オトナの食育 
所感編 第62回(通巻96回)2014/4/10号掲載 千葉悦子(高28)

和食の良さを次世代に、生活の中でつないで行きましょう
その1


       筍飯
 この季節、とれたての筍を下茹でし、
料理をすると、格別においしい。
それこそ、季節限定、かつ、
日本でしか味わえないおいしさの一つです。
その味も、次世代に伝えていきたいです。  



 201312月「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。そこで「オトナの食育」でも、和食について何か書きたかったのですが、次々起きた食の安全を脅かす問題を優先しました。そうこうしているうちに、和食についてテレビや新聞で大きく取り上げられ、私が書くべきことは何か?と再考しました。和食やユネスコ無形文化遺産登録については、農水省のホームページに詳しい解説がありますので、同じことでは意味がないです。

 編集者のFさんから、和食について書くようにとメールを受け、今回の遺産登録に関して一番の功労者と言えそうな熊倉功夫(静岡文化芸術大学学長)氏のお話を、3月に拝聴しました。東京ガス主催のユネスコ無形文化遺産登録記念シンポジウムでの講演でした。

 私なりに総合して考えると、一般の日本人として重要なのは、和食の良さを次世代につなげていくことと思います。もちろん、日本料理店を海外で展開し、本物の和食を目当てに来る外国人旅行者を増やすとか、日本の農産物や魚介類を外国に売り込んだりするのも、日本人としてはうれしいですが、それらは、主に一部の人がすることでしょう。熊倉氏のお話によると「ユネスコ登録が通るからには、日本人全体が『良かった』と思えるようなもの」と考えたそうです。日本のごく一部の地域の特定のもの―たとえばフグの卵巣を3年漬け込んだもの―なら、登録されるのは間違いないけれど、それではあまり意味がないと考えたそうです。「和食」と広く提案したのは、国内における和食の危機的状況を何とかし、自分たちの足元を見つめ、日本の家族や地域をつなぎ合わせるよう、国に責任を持たせるような方向を考えたからということでした。

 農水省ホームページの「日本食文化テキスト」の熊倉氏の文章では、和食を次世代につなげるためには、家庭だけに任せるのは無理なので、「食育」を大事にということでした。そのこと自体は共感できますが、どうか学校教育の中の「家庭科」も大事にして頂きたいと願います。食育は教科でなく、各学校によるバラつきが大きく、教科である家庭科ほど浸透させることが難しいです。また、食だけに限定しないで、生活全体から食を考える視点を、家庭科はもともと持っています。

 なお、先月号にも書きましたように、和食にも「塩分過多になりがち」といった欠点もあるので、今月号のタイトルに「和食の良さ」とあえて長く書きました。

 和食は膨大な内容を含むので、短く書くのは難しいです。近いうちに「その2」を書きたいと存じます。

 

■主な参考文献等
畑江敬子・香西みどり編「スタンダード栄養・食物シリーズ6 調理学」東京化学同人(2003
農林水産省ホームページ 日本食文化テキスト
http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/index.html
リビング暮らしナビホームページ 東京ガス主催「育み受け継ぐ 和食の未来」ユネスコ無形文化遺産登録記念シンポジウムについての概要
http://mrs.living.jp/sp/0326_cooking/report.html