龍城のWA! 第45回-2  小池政就さん(高45・日本大学講師)
  −震災から半年−ナリ&ヤスのエネルギー対談

 今年3月・龍城のWA!に登場された小池さん(高45)に再登場して頂きました。
 3月号メルマガ発行翌日に起きた大地震により、エネルギーに対する私達の意識も大きく変わりました。
今回は工学博士である小池さんに、東京大学教員時代にも専門とされていました「エネルギー問題」に関して、世間の関心も高まっている中でお話を伺いました。インタビュアーは同期生のエンダン(龍城応援委員会)員、前田泰宏さん(高45)にお願いしました。
□前田
 韮高同窓会110周年記念総会、なかなか盛況でしたね〜。小池君も懇親会ではまさかのエンダン一員として登場してくれて、学ラン姿、凛々しかったね〜(笑) 総会も、参加してみると楽しいものでしょう?

■小池
 お互い卒業から早20年弱にもなるし、学ランはさすがにコスプレ状態だよね!
同窓会総会もエンダンも初めてだったけど、皆さんとても温かく迎えてくれて、本当に感謝でした。
でも高校時代は大人になったら中身もがらっと変わるかと思っていたんだけど、結局変わらないもんだねー。
□前田
 自分もあの頃から小池君を知ってるけど、確かに本質は変わらないものの立派に成長していると思うよ。

■小池
 またまた。三人娘と格闘しつつ、会社を背負っている前田君には到底かないませんよ。
自分なんか不安定で家族を背負えてなくて引きずってるから。いつも恨まれてるよ。
□前田
 まぁまぁ、お互いほめ殺し合いはこれくらいにしとこうか。

一応成長の証として(笑)、今日は、高校時代には話題にすらしなかった『エネルギー分野』について聞かせてもらえるかな。今や工学博士として立派な専門家だしね。
ずばり、今後のエネルギーに関して、何が一番の問題なんでしょうね?

■小池
 エネルギーというと、日本ではおそらく『原発』が皆さんの今の関心事だとは思うけど、原発はあくまで今の世界全体のエネルギー供給の1割にも満たないものなんだよ。一番基本的な問題としては、今後のエネルギー需要に対し、需要の約9割を満たしていた石油・石炭・天然ガスといった化石燃料の供給が不足していく事だね。
 正確にいうと、これらの資源は無くなってしまうのではなく、段々と見つけやすい掘りやすい油田や炭田・ガス田が減って、より見つけにくい、掘りにく いものしか残らなくなってしまうという事なんだ。
特に国際的には、(化石燃料の)需要が伸びていくことが想定される中で、供給が追い付かずに価格が上がっていくことが既に表面化しているよね。また国内的には、エネルギー需要は上がらないまでも、輸入にほぼ全量を依存する化石燃料のコスト増や、供給量が減る懸念が高まっているんだよ。

□前田

 なるほど。既存のエネルギー資源に頼れなくなってきているということなんだ!?
確かにガソリン価格はここ数年高止まりしているように思えるしね。それにたまに急に高くなったりするよね。


■小池
 そうなんだよね。自分も東京ではバイクに乗っていたんだけど、一時は都内で200円/リットル近くになって、代わりに自転車で排ガスを吸いながら頑張っていた時もあるよ。
 短期的には、基本的な資源制約の問題に加えた幾つかの要因で価格が必要以上に高騰するんだ。例えば産出国でテロや暴動などが勃発したり、最終的に製品として供給する精製部門で問題が起こったりしたこともあった。需要面でも、今回の原発事故後のように一時的に天然ガス等が必要になったり、投機資金が市場になだれ込んだりすることで価格に跳ね返るしね。

□前田

 都内でも自転車だったんだね〜。韮高時代も田んぼ道を走ってたし、自転車は永遠の友だね!?
話を戻すけど、このような問題に対してこれからどのような取り組みが必要になってくるのかな?


■小池

 国際的に出来る事は、天然資源の供給能力を拡大するための探鉱・開発を進めることだね。
よく誤解されるんだけど、「石油はあと40年」とか聞くよね。でもこれは40年で石油の全てが無くなってしまうのではないんだ。あくまで現在の在庫として生産が可能な量を表しているのであって、資源量はこれからの探鉱・開発や回収の技術向上次第でまだまだあるんだよ。それに、これまでは掘るだけでは生産することができなかった資源が回収できるようになってきてるのを知ってるかな?シェールガスオイルサンドといった資源で、これらは通常の石油や天然ガスの数倍賦存しているんだね。

□前田

 「シェールガス」「オイルサンド」は震災後に新聞とかに出てきて知ったよ。でもこれらは量的にかなり少ないのかと思ってた。数倍あるなんて。・・・つまり、ホントはいっぱいあるから大丈夫、と思っていいのかな?


■小池

 量的には当面は大丈夫だね。
ただ、ストックとフローは違うので、地下にいっぱいあるから生産もいっぱいできるという訳ではないんだよ。投資技術開発も必要だし、それでもやがて生産コストはまた上がっていくしね。また賦存地域が偏れば、何かあった場合の供給リスクも高まるよね。
それにこれらの天然資源には、やはりCO2を排出するという環境上の問題が伴っている。今は、CO2を分離して地底や海底に貯留するという取り組みが行われているんだけど、それでもやはりコスト増や新たな環境問題に繋がってしまうかも知れない。

□前田

 うーむ。完全な解決にはならないのか。
そうすると他にはどうすればいいんだろうか。


■小池

 やはり、省エネの促進と代替燃料へのシフトが欠かせないね。
通常の省エネの余地は新興国や途上国にはまだまだあるし、日本のような先進国でも、これまで貯蓄できなかった電気の蓄電等の取り組みによってまだ可能性はある。それに例え現地にお金が無くても、京都議定書のメカニズム等を使えば日本や先進国が進出できるインセンティブにも繋がっていくだろうね。
そして中長期的になるけど、省エネのポテンシャルを更に超えるのが代替燃料へのシフトなんだよ。再生可能なエネルギーや立地上安全であれば原発による供給と、需要面でもそれに併せた二次電池や燃料電池の普及が求められてくるだろうね。

□前田

 かなり展望が開けてきた気がしてきたよ。
それにしても日本の役割が大いにありそうだよねー。


■小池

 さすが、鋭いな!そうなんだよ。
 エネルギー問題は国際的に繋がっているし、小資源国である日本が実は今後大きなチャンスを持っているんだよ。
 自分は研究上アジ アから中東まで多くの国の政策関係者と話してきたけど、日本との連携に非常に関心を持っていたのが印象的だったな。ただ、日本の政治家はいつも内輪揉めでそれどころじゃないみたいなんだよね・・・

□前田

 首相も政権が変わっていつの間にか三人目だしね・・・。
 ところで再生可能エネルギーって最近話題だけど、具体的にはどんな可能性がありそうなのかな。

■小池

 これまで水力バイオマスが先行していたけど、徐々に風力太陽光が伸びつつあるのは良くテレビでもやってるよね。設備価格はだいぶ下がって きているし、補助制度も拡充しているのでこれから確かに伸びていくとは思うよ。その他にも地中熱地熱温度差発電潮力など、とにかく多様な可能性を続けて探っていくべきだね。
 過去にも石油ショック後に「サンシャイン計画」として政府が主導してやって段々と衰退しちゃったけど、今回は国内だけでなく国際的な取り組みもどんどん進めてもらいたいね。
 例えば太陽エネルギーがさんさんと降り注ぐ砂漠で太陽光発電や太陽熱発電の可能性が眠っているし、そこでエネルギー多消費型の産業や植物工場なんかを展開するのも大いに日本の国益にも繋がると信じてるよ。

□前田

 世界中ぐるっと電気エネルギーを回すみたいなことってできないのかな?
なにも砂漠に工場作らなくても、砂漠で発電した電気を日本までロスなく送電できれば!っていうか、世界中で作った電気を世界中で利用できれば無駄もないのにな〜って思うんだけど。
富士川(周波数)問題の世界規模な話だけどね。送電技術開発と国際問題が課題か!?
 やっぱり高校時代とは違うね。「国益」なんてあの時代の会話には絶対出てこなかったよ。良く出てきたのは「
たこ焼き」かな。
でもそれこそ日本のエネルギー問題の為にも、小池君頑張ってよ!


■小池

 ありがとう!!・・・って、一緒に頑張らないと(笑)。僕らも後輩が増えてきたしね。
とにかく、今回の原発事故もあって将来のエネルギーを取り巻く環境は厳しくなっていくけど、解決の道筋はあるから。特にその多くを海外に依存する日本は何もしなければ窮していくんだけど、総力を挙げて国際的に取り組むことによって日本が世界を変えることが必ずできる!
 その為にも、まずは自分自身が静岡からの「新エネルギー」として今日も自転車で頑張るから、後ろからの追い風よろしく頼むよ!

□前田

 エコな僕の追い風は「うちわ」並みだけど、頑張るよ!


 あらあら・・・締めくくりは 「エネルギー対談」ではなくて『エネルギー漫談』になってしまいましたね(笑)
  
いろんな人と会話を続けるうちに、何かが見えてくるのではないかと感じました。
  同窓生のネットワークを活用していくと、幅広い分野の情報を得ることができます。
  韮高生という繋がりを大切にしていきたいですね。(ドラえもん)