輪が 自由勝手旅の醍醐味

第38回 
★お国柄いろいろ:忘れ得ないエピソードあれこれ集 @V
2009/12/10号掲載  栗原 一 (高2回卒)





































  

 このエピソードも訪問回数の一番多い国・INDIA インド人と日本人の国際結婚で生まれた実に魅力度満点のファミリーならではのエピソードです。
 家族構成はインド・東部コルカタ出身のモハメド・イドリス君、日本・兵庫県出身の小野明須香夫人、長女のアリシャちゃん、次女の沙耶香ちゃんの四人。なんともスペシャルオーダーの家族なのです。
 最初のキッカケは首都ニューデリーのコンノット広場ですれ違ったイドリス君の「今日は」の挨拶で、完璧なアクセントの標準語でした。普通は“コニチワ”でしょう?私は小学校を中国:旧満州遼寧省瀋陽市(奉天)の教育専門学校附属千代田小学校を卒業したので完全な標準語が必須だったのです。ですから方言のアクセントには嫌でも敏感になって成長しました。父母とも静岡東部生まれですが、東京生活の影響で私の幼児期にはほぼ方言のアクセントは消えていたようです。しかし本編で紹介するイドリス家の言語は非常に間口が広いのです。初めて自宅に招待されたときは、Indiaのヒンディ語・英語・日本語の混合で聞き分けるのはクイズのようでした。でも公用語だけでも9種ある上に、生活する地方のベンガルや南部のタミル語も絶対必要ですから大抵の人々は20種くらい聞き分けることが可能でしょう。国土も人口も日本の約10倍のインドでの言語の多様性の説明に、便利な漢字の羅列が続いてしまいました。本題のエピソードにもどりましょう。
 家長のM・イドリス君はイスラム系です。西ベンガル州の州都コルカタで長男として産まれたのです。5歳のころから親を助けて走り回る聡明で責任感の強い持ち主だったとききました。でも東京より多人口のコルカタでの生存はきびしいものでした。縁有って聖地ブッダガヤに移り、此処で適性を発揮したのです。修行僧の宿坊でアルバイトを考案し天性を自覚したのですからモ親ががりの“オタク”とは違います。この強烈な個性のDNAを受けついだ姉妹のエピソードには限が有りません。
 明須香夫人は名の示すように大和の血を引く穏やかな才色兼備の女性で、イドリス家の奥方として実に適格と思われます。現在は現地に進出・移転する会社の法的手続きを管理する法律事務所に勤務、インド人にも一目ある存在になりました。
 この両親の愛に挟まれて成長しつつある姉妹のユニークさは、幾つか付き合いのある家族のうちでも特別な展開を感じさせてくれます。優劣の付け難い二人ですが、姉の“Arisya“アリシャちゃんから筆を進めましょう。彼女を初めてイドリス・レジで会った時は3歳でした。カーペットを敷いた部屋に入った時に「靴はいていてはだめ!」とワイフに言いました。見ればArisyaも土足です。「あなたもそのままよ」と言われたときの照れた笑顔!忘れられない仕草です。この時モデルとして一年間養女にしたいと思ったくらいです。先日何年か電話番号が不明になり安否を心配していましたが、偶然ダイアルした電話口にyoung ladyが出ました。もしやと「アリシャ?」と呼びかけると答えが振るってましたね!「私は日本でアリシャ」「インドでもアリシャです」このような答え方をする少女がいるでしょうか?矢張り優れたタレント性の持ち主だったのです。後で明須香夫人から聞きましたが、ロシア語のレッスンも優秀で今年の夏、推薦生に選ばれ3週間ロシア留学をしたそうです。
 さて残った妹の沙耶香ちゃん。この姫が姉に劣らないDNAを受け継いでいまして、なにしろライバルの先輩が眼の前に常にデモっているのですからウカウカしている訳にゆきません。この沙耶香ちゃんもワイフと初対面の時、ある戦法に訴えたのです。ワイフのイヤリングがいたくお気に入り。自家用車の後部シートに立ち上がり、ワイフの肩をポンポンと叩いて耳もとで「コレ、可愛いよ、これ、かわいいよ」どうです!見事な柔軟戦術でしょう?
 この知能指数・IQの高さはイドリス・ファミリーの強力なる将来の推進エネルギーの欠くべからざる条件と思う「輪」のメンバーです。
 
▼左から 妹・沙耶香  姉・Alisya アリシャ  明日香夫人 です                  
    
                     ▲珍しく微笑しているパパイドリス君