オトナの食育
誰も儲からない 知ってて得する食の情報
第1回 2005/10/10号掲載    千葉悦子(高28)
健康を維持・増進する食生活とは?ーバランスの良い食生活その1-肥満

前書き・ご挨拶
 韮高同窓会の皆様、これから隔月6回予定の“大人の食育”を担当いたします28回生、千葉悦子(旧姓林)です。お引き受けするにあたり、同窓生に優秀な方が大勢いらっしゃるので、おこがましいと思いました。が、メルマガ予告に載せて頂きましたように、韮高卒業20周年同期会で太目の男性が多いことから、学生時代の東畑朝子先生の「男性は太ると生活習慣病に直結、女性は少しくらいふっくらでも、それにはつながらない。」といったお話を思い出し、「家庭科を通して、私に何かできるかも」と感じました事を再度思い起こしました。

 メルマガ編集委員さんから「内容はお任せ」と伝えられ、どんな内容にするか悩みました。東京駅丸の内のオアゾにある丸善や八重洲ブックセンターなどには、家庭料理だけで1000冊以上も料理本があり、新聞・雑誌に多種多様な料理が載り、ネットにもあり、情報過多の感があります。料理研究家ではなく、家庭科の教員である私がボランティアとして書くなら、既存のhow to的な料理をはじめ、「売らんかな」の情報と同じであっては意味がないでしょう。

当初、多少硬い「大人向けの基礎から学ぶ食育」的なものを考えましたが、編集委員のお1人とメール交換しているうちに、理論だけなら農学部とかの出身者にお願いする方がよく、具体的な料理と結びつかなければ、実生活に役立たないと思い直し、理論と料理の両方といたします。したがって長くなりますので、料理を作る必要がない方は、そこを読み飛ばし、料理だけ知りたい方はそれだけお使いください。

料理は、慣れない人が数字を使って理解でき、かつ、応用がきくように、大学の調理学のようなやり方を取り入れました。同窓生は、数字に抵抗がないでしょうし、料理に慣れない人も多いと考えたからです。

健康を維持・増進する食生活とは?            
   -バランスの良い食生活その1-肥満
 

 最近、「健康のためなら死んでもよい」というような、妙な風潮があると思いませんか?見た目を重視し、本質的な体のしくみを考えずに、安易にやせ薬としての下剤やサプリメント等に頼り、「マスコミに登場する美」や「健康っぽさ」やそれらに対する「安心感」を得ようとするような・・・

 中学生に対する家庭科食分野の授業の冒頭は、教科書に載っている「健康を支える3本の柱―食事・運動・休養」の話です。食事だけ良くても、適度な運動や休養―もちろん睡眠も含みます―も確保しなくては、健康になれません。が、運動・休養については学校の科目の中において保健体育が専門でしょうから、私の話は、食事に注目したものとなります。

では、食生活で一番大切なことは何でしょう?韮高18回生の実兄に「一言で表せないのか?!」と問われ、答えに窮したことがあります。あまりに多くの要素があり、家庭科の「か」でもない人に、どう説明したものか困りました。無理やり「一言で」となると、「バランスのよい食生活」となるでしょう。その柱が、男性は肥満しないこと、女性はやせ過ぎないこと、エネルギーに占める脂質を適正にすること、塩分控えめにすることで、それには欠食をなくし、野菜たっぷりで魚を取り入れた和食を大事にすることが一番でしょう。

 ところで肥満の定義は“体脂肪組織が過剰に蓄積した状態”です。たとえばマンガ「こちら亀有派出所」の主人公はがっちりしていて、体重は多そうですが、筋肉の固まりのようなタイプですから、肥満とは言えないと思います。皆様はどうお考えでしょう?

 生きている人間の脂肪を正確かつ簡単に量ることはできないので、体格指数の一つであるBMIBody Mass Index)を用います。BMIは体重(㎏)を身長(m)の2乗で割って算出します。人種によって違いますが、日本人の場合、BMI18.5以上25未満を普通、25以上を肥満と判定します。
BMIが男性22.2、女性21.9のとき最も病気が少なかったので、BMI22を適正体重あるいは標準体重とよんでいるそうです。

 BMIは便宜的に使うものであり、細く見えてBMIが低目でも、内臓脂肪が多ければ問題でしょう。「スタンダード栄養・食物シリーズ13 臨床栄養学各論」p.12に「健康障害の発生がBMIで表される肥満の程度より内臓脂肪型と皮下脂肪型という脂肪の分布の違いの方がより影響していることがわかってきた。内臓脂肪型肥満に高血圧、糖尿病、高脂血症などが起こりやすい理由として、内臓脂肪組織の脂肪細胞は単にエネルギーを蓄えるだけでなく、細胞自体が血糖、血圧、脂質などを上昇させる生理活性物質を産生、分泌しているためと考えられている。」とあります。

 肥満を予防するには、具体的にどのような食生活を送ればよいのでしょう? 3食きちんと摂り、間食はとるなら昼間で、多過ぎないようにし、夜遅くには酒類を含め飲食しないようにし、早食いを避けることを実行しましょう。これらはたんなる徳目ではなく、科学的に証明されています。

 食品の種類と量については、多くの理論を理解するには時間がかかるので、中学・高校の家庭科の教科書に載っている食品群別摂取量の目安を参考にされるとよいでしょう。きちんと献立を立てたい場合は、女子栄養大学関係が出している、1点を80kcalとする方法が載っている本がお薦めです。

 農林水産省のホームページから、食事バランスガイド(厚労省・農水省決定)をご覧になるのもよいでしょう。

 本など読みたくない方は、野菜たっぷり、海藻・豆・いもなども多い、魚も取り入れた和食を基本としてください。果物も極度に多過ぎない程度に召し上がってください。なお、このような料理の実例を、毎回載せてゆきますので、ご期待ください。


 
今回のお薦めの 秋の料理   
“きのこ入り炊き込み飯”


お薦めの理由

・季節の食材であるきのこを使う・・・
  季節の食材を使うのが料理の基本の一つです。
 旬の食材は、おいしくて栄養が豊富で安価、ビニールハウス・暖房等
 要らず、省エネです。
  また、「地産地消」といった生産地から近い食材を使うのも、地球に
 優しいです。伊豆の椎茸はおいしいですね。
 他にもおいしい産地はあるでしょうが・・・。

・この時期出まわる新米はおいしい。

・ ご飯は満腹感が得られる割に太らない・・・某女子高の2年生に洋食も
 和食も教えていたとき、この感想が多かったです。調理実習ごとに栄養価
 計算をさせる学校でした。

 きのこのエネルギーは大変少なく、カルシウム以外の無機質、カロテン・
ビタミンE以外のビタミン、食物繊維が豊富。
日光に当たるとビタミンDに変わるエルゴステロールも含み、骨を丈夫にし、
骨粗しょう症予防にもつながります。


注意点
毒きのこの食中毒を起こさないように、きのこ狩りで素人判断
 をしない。

きのこは繊維が多く消化が悪いので、食べ過ぎない。
 特に幼い子どもや、病弱な家族には気をつけて差し上げましょう。
・献立としては、他の野菜の副菜やたんぱく質を多く含む主菜等
 もお忘れなく。

“きのこ入り炊き込み飯”の作り方

炊き込み飯の基本

水の分量は白飯と同様、米の重量の1.5倍、あるいは体積の1.2倍
 を
基本にし、液体調味料(酒・しょうゆ)を差し引く。
 特に材料から水分がたくさん出る牡蠣・大根の葉といった具のと
 きはこれを忘れず、固めのご飯が好きな場合は、さらに減らす。


塩味のつけ方について従来は炊き水と具の重量の1%ですが、
 薄味が健康に良いとなると、炊き水の1%と私は思います。
 塩分を全部食塩にすると、「ピースご飯」のような白いご飯で塩
 味のものとなり、しょうゆも入れると「さくら飯」となります。
 あまり濃い色にしたくないときは、塩としょうゆの割合を
 1:1にします。濃い色のしょうゆの場合は、このくらいがちょう
 ど良いでしょう。
 少し色が濃くてもかまわないから濃厚な味にしたい場合は、
 1:2とか、1:3にしてください。


具の量は米の重量の30~50%が基本ですが、きのこだけで50%は
 多い感じがするでしょう。他の食材と組み合わせて五目御飯に
 すれば、50%でも良いでしょう。
 反対に20%しかなくても、家族で食べる分には、問題ないです。
 それだけのために買い物に行く時間や労力をかける必要があるか
 どうかも考え、家庭料理は家にある材料を無駄なく使うことも
 大事です。
 きのこが少ないとき・他のおかずをあまり用意できないときは、
 にんじん・ごぼう・油揚げ・鶏肉(しょうゆで下味をつける)等
 も入れるとよいでしょう。


具体例
基本材料
★およそ茶碗8膳分
 (大人およそ4人分、我が家の場合、中1男子と夫婦の計3人分)
 ◎1膳約180kcal

 米 2.5カップ 
    1カップ(200ml)は約160gと考え、160g×2.5=400g

 水 400g×1.5=600g 600mlから液体調味料を引く
 具(きのこ等)として、米の30% 400g×0.3=120g

調味の方法
◎従来法・一口目から「おいしい」と言われたい場合 
 塩分(600g+120g)×0.01=7.2g 
 塩分7.2gを塩としょうゆで約1:1に分けるとして、

   食塩3.6g(小さじ3/4弱)
  しょうゆは塩分3.6gを5倍して18ml (大さじ1と小さじ1/2強)
   酒 炊き水の5%程度 600×0.05=30ml(大さじ2)

◎薄味ですが、慣れると大丈夫な味付けの方法
 塩分 600g×0.01=6g 
 塩としょうゆを塩分について約1:1に分けるとして、
   食塩3g(小さじ3/5)、
  しょうゆは塩分3gを5倍して15ml(大さじ1)
  酒 炊き水の5%程度 600×0.05=30ml(大さじ2)

作り方
米を研ぐ。
 最近はよく精米された米がほとんどなので、洗うといった感じ
 でよい。
 また、無洗米の場合は1回洗えば十分。
 自動炊飯器を用いる場合、内釜の特殊加工を大事にするために、
 その中で洗わず、ボールの中で洗米してください。

米に 従来法なら600-18-30=552ml、
    薄味の方なら、600-15-30=555ml
 の水を加え、最低30分、なるべく1時間浸けておく。
 自動炊飯器なら、3カップの線より少なめに入れておく。
 このとき、調味料は入れず加熱直前に加えるのが要点。初めか
 ら入れると米の吸水が悪くなり、ふっくらしたご飯にならない。

調味料を入れ、米を壊さないように混ぜる。
 きのこなど具は米の上に置き、混ぜ込まない。
 ただし、グリーンピースや牡蠣の場合は、加熱し過ぎを防ぐため、
 沸騰したら入れる。


米を炊く。
 自動炊飯器なら白飯と同じスイッチでかまわない。
 鍋で炊くときは、調味料により焦げやすいので注意する。
 沸騰を見逃しやすいので、沸騰する頃になったら、特に注意。


炊き上がり
 蒸らし終わったら、すぐにふたを開け、余分な水分を逃がす。


盛り付け、好みでもみ海苔とかを散らす。

■引用文献
スタンダード栄養・食物シリーズ13 臨床栄養学各論」
  小松龍史・近藤和雄・脊山洋右・森田寛編 東京化学同人(2005)

参考文献等
カラーグラフ食品成分表5訂」
実教出版 
「調理と理論」山崎清子・島田キミエ共著 同文書院(1975)

新しい技術・家庭 家庭 分野
中学の現行教科書)東京書籍 
2005年版食料白書食生活の現状と食育の推進」食の選択能力向上への取り組み 
     編集・発行 食料・農業政策研究センター(2005)
スタンダード栄養・食物シリーズ5 食品学」 
久保田紀久枝・森光康次郎編 東京化学同人(2003)
スタンダード栄養・食物シリーズ10 応用栄養学」
   
近藤和雄・鈴木恵美子・脊山洋右・藤原葉子編 東京化学同人(2005
「新・病気とからだの読本 第2巻」
暮らしの手帖社(2001