いてくださいました。皆様もぜひ、ご著書を寄贈してくださいますよう、私からも改めてお願い申し上げます。
 私の末子がつい先日、都立○山高校を卒業しまして、最後に頂いた「図書館通信」に、先輩30名のお名前と著書(翻訳も含む)、略歴等がずらりと載っています。その上、その高校の旧職員のお名前と著書も2名分ありました。私の末子のように、それを見たからと言って、すぐに勉学に励むわけでも、大志を抱くわけでもない生徒もいるでしょうが、大勢の中には、そういうことが良い意味の弾みや励みになる場合もあるでしょう。
 末子の卒業式で祝辞を述べられた同窓会長は前東大総長で、弁舌さわやかかつ後輩への愛情が感じられました。これについては、私の母校である韮高は負けると思いましたが、それでも、東大の教授をはじめ、各界で活躍されている方々がいらっしゃいます。都会の高校でなくても、特殊な私立でなくても、大志を抱いて努力し続ければ道が開かれるかもしれない、と考えられるように、同窓生が知恵を出し合い、具体的に役立っていけると良いです。
 メルマガ読者数は少ないので、ご自分の周囲の同窓生で、本を書かれた方にお声掛けしてくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

主な参考文献等
「朝食ナビ わたしがつくる 朝ごはん」
  著者:お茶の水女子大学附属学校家庭科研究会(代表 牧野カツコ) 監修:田中京子 
      地域教材社(2011)
地域教材社ホームページの「朝食ナビ わたしがつくる 朝ごはん」の部分
  http://www.chikyo.co.jp/cookingcards/breakfast.html
「とことん家庭科」―ありそうでなかった「調理実習の研究」家庭科の授業を創る会編(2007)
「高校家庭科教科書における調理実習の掲載状況および課題」河村美穂・千葉悦子 
  日本家庭科教育学会誌第50巻第3号(2007.10)