オトナの食育 所感編 第10回(通巻39回)2009/7/10号掲載 千葉悦子(高28)
照射食品について その3・
共著で出版した本のお知らせ
照射食品について その3 私が所属する「食のコミュニケーション円卓会議」のリスコミ班は、予定通り、今年7月1日、第46回アイソトープ・放射線研究発表会に参加しました。 「放射線照射した食品の品質に関する検討」「照射処理による野菜等の日持ち向上効果に関する検討」と題したポスター発表をしました。また、会の代表者が「市民が体験した食品照射の素朴な実験」を口頭発表しました。 日本で今後、じゃがいも以外の食品に照射が許可されたとしても、食べるものすべてが照射されるわけではない、ということが実験・観察などの実体験を通してよく分かり、安心して照射について見守れると思いました。というのは、いくつかの食品を照射して試食し、日持ち向上効果があるかどうか観察したところ、まずくなるものもあるし、たいして日持ちしないものが試した中では多かったからです。 私自身が試食して、もっともまずかったのは牛乳です。線量などの条件にもよるでしょうが、金輪際、口にしたくないと今回は思いました。 ベーコンは、本によると「獣臭」が感じられることもありますが、今回あまり感じませんでした。非照射のものと「違いはあるかな?」と集中して比べると、多少味が落ちましたが、1kGy程度で脱酸素剤が入っていると、十分食べられる味でした。 照射により菌数を何桁も減らすことができ、しかも、放射線は透過性があるので包装したまま照射できます。高級レストランなどではなく、ある程度安価な大量調理において、サラダに小さく切ったベーコンを入れるような使い方で、衛生面を確保することを重視する場合には、実用に向くのかもしれません。 ブロッロリー・しょうが・カット野菜には、それほど日持ち向上効果が出ませんでした。きゅうりには多少日持ち向上効果があるようでしたが、きゅうり好きの人には味が薄くなるので物足りないようでした。 なお、食のコミュニケーション円卓会議の会員で日本原子力研究開発機構の方によると、いちごには照射の日持ち向上効果が明確に見られるということです。いちごの産地である伊豆地方の人には、耳寄りな情報かもしれませんね。 いくら世界の専門家が「照射食品は安全」と言っても、自分の食べるものがなんでもかんでも照射されるのではないか?と想像すると、感情的になりました。が、それは杞憂であるとよく分かったのは収穫でした。また、すごく過剰に照射すると、味が悪くなったり、細胞組織が破壊されて劣化したりするので、そういうものが市場に出回ることもないと分かり、だいぶ安心できました。このような安心感を持って、今後、冷静に食品照射などの技術について考えていきたいと思います。 ポスター発表や懇親会の楽しさ 余談ですが、学会でのポスター発表と懇親会で、興味の共通する方々と出会い、お話しできる楽しさを経験できました。一生出会うことのなかったであろう素敵な方と話せるのは、衣食が足りたら人間が欲する共通のことではないでしょうか? 共著で出版した本のお知らせ 私が16年余り所属してきた「家庭科の授業を創る会」のメンバーで、「とことん家庭科 明日につなげる授業実践」を教育図書から出版しました。家庭科の実践集です。私の担当は、いまどきの「食の安全」について考える―リスクを等身大にとらえ、主体的な消費者を目指しましょう―です。 私は幼い頃、「大人になったら本を書く人になれると良いかな?」とぼんやり考えることがありました。今のようにパソコンやゲーム機がない時代、本を書く人はきっと偉いのだろうと思っていました。今時の子どもが、「ゲームを作る人になりたい」と思うのと、大して変わらないかもしれません。 到底読み切れないほど、たくさんの出版物が出る現在、「出版、それがどうしたの?」としか思えないかもしれませんね。それでも、自分としては冥土の土産といいますか、正直なところ、うれしく思います。 他のメンバーの担当部分も読みごたえがあると思います。単なる実践集ではなく、勉強会での実践報告後その場で話し合い、その上、メールでも意見交換し、家庭科のそれぞれの分野―たとえば保育なら保育分野で教えるべきことは何か、どういう工夫が必要かなど、根本から問い直して考えてきました。 宣伝のようで申し訳ないですが、家庭科の先生方をはじめ、多くの皆様にお読みいただけると幸いです。 ■主な参考文献 「食品照射Q&Aハンドブック」監修・発行:社団法人 日本原子力産業協会(2007年3月) |