オトナの食育 
所感編 第28回(通巻57回)2011/1/10号掲載 千葉悦子(高28)

「向かい干支」にヒントを得る、異質な考えと付き合う重要性

 
 新年おめでとうございます。
 今年は卯年、私の向かい干支です。向かい干支はウィキぺディアによると「自分の生まれ年にあたる干支から数えて七番目にあたる十二支の動物(十二支を円状に配した場合、自分の干支と向かいあわせになる動物)のこと。向かい干支を大切にし、身辺にその柄をあしらったものを持つようにすると、幸福が訪れるとすることが、江戸時代から俗信として行われた。」ということです。
 私が「向かい干支」という言葉を知ったのは、中年になりましてからです。私の身近な卯年生まれの人は、故人ですが夫の母です。義母と私とは、何かと違う点が多かったです。もっとも向かい干支だからではなく、1世代違えば考えが非常に違いますし、サラリーマン家庭に生まれ育った私にしてみると、商家から商家に嫁いだ義母は環境が違っていて、発想や常識の種類も、服装の好みなども異なりました。
 一緒に住んだとしたら、お互いおもしろくなかっただろうと想像しますが、そうではなかったので、はっきりと角を突き合わせるようなことはほとんどなったような気がします。
このような経験から、結婚を機に「伴侶や伴侶の生まれた家族という異質なものと付き合う」ことは、自分を見つめ直すきっかけが豊富になるという意味で、案外大切なのだろうと思います。否が応でも、それまで考えてみようとさえしなかったことを突き詰めて考えることになり、より良い生き方ができるとしたら、それは個人および社会の向上につながるでしょう。
 最近は結婚しない人が増えているそうで、上記のような点では、社会全体が停滞するのではないか?と、社会学者ではないのですが心配になります。
もちろん、未婚でも深く考えていらっしゃる方が多いでしょうが、職場の中でも対立はあるとはいえ、ある程度同質な集団でありがちでしょう。
 ところで、「食の安全」について、一般にはまだ誤解が広まったままです。
たとえば、日本経済新聞2009年4月10日朝刊「消費者行政の目指すべき方向 『保護』より『教育』に軸足を」の記事の中で、中島隆信、慶応義塾大学教授が、「賢そうに見える消費者と真に賢い消費者」の一覧表の中で次のように対比しています。
 一見賢そうに見える消費者…安全安心は100%保障されるべきだと考えている
 真に賢い消費者…リスクを完全になくすには膨大なコストがかかることを知っている。

 また、朝日新聞2010年12月27日朝刊<「日本型食生活」創造を>に次の文章があります。
 有機農産物の流通にも取り組んでいる鹿児島大学農学部の岩元泉教授は「食品の安全と消費者の安心には距離があるように思う。食品の安全性を確立し、それをきちんと伝えていくことが学者の役割」と述べた。
 このような記事が大手新聞にときどき載りますが、簡単には広まりません。
これまで「オトナの食育」で書いてきましたことは、残念ながらあまり注意を払われていないです。
 食品安全委員会が出来て7年くらいたつのにも関わらず、その存在自体があまり知られていないという問題はさておき、「食の安全」についての誤解がなかなか消えない、その原因をずっと考えてきました。「異質な考えと付き合おう」とする姿勢の欠如が原因の一つであろうと私は考えます。
 俗信自体はあまりお勧めできませんが、否定したくなるようなものにも、たまには付き合って、盲信するのではなく視野を広くしてより深く考えるきっかけにすること自体は推奨します。
 とはいえ、たとえば血液型による性格判断という、差別につながる迷信は排除するべきと思います。ただ、非常に昔からあるようなものは、その根底にある、いつの時代にも人が悩んで考えるような普遍的なことに行きつくこともあるので、注目しても良いのではないでしょうか?商魂たくましい「干支の小物を身近に(小物を買ってください)」といった表面だけなぞるのではなく、それを契機によく考えるなら、現代の私たちにも幸福を与えてくれそうです。
 なお、「異質な考えと付き合う」ことについて、別の例を挙げて先月書き、私が所属する「食のコミュニケーション円卓会議」のホームページの「会員のひとこと」コーナーに載っております。お時間がありましたら、そちらもご覧ください。
「心を開き、曇りなき眼で食の安全を考える」 
http://food-entaku.org/hitokoto/hitokoto13.htm

 「食の安全」について、日本のより多くの方が、より真実に近付いてきちんと考えられる年になるようにと祈ります。

引用文献等
ウィキベディア「向かい干支」2010年12月29日付
日本経済新聞2009年4月10日朝刊
 「消費者行政の目指すべき方向 『保護』より『教育』に軸足を」「小中段階から義務化 身を守る術 自ら備えよ」
朝日新聞2010年12月27日朝刊
 「農学 命を育む」「福岡会場 健康と安全」「日本型食生活」創造を

主な参考文献等
日本経済新聞2009年4月16日夕刊
 「生き方変える今が好機」「家族とゆっくり食事を」「幸せになれない社会 北山晴一さんに聞く」
日本経済新聞2009年11月27日朝刊
 「農産物高騰 国内に波及」「砂糖・食用油…原料コスト上昇 デフレで転嫁難しく」
朝日新聞2010年8月15日朝刊
 「夏の基礎講座 結婚 犯罪・警察担当記者が聞く」「王子様も脳内彼女も夢の中 望むのに動かない男女