輪が 自由勝手旅の醍醐味

第40回 
★パックツアーでは味わえない!旅のハプニング集★ February/2010
2010/2/10号掲載  栗原 一 (高2回卒)




































  

 最近は病院や役所など公共の施設の中でも見かけるようになりましたが、パリの地下鉄の色彩案内帯矢印は、初めて入国した外国人にもわかり易くて名案と思いましたネ。巾60センチ程の白いペイントの帯が、下車したホームに描かれているのです。矢印の途中には行き先が表示されています。EXIT(出口)とか Ruble(ルーブル)とかアルファベットの文字を見たことの有る人なら、子供でも想像がつきます。

 モロッコへ行ったとき、帰りの便が、王様の道楽で操縦する自家用機の空港着陸が優先された影響によってフライトが遅れた結果、パリでの乗り継ぎが不可能になった末に発生したハプニングの一例です。
 搭乗予定機であったイベリア航空の手配で、やむなく急遽パリ:ドゴール空港に隣接する五ツ星クラスのヒルトンHotelに一泊せざるを得なくなりましたが、こちらは予期しない高級ホテルのベッドに寝ることになりました。翌朝、ファッションモデルのような黒人ウエイトレスの笑顔のサービスで朝食を済ませましたが、乗り継ぎ予定のAir,・フランス機は夜行便です。ポッカリと時間が空きました。ワイフと眼が合った時、同じ発想が走ったのです。美術館へ行こう!そしてカフェオレとサバラン・オーラム。メトロの主要線に乗り、ルーブル美術館へ矢印に従って歩きました。難なくガラスのピラミッドの前に出て、入場券を求め入館しました。警戒も緩くなったダ・ヴィンチの“モナリザ”に再会し、“ミロのヴィーナス”の背中を改めてじっくりと鑑賞し悦に入ったひとときを得ました。これもモロッコの王様の空港独占で発生したプレゼントです。
 地下に戻って再びメトロで程近いオルセィ美術館まで脚を延ばしたのです。午後の時間帯で車内は空いていました。すると何時の間にか私の周囲に若い10代の女の子達が集まっていたのです。淡いみどり色のトレンチコートの襟を立てたリーダーが、私によろめくように抱きついて来たのです。ワイフは出入り口の近くのポールを握って立っていました。「掏り」だと直感した私は、逆に彼女を抱くように引き付け、体重の位置を変えて膝を折って転倒したのです。不思議な事に乗客の誰も声を立てず、驚く風もありませんでした。悲鳴を上げて走り寄って来たのはワイフ一人だけだったのです。薄笑いを浮かべたリーダーは顎をしゃくってグループにサインを送り、開いたドアから風のように姿を消しました。被害はまたしてもサングラス1台のみ。私に残されたものは、二度と実体験は御免ですが貴重な本物のドキュメンタリのスタッフの一員に選ばれたことと、ヒロインとのからみが有った事でしょうか?幸い物騒な凶器を持っていなかったのも救いでしたね。残念なのはリーダーの瞳の色を覚えていないことです。多分私達に近い民族で印象が希薄だったのではないでしょうか?だから嗅覚のほうが敏感でほのかに覚えているような気がします。ですからキッチンから漏れてくる料理のイメージを考えるのは嫌いではありません。それだけに外国の魚類市場に近づくのは絶対御免です。さすがにミシュランのメンバー達の日本の寿司店を選ぶ基準になったのはこれでした。生臭さのメーターが全然ふれなかったのが決め手だったのです。
 ではリーダーの残した香りは?私にはほのかな香水の残り香のようだった気がします。吐く息も交ざるくらいの至近距離でしたから・・・名付ければ“パフューム・ド・カスバ”とか・・



パリ音大の在校生だそうでしたが どうして どうして プロはだしですよ!
 ですからフアンもついていて毎日チップの他にドリンクの差し入れも有って、
実力派としても羨ましいアルバイトですね。
 勿論市営メトロ局の厳しい審査があり、ただのアマチュアでは有りません。