輪が 自由勝手旅の醍醐味

第41回 
★パックツアーでは味わえない!旅のハプニング集★ March/2010
2010/3/10号掲載  栗原 一 (高2回卒)




































  

 いつ何処でどんな思惑・手段で私達を鴨にしようと観察し、狙っているセミプロの連中が何食わぬ動作で接近してくるのです。
 このドキュメントは、パリのメトロを降りてホテルに帰るまでの小さな事件です。改札を出てから地上に出るエスカレータに、私が左側でワイフと手を繋いで乗って半分あたりまで昇った時、スニーカーの若い男がワイフの右側を押しのけるように追い越し、そして二人の前に立ちはだかったのです。無礼な男だと上から下へ目を移して行くと、右手の薬指と親指でライターをつまんでいるのです!瞬時にこれで次に起きる事件が脳裏を矢のように走りました。上昇するステップに故意にライターを落とす!最上部分の櫛の歯形に停められてライターはダンスを続けているでしょう?これを拾うふりをして私達二人をせき止め、前後から貴重品をいただく方程式が浮かんできたわけです。「何をしているんだ!どけ!」日本語でどなりつけ、二人で背中を突き飛ばしたのです。後からの仲間は現われず、失敗したスニーカー男はまるで何事も無かった様にゆっくりと歩いて立ち去りました。
 次は同じホテルに滞在中、ワイフが内臓疾患で日本人ドクトルの往診を受けた際のハプニング?です。車で気軽に往診してくれて注射も含め日本円で約9万円を請求されましたが、もちろん手元不如意です。「直ぐ用意して置いてください」とドクトルの要求でした。保険が無いと高額ですね。ハワイでは救急車を呼ぶと6万円と聞きました。翌朝、200m離れた郵便局のATMでフランを引き出し振り返ると、歩道にいた男が街路樹の裏側に身を隠しました。ワイフは局内で切手を選んでいたので、私の側にはいなかったのです。不審に思ったとき、車道を隔てた反対側の歩道をリレーのバトンを受け取ったように歩き出したグレイのスーツの男に気が付きました。追いついてきたワイフに「付けられている!店に入ろう」次の角にハンバーガーショップが在るのを思い出したからです。店内の右側にレジを兼ねたカウンターがありました。“ボンジュール・アン・ドウ・トァ・・”あとは意味不明。でも註文を訊いているに違い有りません。付けてきた男の姿は見あたりません。“フライド・ポテト”“?”不思議なことに註文したい品の写真が何処にも表示されていないのです。そこでワイフが手真似でメモとボールペンを要求。これは通じましたね。紙コップに入ったジャガイモ角棒フライのデッサンを見たマドモアゼルは、愛嬌のある笑顔で少し変わった東洋人の私達に揚げたての品を2セット渡してくれました。イタリアの中華レストランでも同様のことがあって、ソフト・アイスクリームが通じなくて店内でデッサン教授をして喜ばれました。
 自国語に格段の誇りをもって神の言葉と自負するパリでのハプニングでした。



謎めいたロシア女帝と同名の女性は小生のクラスメートの孫娘で、第14回に登場しています。
成長して今は大学生ですが伏線の役どころと紹介に止めましょう。・・・・・・・