オトナの食育 基礎編 第6回 
2008/3/10号掲載    千葉悦子(高28)


 野菜を食べるために No.6 「恩師の調理実習の思い出から」
−ポークピカタとその付け合せなど−
 

 


 春なので、明るい話がよいのでしょうが、家庭科教育の恩師、
武藤八恵子先生を亡くしたばかりで、私の心を切り替えることはとてもできません。
そこで、先生が教えていらしたポークピカタの話などを書きたいと思います。
 私がまだ大学生で、教育実習の前、教職の免許を取得するために
先生が女子高校生に行う調理実習の授業を見せて頂きました。本来、教え方をよく見なくてはいけないのでしょうが、題材であるポークピカタそのものが私にとっては新しかったです。ピカタという料理は、今では珍しくないでしょうが、私の母は、とんかつ・焼肉・肉じゃがは作りましたが、ピカタは作ったことがなかったからです。
 ピカタは、「肉の薄切りに小麦粉と溶き卵の衣を着せて、ソテーしたイタリア料理」と「日本語から引く「食」ことば英語辞典」にあります。
「改定調理用語辞典」では、「薄切り肉に塩、こしょうし、小麦粉、パルメザンチーズを入れた溶き卵の順につけてバターでソテーする。」とあります。
 私のイメージとしては、必ずしもチーズを入れるとは限らず、食材は肉でなくて「いか」とかでもOKです。
 学生時代、実家に帰ってこの料理を作り、おいしくて、しかも揚げ物ほど手間がかからず、感動しました。今でも時々家庭で作り、その都度、説明しながら手際よく生徒の前で示範された先生のことを思い出します。
 韮高時代、家庭科の石和千鶴子先生(ご健在です)も、慣れた手つきで親子どんぶりの示範をなさり、憧れたものです。調理技術だけでなく、洗剤の生分解性が高まった話とか、味の画一性の話とかをされ、科学や文化と生活とが密接にかかわっていることを知ることができ、私の進路決定の決め手となりました。
 そして、大学生のとき教わりました武藤先生に、新米教師として困っていたとき、助けて頂きました。育児によるブランクの後、私的勉強会に誘って頂き、今日の私があります。
 とにかく、たかが料理、されど料理だと思います。物理的に離れていても、亡くなられても、その料理を教えてくださった方のことを、料理を作る度に思い出すのですから。そして、それを食べて育った子どもたちは、「そんな料理、食べたな」と大人になって思い出すことでしょう。


豚肉のピカタとその付け合せや、献立について 

肉の厚さや部位について
 資料編第9回に紹介しました「ミニマム エッシェンシャル クッキングカード」に、この料理に使う豚肉は「しょうが焼き用」とあります。
私の入っている生協のしょうが焼き用は、厚さ3.5ミリとチラシにあります。軟らかい部位であるロースで作る際は、私は7ミリと注文します。少し歯ごたえがあってもかまわなければ、赤身でも7ミリで大丈夫です。
軟らかいのがお好きなら、赤身の場合5ミリと頼んでみてください。
脂の摂り過ぎがご心配の場合、赤身をお勧めします。薄いより、ある程度厚さがある方が、肉の味が楽しめます。
 スーパーでは厚さを指定するのは難しいでしょうが、専門店なら引き受けてくださるでしょう。こだわって作りたいときは、肉屋さんをお勧めします。

付け合せについて
 「ミニマム エッシェンシャル クッキングカード」では、粉ふきいも(100g)、いんげんのソテー、にんじんをゆでてソテーにしたもの(各50グラム)です。白・緑・赤と彩りが良いですが、今の季節はいんげんのかわりにゆでたブロッコリーや、青菜のソテーがよいと思います。また、ソテーでは油が多いと思えば、キャベツの千切りやレタスでもよいでしょう。日常食なら、油の摂り過ぎにならないよう洋風献立にこだわらず、ご飯と味噌汁、青菜のお浸し(緑黄色野菜がとれるように)と、豚肉ピカタ・粉ふきいも・キャベツの千切りといった献立でもかまわないと思います。
 なお、上記のカードでは、「お勧めメニュー+野菜スープ+ごはん」となっていて、野菜たっぷりの献立となっています。

応用
 上記カードに「豚肉のかわりにハムやカジキマグロ」とあります。
 また、このカ−ドでは卵液に粉チーズを少し加えて、風味を付けています。お好みで、刻みパセリとかを加えて変化をつけることもできるでしょう。
 

第6回の終わりに
 「『なんだか損』と思っても、正しいと思ったなら、行いなさい。
もしも、自分が間違っていたと分かったら、それを認め、また新たに進めばよいでしょう。」と武藤先生がお話された、というのが弔辞にありました。
「オトナの食育」のバックナンバーを読むと、冗漫に気付き、ぎょっとしますが、より良くなるよう気をつけながら続けたいと思います。

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引用文献等
「ミニマム エッシェンシャル クッキングカード」監修:畑江敬子
 開発・調理:田中京子(お茶大附属高教諭)、協力:流田直・栗原恵美子  地域教育社 
「日本語から引く「食」ことば英語辞典」服部幸應監修 永井一彦・鈴木喜久恵執筆 小学館(2004)
「改定調理用語辞典」社団法人全国調理師養成施設協会編(1998)
おもな参考文献等
「オールフォト食材図鑑」荒川信彦・唯是康彦監修 社団法人全国調理師養成施設協会編(1996)