オトナの食育 所感編 第2回(通巻31回)2008/11/10号掲載 千葉悦子(高28)


 マスコミに振り回されず、自分や家族にとって食に関して
大事なことを再考しましょう

 

      

1.小6の窒息死を悼む
 この1ヵ月間、次々に食の安全関連のニュースが報道されました。中でも私が一番驚きましたのは、小学校6年生の男子が給食の丸いパン半分を一気に食べようとして、窒息死したことです。高齢者や幼児に食物による窒息が多いのは存じておりましたが、そのような大きな子どもが、しかも、パンなどという窒息しにくそうな食品で亡くなるなどとは、考えてもいませんでした。
 なお、食物による窒息についての情報は、食品安全委員会のHPに載っています。どうぞご覧ください。
 息子が中学生の頃、区の小学生向けバスケット講習会へボランティアとして参加し、「近頃の小学生は人のいうことを聞かない」と申しました。
 心の中では「君だって母の言うことをあまり聞かない」と思いましたが、いちいちぶつかり合う元気もないので、言いませんでした。
 それにしても、幼児や小学生に対して「食事は落ち着いてゆっくりかんで」などと教えることは、本当に大事であると今回改めて思いました。そういうことはニュース性がなく、従来マスコミに取り上げられず、忘れがちかもしれませんが、「基本的なことを大事にする」そういう姿勢をいつの時代も守りたいものです。
 また、人の話を落ち着いてよく聞く、といった習慣も幼い内に身に付けさせたいものだとも思います。そうでないと、事故が次々起きてしまいそうだからです。
 今回のような事件があるたびに、優秀な学生が学校の教員を希望しなくなることが憂慮されますが、そうならないようにと祈ります。


2.バナナダイエット補足
 前回、ネットに載っていた「バナナダイエット」についてのあやふやな情報を書きまして、すみませんでした。
 10月25日、JST(科学技術振興機構)ホールで開催された「科学と社会シンポジウム、現代を見る目、めざす未来 〜食と健康のコミュニケーション」に参りました。パネルディスカッションの中で、松永和紀様(フリーライター、「メディア・バイアス」著者)がバナナダイエットについても説明なさいました。
 「高橋久仁子先生から伺ったのですが、白インゲン豆ダイエットの先生が6月のバナナダイエットで復活しているそうです。おそらく番組を作った人はそれに気が付いていなくて制作したのでしょう。勉強せずに番組作りをする現実があります。バナナに入っている糖質代謝酵素が効くという説明でしたが、「酵素」というのは消化され分解されてしまい、そのまま人の体の中で働くとは考えられません。ちょっと考えてみればわかること。」ということでした。
 なお、白インゲン豆事件について、「知っておきたい食べ物の話」p.36に次の説明があります。
  2006年5月、TBS系の「ぴーかんバディ」で紹介された白インゲン豆ダイエット
  を実際に行った多くの人が下痢などの症状を訴え、番組は打ち切りになりました。

 豆によってはしっかり加熱しないと毒が残ります。それなのに、少し炒っただけで食べて多くの人が下痢をしたそうで、中には救急車のお世話になる人も複数いたということです。
 それから、美容に良いといわれるコラーゲンにせよ、酵素にせよ、タンパク質の一種ですから、食べてもアミノ酸に分解され、そのままの形では吸収できません。ですから、自分が期待するコラーゲンや酵素に体内で再度合成されるかどうかは、保障ありません。
 とにかく、売らんかなの情報はいい加減なものも多く、テレビ番組は特に娯楽番組の場合、科学情報がきちんと吟味されないまま制作されるし、危険なことも平気で報道する場合がある、ということを心に留めておきましょう。


終わりに
 マスコミや宣伝などに振り回されず、現在のご自分や家族にとって、食に関して大事なことは何かお考えになり、より良い食生活をお送りください。


引用文献等
「知っておきたい食べ物の話」 田島眞・石井克枝監修 
     社団法人 日本化学工業協会発行 教育図書(2007)
おもな参考文献等
「食品学 食品成分と機能性 第2版」スタンダード栄養・食物シリーズ5
     久保田紀久枝・森光康二郎編 東京化学同人(2008)
「フードファディズム メディアに惑わされない食生活」高橋久仁子 中央法規 (2007)
食品安全委員会ホームページ: http://www.fsc.go.jp/   トップページ「重要なお知らせ」