オトナの食育 基礎編 第5回 
2008/2/10号掲載    千葉悦子(高28)


 野菜を食べるために No.5「餃子や焼売等を手作りしましょう」

 

 



  食の安全どころか、社会における相互の信頼を根底から揺さぶる事件が起きてしまいました。この原稿を書き終わって配信されるまで、何日かかかり、その間に事件の解明が進み、お門違いな見解になるかもしれませんこと、お許しください。
 日本の食料自給率が下がり続けているという、大問題を長年放置してきたことに帰着すると思います。ことの本質を避けて、当面大事でしょうが「中国をはじめとする日本への食料輸出国側の安全管理の徹底・輸入品の品質検査の徹底」だけに、耳目が集まるのは心配です。
 もちろん「冷凍食品買うな。作れよ。」と夫が妻に言い渡すなど、最低です。
「休みの日には、一緒に作ろう。」といった会話にしたいものです。このように書くと冷笑されるかもしれませんが、20年ほど前、私の住まいの近くで、連続幼児誘拐殺人事件が起きましたとき、近所のご主人が奥様に
「子どもから目を離すな」と言ったそうです。幼い子どものお母さんたちは、私も含め、下女のように子どもを見守ったものです。事件が起きるたびに、しわ寄せが来るのは、女・こども、弱者です。
 私が参加している食の安全関連の私的勉強会のメンバーが、ブログで
「社会に対するテロ」と書いていらっしゃいまして、私も同感です。
 感情に流されるのは社会に悪影響を及ぼすとはいえ、原因究明が進まない限り、冷凍食品をはじめとする調理済み食品を食べたくない気分でしょう。まして、幼いこどもを抱える人は、できる限り手作りで安全な食事を当面送りたいことでしょう。
 そこで、今回は、手作り餃子・焼売などについて書くことにします。手作りすれば、肉や野菜をどれだけ摂取できたかよく分かりますし、味も好みや体調に合わせることができます。

餃子の作り方・・・野菜を入れて、野菜不足をカバーしましょう

1.皮について
 皮は、市販品を使って労力を省くことも必要でしょう。食品添加物を気にし過ぎる必要はないと思います。一生食べ続けても害がない量をもとに、
食品ごとに十分少ない摂取量になるよう基準を作り、現実にはさらにずっと少ない使用量となっているからです。
 私自身、以前は量についてよく分からなかったですし、幼い子もいましたので、生協の無添加の皮を使っておりました。その皮は切れやすく、また、残った皮がすぐ悪くなるので、そういう面も考え合わせてお選びください。

2.具について
 豚ひき肉と野菜は同量より、もう少し野菜を多くしてよいです。肉:白菜が2:2で、その上に、ニラやねぎなどを0.5〜1くらいの割合です。後は4人分でしょうが1かけ(大人の親指の第1関節の大きさくらい「料理の基礎の基礎コツのコツ」p.226)と、塩・しょうゆ・酒・ごま油・こしょうです。
 幼い子がいる場合は、ニラやねぎは控えめ、あるいは入れなくてもOKですし、たまねぎに代替可能です。ごま油がなくてもそれなりにおいしくできます。白菜をキャベツに替えられますし、どちらもないレシピもあります。他に、しいたけやたけのこを入れる場合もあります。「この材料がなくては」と気負わず、作ってください。
 塩分は肉と野菜の合計の1%程度を目安にされるとよいでしょう。仕上がってから、しょうゆをつけることにより調節がききますので、気楽になさってください。最初作るときは控えめに味付けし、それによって次回の味付けを決めていただきたいです。なお、塩は小さじ(5cc)5g、しょうゆは小さじ1gと塩分計算されると、比較的簡単でしょう。
 白菜は、ゆでてみじん切りにし、水気をよく絞ります。白菜に含まれる微量栄養素豊富な水分がもったいないと思われるなら、みそ汁とかスープに入れてはいかがでしょう?白菜やキャベツはあくが少ないので、鍋とふたがピッタリするものなら、なべ底から1センチ程度の水を沸かし、蒸しゆでにすると省エネで、二酸化炭素減量に協力できます。また、電子レンジ加熱でもよいでしょう。
 ニラ・ねぎ等はみじん切り、しょうがはごく細かなみじん切りです。
 材料を全部ボールに入れ、粘りが出るまでよく混ぜます
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ある日の千葉のレシピ 普通サイズ48個分(冷蔵庫に白菜が少ししか残っていなかったので、キャベツを足したという、偶然のものです。こどもと作ったので、具を多く詰められません。慣れた主婦ならより多く具を入れられるでしょう。)

  豚肩ロースひき肉   250g
  白菜           100g
  キャベツ        150g
  ニラ            50g
  長ネギ          50g
  しょうが          1かけ
  塩            小さじ3/5
  しょうゆ         大さじ1
  酒            小さじ1
  ごま油          小さじ1
  こしょう         少々

3.皮に具を置き、片側にひだを寄せながら包みます。
 この作業はこどもに手伝わせると楽しいし、手も器用になりそうで、教育効果があると思います。最初から上手にひだをとりながら包むのは難しいでしょう。形についてこまごま言わず、「そういう形もあり」と気楽になさってはいかがでしょう?こどもは自分が作った形はちゃんと覚えていて、責任もって食べるものです。しかも、けっこう満足そうに。

4.加熱
 蒸す・炒め蒸し・ゆでるなどの方法があります。ゆでる場合は、口が開かないように、あまりひだをつけずにしっかりと包みます。こどもといっしょ作るときは、そこまで要求するのは難しいので、お薦めしません。
 炒めてうっすら焦げ目がつくと、よりおいしいでしょうから、一般的には炒めて蒸すのをお薦めします。ただし、少しでも油を減らしたい方は、蒸す方が良いでしょう。
 ひき肉料理はしっかり加熱することが、食中毒予防という意味で、大変重要です。慣れないうちは、一つ餃子を切って中をお確かめください。市販の皮は、普通サイズと大判とがあるでしょう。早く中まで加熱したい場合は、普通サイズをお薦めします。レシピに特に指示がない場合は、普通サイズでしょう。
 いっぺんにたくさん加熱したいときは、ホットプレートがお薦めです。
これがあると、ホットケーキ・お好み焼き・焼きそば・焼肉等、安価に楽しめます。しかも温度調節がきくので、桜餅の皮とかも失敗なくできます。

5.食べ方
 しょうゆ・酢・ラー油・練りからし等で召し上がってください。少し余ったら、乾燥しないようにラップをかけ、あるいは、シール容器に入れて冷蔵庫で保管し、電子レンジで温めると簡単です。


焼売(シューマイ)について・・・豚肩ロースのひき肉がお薦め・
                    中華蒸籠のお薦め

 肉に対する野菜の割合が、7割から5割くらいと、餃子に比べて少ないですが、餃子より成型が簡単と思いますし、デパ地下などの高級品はおいしいとはいえ、すごく高価なので、手作りする価値があると思います。
 『5000年の知恵が生んだ 楽しい中国点心』に「ひき肉は、肩ロースを包丁で細かくたたいて使うと、粘りが強くて歯ごたえが出る。ひき肉を買う場合も肩ロースを指定するとよい」とあります。記述通り、近所にある、肉のおいしい肉屋で肩ロースをひいてもらってこしらえたら、美味でビックリしました。脂肪の取り過ぎを気にして、豚赤身ひき肉といった脂の少ないひき肉を使い、ごま油も入れないと、物足りない味になりがちです。
 おいしいものを食べ過ぎないという自制心も必要と思います。
 なお、水分が多いと、味には問題ありませんが、蒸し上がったとき、平べったくなりますので、気をつけましょう。
 一度にたくさん蒸したい場合は、中華蒸籠をお薦めします。購入する時は高価ですが、手作り焼売には欠かせませんし、冷凍の肉まん・あんまんも、電子レンジと違い皮が非常にふっくら仕上がります。私はこのセイロを20年以上愛用し、先日3000円ほどで直してもらいました。今後さらに何十年も使用できそうです。
 大皿に魚を置いて蒸すような料理もしやすいですし、金物の蒸し器と違い、布巾をかける必要もなく、重宝しています。

餃子・焼売だけではワンパターンと思われる方へ・・・珍珠丸子のお薦め
 珍珠丸子(チュンチューワンツ)(肉団子のもち米蒸し)は、焼売の具のように肉団子を作り、1時間以上浸しておいたもち米をまぶしつけ、蒸す料理です。豚ひき肉にしいたけやねぎのみじん切り、つなぎとして、溶き卵を肉の10%、あるいは片栗粉を入れるのが一般的のようです。団子状にまとまりやすいように、野菜は少なめにし、塩・しょうゆ等を入れてよくこねることが要点です。
 周りにもち米がつき、蒸し上がるともち米がさらにふくらむので、肉団子は小ぶりに作ってください。盛り付ける時、皿の上にレタスを敷き、その上に珍珠丸子を飾ると、きれいで、野菜もその分摂れます。
 もち米を浸しておく時、ごくごく少量の食紅を溶かしておくと、ピンク色の仕上がりになり、お祝い事に向きます。
 

第5回の終わりに
 今年1月26日に高橋久仁子群馬大学教授のお話を伺う機会を持ちました。
趣味の料理と、義務で作る料理を混同してはいけない。
 日常は素材型簡便料理を
」ということで、私も頷きました。高橋先生が「フードファディズム」でお書きになられていますが、素材型簡便料理というのは
「食材料は何かが簡単にわかる料理、すなわち、食材の素顔が十分に残る単純な調理操作を加えた料理」で、先生が命名されたそうです。たとえば魚の塩焼き、煮付け、肉のソテーや炒めもの、野菜のお浸しなどです。
 今回の餃子や焼売はどちらかというと、「複合型煩雑料理」に属し、その中では最も簡単なタイプと思います。「私たち商業科だからね。(頭悪いんだ)」と悲しそうに話した、昨年度教えた女子高校生が、餃子を実習したら
「切って、混ぜて、包んでジューと焼くだけ、何だ簡単」といったことを書いていました。
習い事や塾がない日にこどもに手伝わせながら、あるいは休日に家族で
楽しみながら作ることができると、無理なくできそうです。
 先日、中3の息子が第1志望校に受かり、久しぶりにいっしょに手作りピザや恵方巻をこしらえました。幼い頃、手作りの楽しさやおいしさを体験しておいたせいか、難しい年齢でずっと料理していなくても、自発的に思いつき、買い物も自分でしました。外で運動することができない雪の日で、本人はお祝い気分ですが、周囲はまだこれから受験というとき、家の中で楽しく過ごす方法を持っているのは、幸せだと思います。
 もちろん、絵本「ひとまねこざる」のように、台所で次々トラブルを起こしますが、親はそれに耐えないと、こどもが育たないでしょう。校訓「忍」は、こういうときも役立ちます。


 話は変わりますが、『全国高等学校家庭クラブ連盟機関誌 第56巻第1号2007年12・2008年1月号』 FHJゼミナールに、残留農薬についての私の文章が載りました。PDFファイルで読めます。ただし、版権が全国高等学校家庭クラブ連盟にありますので、何かにお使いになられる場合は、全国高等学校家庭クラブ連盟にお問い合わせください。
        FHJ.pdf へのリンク

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
全国高等学校家庭クラブ連盟(以下全国連盟)は、高等学校で家庭科を履修する生徒が、家庭科で学習した知識・技術を活かし、家庭や、学校・地域の生活の充実向上に役立てる実践活動をしている学校ごとに組織された、○○高等学校家庭クラブを全国的に集約し、各学校、各都道府県連盟、各ブロック連盟の活動を支援している。また、全国連盟は研究発表大会や指導者養成講座を開催し、料理など4種のコンクールを主催し、機関誌「FHJ」を発行している。あくまでも家庭科の学習の一環であり、一般的な運動部、文化部とは異なる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 


引用文献等
「フードファディズム」メディアに惑わされない食生活 高橋久仁子 中央法規出版 (2007)
「料理の基礎の基礎コツのコツ」だいわ文庫Y571 小林カツ代 大和書房(2006)
5000年の知恵が生んだ楽しい中国点心』1982年『栄養と料理』10月号付録
ブログ「ちょいワク食ノート」「農薬ギョーザの犯人探し」
 http://blogs.yahoo.co.jp/teckno555/31703179.html
  
おもな参考文献等
新版 調理と理論」山崎清子・島田キミエ・渋川祥子・下村道子共著 同文書院(2003)
「家庭総合 
明日の生活を築く」(現行高校家庭科教科書)金田利子・鶴田敦子・西村隆男・
                岩田澄江・工藤夫美子・羽野みき子ら編著 開隆堂(2007)
新版 食物U」(高校家庭科教科書)松元文子・宮崎基嘉監修中教出版(1980)
「イラスト 調理BOOK」基本・応用・理論(高校家庭科副読本) 阿部サト・石橋和子・高橋ヨシ子・小宮山雅子・小山茂登子編修 実教出版
「クッキング・エチュードB 中国風の家庭料理」波多野須美著 講談社(1983)
おいしくできる・きちんとわかる 基本の家庭料理 和食編」本谷惠子監修
 主婦の友社(2005)
「ひとまねこざる」H.A.レイ文・絵 光吉夏弥訳 岩波書店(1983)
朝日新聞2008年2月5日朝刊 私の視点◆冷凍ギョーザ「食の安全」脆弱な日本 垣田達哉
朝日新聞2008年2月5日朝刊「昭和の日本」を二重写し ギョーザ事件から見えるもの 神里達博
朝日新聞2008年2月6日朝刊 WATCH  税・くらし・マネー 「安心」はタダじゃない
朝日新聞2008年2月6日夕刊 中国製・冷凍食品離れ 公表から1週間  止まらぬギョーザ禍
朝日新聞2008年2月8日朝刊 卵とご飯 混ぜてエコチャーハン  CO2 25%も減らせます
日本経済新聞2008年2月6日夕刊 冷食不安が家計を直撃 
            手間もコストも上昇 ギョーザ中毒事件 生活モニターどう行動
日本経済新聞2008年2月6日朝刊 ギョーザ中毒事件1週間 
            「食の安全 見直したい」慎重に店選び/弁当を工夫