オトナの食育 
所感編 第61回(通巻95回)2014/3/10号掲載 千葉悦子(高28)

さば缶のスパイシーカレー
~防災食になる缶詰をおいしく料理~

 
 先月の大雪は大変でした。3年前の311日の大地震だけでなく、大雪や台風でも孤立したり、停電したりすることがあると思い知らされます。何があるか分からないので、備えとして、そのまま食べられる缶詰を常備したいです。
 缶詰は、賞味期限を過ぎても長期間、保管状態が良ければ衛生的に食べられますが、おいしさを考えると、適度なところで使って、新しい缶詰を補充したいです。本当の災害時には「味がどうの・・・」と言ってはいられないでしょうが、平時ならおいしくしたいですよね!
 今月は「S&Bスパイス&ハーブマスターの使いこなしレシピ」(レシピ中では「本」と略す)に載る「ジンジャー香る さばカレー」を元に、私なりにアレンジした「さば缶のスパイシーカレー」のご紹介です。
 元のレシピではカレー粉も使うのですが、買い置きがなかったので、ターメリック・シナモン・赤唐辛子で代用しました。放射線照射した香辛料の良さを従来の過熱蒸気殺菌の香辛料との比較で体験するために、何度かスパイスから作るカレーを料理しているので、「ざっとこれくらい」と見当をつけられました。
 私は、いつもはチューブのしょうがやニンニクを料理には使いませんが、今回、レシピ通りに使ってみて、支障がなかったです。少人数の家庭で、生の材料を使い切るのが無理な場合は便利と思います。
 たいがいの材料の量は、上下しても大丈夫ですが、
赤唐辛子の分量は特に慎重にしたいです。今回の小1/5は、辛い味があまり得意でない私にとって上限の量です。「大人向き」の量ですから、これだけはきちんと量って、控えめにし、最後に味見をして調節なさってください。
 次に増やし過ぎないように気を付けるべきはターメリックです。多過ぎると、私にとって気持ちの悪い味になります。
 なお、元のレシピでは、セロリとにんじんではなく、「たけのこ水煮」となっています。まだ、生のたけのこは走りですし、私は水煮のたけのこを好まないので、一般的な材料に変えました。
 1回目に作りました際、さば以外の部分が余り、ちょうど生のたけのこが手に入りましたので、下ゆでをしてから合わせて煮たところ、私や長女は「案外、たけのことカレーが合う」と感じました。ただし、息子は「あまり合わない」と申しましたので、感じ方は人それぞれです。たけのこの旬が来て、たくさん頂き物があるようなとき、試してはいかがでしょう?

<さば缶のスパイシーカレー>

材料分量
(2~3人分)

・サバの水煮缶・・・1缶<私が使用したのは、「マルハさば水煮」
             原材料名:さば、食塩 内容量(さばと汁を合わせて):190g>
・玉ねぎ・・・中1個 200
・レンコン・・・80
・セロリ・・・40g(本ではセロリと人参の代わりに、たけのこ水煮)
・人参・・・40
・しょうが(チューブ)・・・大1 生の場合、10
・にんにく(チューブ)・・・小1 生の場合、 5
・クミンシード(ホール)・・・小1
・サラダ油・・・大1
・薄力粉・・・大1
    ・ターメリック・・・小1
    ・シナモン(パウダー)・・・小1/5
A  
・赤唐辛子(パウダー)・・・小1/5(入れ過ぎないよう注意)
    ・カルダモン(パウダー)・・・小1
    ・コリアンダー(パウダー)・・・小1 

・昆布だし・・・250mL
・ローレル(月桂樹の葉)・・・1
・ソース・・・大1(本ではウスターソースだが、中濃ソースでもよい)
・大葉・・・4枚程度(本では香菜が第1のお薦め。好みの緑色の香味野菜を使ってください。
       写真は、わさび菜です。)
<本では、クローブ(ホール)3粒も入れるが、なくても十分美味>


作り方
1玉ねぎは薄切りにする。
   注:元のレシピや家庭科教科書では「みじん切り」となっていますが、「手を抜ける
     ところは抜く
」という方針の場合、これで十分。なお、フードプロセッサーでみじん
     切りにすると、水っぽくなり、炒めるはずが煮ているようになり、おいしさを引き出せ
     ないので、その方法は合いません。)
2 れんこんは皮をむき、一口程度の大きさに切って、酢水(水に少し酢を入れる)に
   浸しておく。

   注:れんこんは、アルカリ性で青紫色に変色しやすいので、白く仕上げるため、酢水
      に浸します。
3 セロリやにんじんも、一口程度の大きさに切る。

   注:セロリを少しでも入れるとスープやシチューなどがおいしくなると学術的に
      解明されています。セロリが苦手な場合は、ごく少量にします。)
4 鍋にサラダ油を入れて弱火にかけ、クミンシードを加えて焦がさないように炒める。
   香りが立ったら、玉ねぎを加えて、きつね色になるまで炒める。

   注:玉ねぎを炒める際は中火程度ですが、鍋の材質や厚さ・撹拌の頻度等の条件に
     より異なるので、よく見て焦げずにきつね色になるよう、気長に炒めます。この手間を
     惜しむ場合は、レトルトなどの炒めた玉ねぎをお使いください。
5 しょうがとにんにくを加えてさらに炒め、香りが出たられんこん・セロリ・にんじん・
   薄力粉とAを加えて、全体を混ぜ合わせる。

6 粉っぽっさがなくなったところで、だし汁、ローレル、ソースを加え、ひと煮立ち
   させる。
7
さば缶を加え木べらでざっくりとほぐしたら、弱火~中火で20分ほど軽くとろみが
   つくまで煮込む。この間、なべ底が焦げないように、時々木べらで鍋底から撹拌
   する。

   注:本では昆布出しがもっと多い(400mL)が、試作したら蒸発させるのに時間が
     倍以上かかったので、鍋の材質や厚さ、火力によるとはいえ、今回のレシピでは
     少なくしました。よって、各自調節してください。
8 野菜が煮えたのを確かめ、器に盛り、しそや香菜など好みの緑色の香味野菜
   を添える。



<応用・・・チキンカレーにする場合>
・さばを鶏肉に変更する場合は、しょうがを半分に減らしてください。
・チキンカレーの場合、昆布出しより、トマトピューレやその類似品が一般的と思います。ただし、念のために上記のレシピでチキンカレーを作りましたら、昆布出しでも十分美味で、違和感がなかったです。

<塩分について>
 さば缶には塩分が含まるので、塩を足さなくても十分味がつきますが、鶏肉などに替える場合、上記のレシピですと、小さじ1/4程度の塩を足してください。ただし、インスタントの昆布出しを使う場合、たいがい塩分が含まれているので、また、トマトの加工品に塩分が含まれる場合も、味をみながら調節してください。
 せっかく塩分控えめでも十分おいしいですし、和食の最大の欠点である「塩分過多」を調整できる料理ですから、塩を入れ過ぎずに、スパイシーなおいしさを味わって頂きたいです。

<知識や経験は、無駄なく、健康的で、おいしくすることにつながる>
 イタリア料理などでトマトやその加工品がよく使われるのは「トマトに昆布の旨味の主成分であるグルタミン酸が多いから」と言われます。材料の成分や特徴を知っておくと、天候が悪くて買い物に行けない場合、ある材料でおいしさを損なわずに代替できて便利です。
 また、加工食品の塩分のことも表示を確かめたり、味を注意深く気にしたりしながら知っておくと、上記のように健康的に応用できます。皆様も神経質にならない程度に気に掛けてください。

主な参考文献等
「S&Bスパイス&ハーブマスターの使いこなしレシピ」ソフトバンク クリエイティブ株式会社(2012
久保田紀久枝・森光康次郎編「スタンダード栄養・食物シリーズ5 食品学―食品成分と機能性―第2版補訂」
日本調理学科学会BLUEBACKS「料理なんでも小事典」講談社(2008
竹中恵美子・春日キスヨ監修「これからの家庭基礎」(2003
     (高校家庭科教科書の「本場の味に挑戦しよう」の「チキンカレー」を参考にしました。)
武政三男・園田ヒロ子「スパイス調味事典」幸書房(1997