オトナの食育 
所感編 第21回(通巻50回)2010/6/10号掲載 千葉悦子(高28)

照射食品について その6  ・ 通算50回を迎えて

 
 私が所属する私的勉強会の「食のコミュニケーション円卓会議」の有志で、
7月8〜9日、第47回アイソトープ・放射線研究発表会に今年も参加します。会場は
日本科学未来館(東京都江東区青海)です。
 私は「食品への照射効果の体験実験―リスクコミュニケーションを目指して―」と題したポスター発表をする予定です。また「放射線殺菌処理した香辛料と加熱殺菌処理した香辛料の味くらべ」と題して、会の代表者が口頭発表します。参加費が2000円(学生は無料)かかるので申し訳ないですが、ご興味のある方はどうぞいらしてください。
 詳細は次のアドレスでご覧ください。
 第47回アイソトープ・放射線研究発表会の案内
 ここからプログラムのPDFをダウンロードできます。
 http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,11326,103,212,html

 今年の新たな試みとして、「食のコミュニケーション円卓会議」主催で、
7月9日午後に公開講座
<市民のためのしゃべり場>―食べ物に放射線?「安全性」ってどうなの?
  何となく不安・・・食品照射ってなに?―

上記学会の会場で開催します。講演だけでなく、小グループで疑問に思う
ことを気軽に話し合い、答えるといったことも計画中。この公開講座だけ、
参加費は無料です。ただし、事前申し込みをメールでする必要があります。
 詳細は、上記アドレスからご覧ください。

「予防原則・何でも反対」ばかりでは現実に立ち向かえない
 日本では従来、消費者団体と言えば「予防原則」の美名のもと、食品添加物や農薬、照射食品とか遺伝子組み換えといった比較的新しい技術を否定しがちでした。正直なところ、私自身も以前は「予防原則」に共鳴していたものです。
 しかし、再教育講座や「食のコミュニケーション円卓会議」の学習会などで学ぶうちに、「予防原則」ばかり言っていられない現実もあるし、上記の技術は、安全性を高めコントロールしながら使っているので、目の敵にするものではないと分かりました。
 5月の「食のコミュニケーション円卓会議」の定例会では、
宮城大学・食産業学部教授、三石誠司氏に
「グローバルな視点から見た 世界の穀物需給と今後の展望」と題したお話を伺いました。なお、三石氏には「オトナの食育 資料編第12回、2008年8月号」に、新聞記事からの引用をさせていただきました。
 たとえば、飼料用トウモロコシの年間輸入数量だけで1,200万トン、これはパナマ運河を通る5万トンの船が、30日に20隻の割合で日本に向かう勘定になるそうです。万一、そのような見えないパイプが途切れてしまったら、直接日本人の口に入る分だけでなく家畜の飼料がなくて、日本は食の危機に陥るそうです。このところ、口蹄疫が大きな問題になっていますが、その大問題とは別の意味で極めて深刻な問題ということです。そして、その穀物の大半が実際は遺伝子組換え作物です。
 こう書くと、「遺伝子組み換え大豆は使っておりません」の表示のある食品をよく目にする方にとっては疑問かもしれません。しかし、輸入穀物の大半は飼料用であることや、しょうゆや油のように組み換えられたDNAやたんぱく質が残らない加工食品には表示の義務がないこともポイントです。また、肉を生産するには何倍もの穀物が必要であることは、よく知られていることでしょう。それで、普段の生活では気がつきにくいのです。
 好きか嫌いか以前に、遺伝子組換え作物は上記のように日本の食卓を根底から支えていて、いたずらに「遺伝子組換え作物が環境に与える影響は全て分かっているわけではない。だから予防原則を」と強調するのは現実的でない、というお話であったと私は受け止めました。また「単に反対するだけでなく、現実的な対案を出して議論をすべきではないか」ということでした。
 遺伝子組換え作物ほど大量ではないにしても、世界で流通している照射食品について、現実的に捉えることがまず大事と私は考えます。もちろん、だれにでも「食品に照射するの?それって大丈夫?なんだか気味が悪い。」といった感情があることでしょう。かつての私もそうでしたが、偏見を極力排除する姿勢で、よく知ることにより、感情も変ると体験しています。
 まずは知ること・学ぶことが大事とはいえ、そういう機会が少ないと感じていらっしゃる方、前記の公開講座などにお出かけください。

従来型ではない、市民団体・消費者団体
 新しい科学や現実をよく見据えた消費者団体が日本にもあると良いと、私は明確な言葉は持ち合わせてはいなくても、何となく考えていました。自分が高校生でした頃の、主婦連の白いかっぽう着とおしゃもじのスタイルは、あまりに若者の気持ちに合わないものでした。
 縁があり所属することになった「食のコミュニケーション円卓会議」は、
若い頃から待ち望んでいた理想に近い消費者団体というか市民団体です。
 どうぞHPをご覧になり、照射食品や遺伝子組換え食品など食についての情報や公開講座などをご利用ください。


通算50回を迎えて・・・母校に貢献する新しい方法の提案
 気がつきましたら50回を迎え、2005年10月から4年半余り、ただ夢中に過ごしてきたように存じます。
 この切りの良いときに、卒業生として母校の生徒に少しでも貢献できる、あまりお金のかからない方法を提案いたします。
 同窓生が自分の著書を韮高の図書室に寄贈し、「同窓生の図書コーナー」を作って、司書さんかどなたかに管理をお願いしてはいかがでしょう?できれば、図書名・寄贈者名・卒業回あるいは在籍年度などをファイルすると、生徒は「自分たちの先輩が書いたんだ!」と納得できることでしょう。
 お金の寄付ですと正直なところ、高校・大学・大学院といった学齢の子が複数いるときは、勘弁してほしい気分がすることでしょう。けれど、共著ですが、昨夏「とことん家庭科―明日につなげる授業実践」を出版でき、自分たちの卒業した大学同窓会に寄贈し、同窓会報のそういうコーナーに載り、同窓会館に置いて頂けると、晴れがましい気分でした。その上、同窓会館の図書コーナーには、その手の本がたくさん置いてあり、小規模な女子大学ではありますが、同窓生の地道な頑張りを感じられ、励まされます。
 お恥ずかしいですが、現在高校生である息子は、勉強する意義が分からなくて、ハラハラします。とりあえず、母の思いとは反対方向に進むのが良いと思っているような様子で、ヘタに母である私は話せません。かなり多くの家庭でありそうな光景ではあります。また、自分の担当してきた中高校生もそういうタイプが多いです。
 高校生で親の言うことを素直に聞く子は少ないでしょうが、先輩の言うことは聞くことでしょう。ずっと年齢が上の会ったこともない人の本は、なかなかピンとこないかもしれませんが、それでも、ないよりは生徒の目に触れる場所にあること自体、意味があると思います。
 「自分も何十年も経ったら、本を書くことになるかも。」と思えたら、しめたものです。勉強の動機づけになりませんか?
 おまけに、手にとって読んでみて、世の中にはおもしろい分野があると気付けるとしたら、形ばかりの進路指導よりずっと効果的と思います。
 私自身、高校生として進路指導室で「(女性の)卒業生はどんな職業についていますか?」と聞いたとき、まともな答えが返って来ず、失望しました。さらに大学生のとき、教育実習先を斡旋して頂こうと、韮高の職員室に参りましたら、直接教わってもいない年配の先生に「嫁に行け!」と言われ、ムカッとしましたが、頼む側なので、ぐっとこらえました。そして「今に見ていろ。女性も活躍する時代が来るのを!」とさらに思いを強くしたものです。
 6月4日開催の関東支部同窓会で、現PTA会長さんに上記の提案をいたしました。名刺交換し、上記のことをメールする予定です。
 少し手間が掛かりますが、「あったら良いな」と思うこの企画、皆様どうぞ賛同し、実行してください。ご協力よろしくお願いいたします。