オトナの食育 所感編 第34回(通巻65回)2011/9/10号掲載 千葉悦子(高28)
大震災後、今私たちが必要なこと、その4

 

緑のカーテン・・・楽しかったけれど、「らく」ではない
 7・8月に書きました我が家の緑のカーテンは、夏の強い日差しをある程度遮り、おまけにきゅうり8本を収穫でき、もうすぐ9本目が食べられそうです。地 植えでないし、小さいプランターなので、うまくいくか心配でしたが、とれたてのキュウリを楽しめ、家族の会話も増えました。
 けれど、「楽(らく)ではなかった」のも事実です。毎日欠かさず水やりし、出掛ける日は、家族に頼みました。猛暑の頃は1日2回水やりしました。
 また、農薬を使わないので、毎日葉をよく見て、表の色が変わっていると1枚1枚裏も見て、虫がついているものや病気が疑われる葉は取りました。14階ですが虫がつきます。セミなどが飛んでくるので、一緒に付いて来るのでしょう。
 偶然なのかもしれませんが、きゅうり2株といんげん3株を育て、いんげんの方に虫がよりたくさんつき、花は咲きましたが実がならず、最近やっと小さな実 が3つできました。面倒で何も調べず、「収穫はなくても緑のカーテンさえできれば、とりあえず良い」という調子なので、何か間違えたのかもしれません。
 また、葉や茎に触れながら世話をすると腕がかゆくなります。そういうのを我慢できない人には勧められません。

作物を育てて体験的に知ることにより、健全にリスクを捉えるようになると理想 
 14階のベランダでも虫がついて、無農薬で育てるのは手間が掛かりますし、水もたくさん必要なことを実感できました。たった8本のキュウリのために、何カ月間も1日
1〜3リットル程度の水が必要でした。
 ところで、私は10年以上もミントをベランダで育てており、増え過ぎたので今年の初夏、マンションの1階の庭に植えたところ、虫にやられ続けました。い ろいろな種類の植物が花壇にありますが、ミントが一番虫に食べられました。きっと、ミントは虫に対して無害なのだろうと考えます。
 このことから類推し、きゅうりを地植えで栽培すると、農薬もきっと必要なのだろうと改めて思います。以前、実家の庭で母が育てたきゅうりは無農薬でしょうが、数株しかなく、業としてたくさん育てるのとは違うと考えます。
 数年前に再教育講座で「そもそも農業は環境破壊」という話を伺ったことを思い出します。なかなか無農薬では栽培できない現実があるし、水もたくさん使い ます。エネルギーを得る方法に、何も問題がないものがないように、人間の食料を十分確保するには、環境負荷ゼロというのはありえない、とつくづく思いま す。

「リスクゼロはありえない」と分かることが大事
 「リスクゼロはありえない」と知ることは非常に辛いですが、大人になるにつれて、個人としても市民としても知った上で、いろいろなことを考えて判断しなくてはなりません。
 今春の原発の問題で、たとえば私が教える文科系の学生も「もともと自然の放射線が存在する」といったことを知るようになりました。また、私の講義や資料 から、農薬や添加物などについても冷静に受け止めるようになり、「どのくらいから、どの程度危険か?」を知って考えることが大事、と理解して行きました。

リスクについて、適切な資料を読んだり、講演を聞いたりしましょう
 リスクについてどう考えたものか、普段から知っておくと、いざというときパニックにならずに、きちんと捉えやすいです。最近読み、短めで分かりやすく的 を射ていると思いましたのは松永和紀司会、甲斐倫明・中谷内一也・畝山智香子討論の「放射線リスクの真実 ジャンクサイエンスに惑わされないために」中央 公論2011年9月号です。
 この討論者の1人である中谷内一也氏の講演を、私の所属する「食のコミュニケーション円卓会議」で行います。そのお知らせを載せます。

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「公開講座 消費者のリスク認知と信頼」のお知らせ

講師:中谷内一也氏 同志社大学心理学部教授
日時:2011年9月17日(土)14時半〜17時(受付14時〜)
場所:豊洲文化センター 第6会議室 
    http://www.kcf.or.jp/toyosu/index.html
対象:高校生以上の一般市民の方 先着50名
参加費:会員無料、会員外:1000円(学生無料)
申込方法:必要事項をご記入の上、必ず事前にメールでお申し込みください。
 ※申込み・問合せ:entaku002@yahoo.co.jp
 ※必要事項:お名前(フリガナ)、連絡先、所属(学生の方は学校名)、
          講師への質問等
主催:食のコミュニケーション円卓会議 http://food-entaku.org/
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  関西の先生を東京にお迎えしての公開講座で、貴重な機会です。どうぞお出かけくださいますよう、お願いいたします。

主な参考文献等
小島正美「正しいリスクの伝え方」放射能、風評被害、水、魚、お茶から牛肉まで
  エネルギーフォーラム(2011)
甲斐倫明・中谷内一也・畝山智香子・松永和紀
 「徹底討論 放射線リスクの真実  ジャンクサイエンスに惑わされないために」中央公論2011年9月号
村上陽一郎「安全学」の提唱者に聞く<フクシマ以後、いかに「安全」を確立するか>中央公論2011年9月号
日本経済新聞2011年8月5日朝刊「原発事故から学ぶ 下 原子力放棄、むしろ弊害大 
  国際監視体制危うく 信頼回復、監督能力強化で」 ジョン・ハムレ 米戦略国際問題研究所所長
朝日新聞2011年8月6日朝刊「今さら聞けない 風力発電 再生可能だが台風や雷は苦手」
朝日新聞2011年8月8日朝刊「ぶれる放射線測定器 数万円の市販品、正確な測定困難」
日本経済新聞2011年8月7日朝刊「知っ得ワード 放射線D 内部被曝の線量、粒子近くで高く」
  回答者=丹羽太貫・京都大学名誉教授
日本経済新聞2011年8月14日朝刊「知っ得ワード 放射線E がん発症率上昇検出できず」
  回答者=丹羽太貫・京都大学名誉教授
日本経済新聞2011年8月25日夕刊「牛肉出荷停止 全て解除 福島・岩手・栃木 汚染対策を確認」
日本経済新聞2011年8月29日朝刊「放射線巡る混乱 収束遠く」
  <「安心な値」定まらず>「専門家の見解割れる」
日本経済新聞2011年8月29日朝刊「リスク評価、国が情報を」唐木英明・日本学術会議副会長
日本経済新聞2011年8月29日朝刊「都市緑地 エアコン効果 0.2平方キロ、深夜で4000台分
  防大など ヒートアイランド冷却」