輪が 自由勝手旅の醍醐味

第15回  
☆ ミケランジェロとストラディヴァリの国 伊太利亜へ☆ (1996/Winter)
2007/11/10号掲載
栗原 一  
  (高2回卒)

ピサの斜塔に向かう広場で・・・・  ITALIAN ? or   FRENCH ?
      ↓
                              
↑ ひと目で気に入った Goldの仮面  美人でしょ













































      




















 ある旅行社の社長が学生時代に海外を放浪した際、同じ航空路で日本発と外国発では後者の方が格段に安い事に疑問を抱き、運輸省に質問しました。「そんな航空券は存在しない」との回答。“格安航空券”のことでした。交通公社でも同じでしたが突っ込んで問いますと「有ったって無い!」と言う落語的語録!でもこの学生の運動で日本でも“幻の航空券”の存在が日の目を見たのです。私達のような貧乏人でも世界中に飛べる扉が開かれた時代です。
 そこで第一に行きたい国はITALYでした。屋根の無い博物館と呼ばれるほど、遺跡・美術品・芸術の多い国だったからです。例によって休暇の許容範囲は9日以内。あとはフライトの延着を理由にするしか術なし。ですから初回は下見の心算でプランを案じました。冬季ですので北のミラノをゲート空港にし、ベネチアからローマに南下するルートを採りました。

 到着後一夜明けた朝は小雪が散らつく天候でしたが世界第二の大きさのドーモ聖堂に行き、エレヴェータで屋根に起ちました。聖堂の屋根が見晴台とは最初の驚きでした。奈良の大仏殿の屋上を見物台にする発想は絶対に無いでしょう! 次にスカラ座に歩を進め、入場券を求め舞台を見物しました。催しは夜で建物の内部だけの歩行体験です。あの世紀の歌姫マリア・カラスの華やかなオペラの舞台は個人の想像に任されますが印象に残りました。ミラノ城内併設の美術館ではミケランジェロの遺作となった未完成の「立像彫刻」には他の展示と違った薄暗い配慮があり、作品を妖しく浮き立たせて暫らく歩き始めるのをためらいました。

 ヴェネチアへの270`を移動中バスの車窓から松の並木が眼に入りその葉が五葉松と同じ形状であるのを知りました。水の都ヴェニスは地形の造成上、鉄道もバスも連絡橋の終点で進入禁止。市内の交通はゴンドラと大小のエンジン付き船に引き継がれます。バスと呼ばれる200人乗り,Taxiはモーターボート、メインストリートはSカーヴの運河です。ハイシーズンは観光客で住民の何倍かの人数になりHotelは毎年の常連で満室、チェックアウトの際来年の予約を済ませて帰るからでした。ですから近郊本土のHotelから通うことが普通です。2月のメインイヴェントは仮面カルナヴァルでそのコンクールの上位入賞を目指す通人の扮装の凝り様は半端ではありません。40日後の開催を控え会場のサンマルコ広場周辺の商店は熱気に包まれていました。ハイヤーに当たるピカピカのゴンドラにも乗り、リムジン並みの料金にご祝儀を感じたものです。夕方から本降りになった雪に最初の買い物はエナメルのスノウブーツでした。

 翌朝、見事に装飾された黄金の美女の仮面を手に280`南下。アルプスを離れて雪化粧の路を100`も走ると雨に煙るフィレンツエに入り、ドーモ聖堂近くのプチホテルにチェックイン。狭い石畳の小路をバスはミラーを摺らんばかりに右左折する運転に舌を巻きました。センスのよい部屋に満足したあと小雨の街に出ました。初めて会った芸術家に今回は私の似顔絵を40分でクロッキーしてもらうモデル体験。
 翌日はイタリアの青空に迎えられ郊外電車と満身傷だらけの市バスを乗り継ぎ一時間、ピサの市街に入りました。毎年数ミリ傾斜が進んで来たので地盤工事の最中とかで斜塔は登上禁止でした。
 アルノ河畔の宝石と呼ばれる街のウフィツイ美術館にはボッチェルリの「ヴィーナス誕生」「春」などが有るので入館には長蛇の列。館前の広場ではミケランジェロ作「ダビデ像」のレプリカが注目を集めていました。広場で「ITALY人か?FRANCE人か?」と問われてビックリ!更に南下してローマに逃げました。

 この巨大な遺跡には戴冠のことわざ(諺)が多い。総ての道はローマに通ず ローマは一日で成らず ROMA軍の大遠征 エジプト・クレオパトラとローマ・アントニィ 象徴的なコロッセアムには猫が沢山いて世話を焼く婆さんが、餌代を要求する妙な掲示板を示します。スパゲッティとピッツアの元祖と有名ですがトメトケチャップは使いません。ナポリタンを初めて食べたイタリア人が「うまい!これなに?」ですって・・・靴の出来栄えは紳士用、淑女用とも見事!弦楽器も抜群でストラディヴァリはクレモナの工房産、値も抜群ですね。建築に関しても古代からその技術の高さはヨーロッパ各地に神殿・テアトロを建立して人々に威容を誇示して来たのは周知の事実です。なかでも水を自在に制御して地形の高低を技ありで越えて目的地に導入する水道橋が、現在でも脈を打っているのは驚異です。逆U字形の橋脚の真下に立ち見上げた時、不思議な感動をおぼえました。卓越した美術的芸術感覚に裏打ちされた国民性は実に魅力ある存在感を私達に打ち込みます。  
 地球上最大の聖堂ヴァチカンに入場。世界のキリスト教会に絶大な影響を持つ総本山です。先ず右手にミケランジェロ24歳の傑作「ピエタ像」が眼に入りました。まさに神の手による聖母子の彫像です。礼拝堂の天井画も画家としてのミケランジェロの天才振りが伺えます。この一廓がローマ教皇宮殿で小さくも独立国であることに驚かされます。明るく陽気な民族の印象が強く芸能にも有名人を多く輩出しているのは、羨ましいほどの気候に縁ること大ではないでしょうか。抜けるように碧く澄んだ空に形よい?白い雲!雨が落ちてきても直ぐ止んで斜光が輝く心地よさ。そしてなんと誘惑に満ちた声帯をもつ民族でしょう。オペラやカンツオーネ然り、JAZZでもソフトバラードの甘美な歌唱は学生時代から魅せられました。

 下見のつもりで訪れた国でしたが、出会いの機会も幾つか在りました。やはり言葉の壁は有りましたが観光客も多いので片言の英語は通じました。仮面カーニバルの衣裳店のオーナーなどは再訪時にハッキリ記憶していました。移動中の車窓や街を散策中に気が付いた妙なポーズによく出会いました。男性ばかりですが「指しゃぶり」なんです。そう、子供は珍しくありませんが学生くらいから年配者まで親指・人指しゆびが主でした。夢見るように 無心に 中には爪を噛んだり・・・伊太利人にマザコンが多いと何かで読んだことがありますが証拠を覗いたようです。ダヴィンチと「モナリザ」の謎の微笑も答えの一つかも知れません。

 日本と同じく四方を海に囲まれながら魚料理は生臭く、素材の資質と料理法に疑問を持ちました。 食いしんぼの性(さが)でしょうか。




ミラノ城で出逢った黒い人達 焼き栗のお薦めコミニュケーション