オトナの食育 所感編 第15回(通巻44回)2009/12/10号掲載 千葉悦子(高28)

照射食品について その4

 
 師走に入り気ぜわしい時期に、難しげなテーマで恐縮です。前号で紹介しました12月4日開催、第45回日本食品照射研究協議会で「食のコミュニケーション円卓会議」の一員としてポスター発表を終え、ほっとしております。ポスターの題は「市民によるリスクコミュニケーションのための食品照射の体験実験」です。
 「食品に照射なんて、気味が悪い」と感じる方は、どうぞバックナンバーの2009年2月号<照射食品について その1>や6月号<その2>もお読みください。
 今秋、私も24年間組合員の生協では、食品照射に反対する署名運動をしました。ところが、WHOをはじめ世界で照射の安全性が確認されています。しかも世界では照射食品がいろいろ出回っています。

過剰に照射されることは考えにくい・何もかも照射されることはない
 食品照射を過剰に心配する側は「どれほどの線量で照射したかを知る検知法が確立されていない」と主張します。
 ところが、いろいろな食品を照射して頂き、試食したところ、過剰に照射すると見た目や風味や食感が悪くなるし、そもそも照射が合わない食品―たとえば牛乳―もあると分かりましたので、先の主張を心配する必要はないと体験的に分かりました。
 たとえば、玄米を2.5 kGyで室温照射して、それを精米し白米にすると、玄米の色に近い感じになりました。それを炊くと茶色っぽく、非照射の白米を使った普通のご飯と比べる必要がないほど、明確な見た目の違いがありました。また、粘りもずいぶん少なくなりました。
 きゅうりに4 kGy室温照射したものは、まるで煮えたような食感でした。プロセスチーズもスライスベーコンも、4 kGy室温照射したものはまずいと感じる人が多くなりました。
 私自身は試食出来ませんでしたが、仲間の結果としては、生うどんや豆腐の4 kGy室温照射したものも、まずいと感じる人が多かったです。
 食品の場合、外観が悪かったり、まずかったりすると、だれも食べようとしませんし売れません。ですから、おのずと照射量の上限があると考えられます。

高線量ではコストがかかる
 しかも、照射の費用はほぼ線量に比例するそうで、必要以上の照射は実用化されることはないです。ちなみに、じゃがいもの芽止めのための150 Gy以下の照射は1キロ当たり2〜3円ですから、2.5 kGyですと1キロ当たり30〜50円くらいということになります。

無駄な検査や廃棄はやめませんか?
 現在の日本の法律では、じゃがいも以外の食品に照射してあると、販売出来ません。そのため検疫所で検査を行いますが、そのための費用は税金です。また、うっかりじゃがいも以外の照射食品が紛れ込んでいることが分かると、回収して廃棄します。その費用は企業が支払いますが、結局は消費者が支払っていることになります。

時代・状況に合わせて法律の見直しを
 法律を守るべきとはいえ、科学技術が進歩していろいろなことが解明され、諸状況が変化したら、法律自体が古くなることが多々あります。税金の無駄使いをなくし、安全な食料を安定して確保するため、法律を改正することも必要です。そのためには、古くて偏った知識にとらわれた人たちに引きずられないで、一人一人がより正確な情報を得て、適切に判断し、必要におうじて声をあげて行かなくてはと思います。

食品照射についての基礎知識を得るために
 食品照射入門用の無料で頂けるパンフレットがあり、大変分かりやすく、お勧めします。「ガッテン!食品照射」(社)日本原子力産業協会 http://www.jaif.or.jp TEL 03-6812-7184または7102 FAX 03-6812-7100
「食のコミュニケーション円卓会議」のホームページを開設しました。
そこにも、分かりやすい食品照射についての説明がありますので、ぜひご覧ください。URL: http://food-entaku.org/
 説明不足でしょうが、今回はこれくらいにさせて頂きます。なるべく次回「その4」を書きたいと存じます。
 皆様どうぞ良いお年をお迎えください。

主な参考文献等
「放射線化学」No.88、日本放射線化学会(2009年9月)小林泰彦・菊地正博2009年9月号 
  展望・解説「食品照射:放射線による食品や農産物の殺菌・殺虫・芽止め技術」
「ガッテン!食品照射」放射線のことが分かる本・食品照射のことが分かる本
  (社)日本原子力産業協会(2009年10月)
「食品照射Q&Aハンドブック」社団法人 日本原子力産業協会(2007年3月)
「私たちは、なぜ放射線の話をするのか」木元教子・蒼海酉葵・東嶋和子 ワック株式会社(2008)