オトナの食育 所感編 第3回(通巻32回)2008/12/10号掲載 千葉悦子(高28)

骨粗しょう症の予防・・・バランスの良い食生活と運動を

 


 
私事で恐縮ですが、私の母が10月、骨粗しょう症のため4回目の入院をしました。この原稿が載る頃には、退院していることでしょう。
 正直なところ、兄や私の方が心配と多忙とで参ります。本人が激痛で一番大変なのでしょうが、家族も疲労し共倒れになりかねません。また、医療も介護も必要になります。そうならないために、長寿になった現代、骨粗しょう症の予防は個人と社会にとって大事なことの一つです。
 「日本の食を科学する」のp.48に「日本における骨粗しょう症の患者数は、約1,100万人と推定され、その約8割が閉経期以降の女性ですが、若い人でも、栄養不足や運動不足でかかることがあります。」と記述されます。私の母という単に個人的なものでなく、社会の問題の一つであることが、この数字からうかがえるでしょう。しかも、団塊の世代が70歳代になる頃には、もっと患者数が増えるのではないかと懸念されます。
 なお、孫引きは良くないのは承知ですが、共倒れしそうな状況なので、ご容赦ください。

同級生と実母の同病相憐れむ
 母の1回目の入院は6年ほど前、社会保険三島病院でした。見舞いに行くと、中学時代の同級生にばったり会い「どうしてこんな所にいるの?」と互いに思いました。二人とも実母が骨粗しょう症で骨折したためと分かりました。
 この他、学生時代の旧友との共通の話題は、母親の骨粗しょう症や介護であることも多いです。皆様はいかがでしょう?

薬だけでは解決できない
 私の母は、商品名ボナロンやフォサマックといったビスフォスフォネート製剤をずっと飲んでいますが、何度も骨折しました。一般的にはその薬は効果があると証明されているのでしょうが、個人差がありますし「骨の吸収を抑え、減りを食い止める」(朝日新聞08年11月7日朝刊)だけであり、劇的に骨密度が上がるわけではないようです。
 「化学と生物 第46巻11号」の<骨細胞と骨粗しょう症>を読むと、将来はもっと解明されて、より良い薬の可能性もあるようですが、根本的な解決は「予防」であることには変わりがないです。

大学生の昼食の貧弱さに戸惑う
 中高校生のうちは、保護者にお弁当を作ってもらえることが多いことでしょうし、少なくとも朝・夕はある程度ちゃんと食べられることでしょう。
 しかし、担当する講義が昼休み時間直後であるため、大学生の弁当を見せてもらえることがあり、残念に思います。手作り弁当では遠慮がありますが、テイクアウトのものを食べている学生に「見てもいい?」と聞くとOKで、男・女1人ずつ見せてもらいました。どちらも300円台ということでした。
 そのような安価に対してなら十分良い弁当とは思いましたが、栄養のことだけ考えると「不足」が否めません。学生が「(栄養的に)どうでしょう?」と聞いたので「私の手作り弁当なら、たとえば卵1個分の出し巻き卵が入っているけれど、それでは錦糸卵が少ししかない。朝と夕食、しっかり食べてね。」と申しましたら「やっぱり」という反応でした。
 別の学生は昼休みの後半にやって来て「昼はまだなの。買っていない。もう食べなくてもいい。実は近頃、金欠なの。」と言い、私に促されて、ちょっとしたものを買いに行き、食べていました。300円台という信じられない安価なパック詰めのものを早めに購入してゆっくり食べた学生の方が案外より良いのだと改めて思い、教えている理想と現実のギャプにくらくらしました。

細かな食の安全より、バランスの良い食生活を第一に
 今年は食の安全について心配になるような報道が多かった印象があります。が、日本において「食品テロ」と思われること以外については、それ程健康被害は心配ないと判断されます。
 つまるところ、日常生活でまず個人が気をつけたいのは「バランスの良い食生活」と考えます。若向けの女性用9号サイズの服はゆるみが少なく、細身にできていると思います。どうぞ、それに合わせないでください。服とは本来、自分に合わせるものです。服に合わせて、無茶なダイエットをし、流行を追うためにファッションにお金を掛け過ぎて、食費が極度に少ないのは、不健康のもとです。
 将来の日本が医療・介護倒れにならないようにしたいものです。
 なお、カルシウムの摂取の仕方については、『オトナの食育』本編第2回に書きました。骨粗しょう症の予防という観点では、今回引用しました「日本の食を科学する」の<食と骨粗しょう症の予防>がお勧めです。
この部分は熊谷日登美さんが書かれています。この先生は、私の学生時代の食物学科とサークルの1級下で、回転が速くて明るく、かつ優しそうなお嬢さんでした。当時は「さ」の付く苗字で「桜の花」の印象でした。今回この本を手に取り、懐かしく思いました。
 皆様、12月は特にお忙しいでしょうが、どうぞご健康で良き新年をお迎えください。


■引用文献等
「日本の食を科学する」酒井健夫・上野川修一編 朝倉書店(2008)
朝日新聞08年11月7日朝刊「あなたの安心 骨をがっちりD 薬の副作用より予防効果」
■おもな参考文献等
スタンダード栄養・食物シリーズ9基礎栄養学 第2版」
  倉田忠男・鈴木恵美子・背山洋右・野口忠・藤原葉子編 東京化学同人(2008)
『化学と生物 第46巻11号』社団法人 日本農芸化学会 (2008年11月)
朝日新聞08年11月3日〜8日朝刊「あなたの安心 骨をがっちり@〜E」
朝日新聞08年11月17日夕刊「食の健康学 カルシウムAダイエットで不足」
朝日新聞08年11月20日朝刊 東京東部 「中3の牛乳CM放送へ 品川女子、プロ顔負け ラジオで」
                          「結婚を前提に・・・飲んでください!」
朝日新聞08年11月20日夕刊「あしたの医療202XH 骨の再生力 極限まで』