オトナの食育 基礎編 第3回 
2007/12/10号掲載    千葉悦子(高28)


野菜を食べるために No.3「ゆでる その3 いものゆで方」
 

 

 
 いもは野菜に分類しないことが多いですが、八百屋やスーパー・デパートの野菜コーナーにありますし、精製した穀類と違い、ビタミンや無機質などの微量栄養素や食物繊維の供給源となりますから「野菜を食べるために」の「ゆでる」の説明に加えたいと思います。
 家庭科で長年教えてきたことの一つに「いものビタミンは熱による損失が少ない」があります。たとえば「調理学」p.133に「サツマイモを60分蒸した場合にもビタミンC含量に大きな変動はみられない。」とあります。
 また、いもは冷蔵庫に入れないで常温で保存できますし、じゃがいも・サツマイモは特別な銘柄を除き比較的安価ですから、日常食としてもお薦めです。
 いもをゆでたり煮たりするとき、沸騰したところに入れるのでなく、水からにしましょう。周りだけが煮えて中心部が煮えていないとか、中心部が煮える頃に周りが煮崩れることがないようにです。特に、大きめにいもを切ったときは、きちんと水からにしましょう。小さめに切る場合は、それほど気にしなくても大丈夫です。豚汁とかつくるとき、切れたものからどんどん鍋に入れて、サツマイモを煮立った中に入れても、問題ないでしょう。
 ところで、私は豚汁といえば里芋と思い込んでおりましたが、自分が住むマンションの餅つき大会で、他の奥様方が作ってくださった豚汁にサツマイモが入っていて、夫と「案外おいしいね」と驚きました。中年になりましても、身近な食べ物について発見があるということを知りました。
 年末には栗きんとんをつくるために、サツマイモをゆでることもあるでしょう。また、お弁当や普段のおかずとして、サツマイモのレモン煮とか和風の煮物とかするかもしれません。そういう場合も、熱湯からでなく、水から加熱してください。その方が、サツマイモの糖化酵素が働く温度帯の時間が長くなり、砂糖をあまり入れなくても、より甘くおいしくなります
 なお、本格的なポテトサラダの作り方は、『オトナの食育』本編第5回に書きました。
 里芋やそれに近い八つ頭やエビいもなどを煮るのも、正月らしいですね。こんなことを書くと「良いご身分ね」と冷笑されそうですが、里芋やそれに近いいもは、特に良いものを選んで購入されることをお薦めします。というのは、「安かろう、悪かろう」なのでしょうか、安いものは大抵、廃棄する割合が多いと経験的に思うからです。今時、時間的にゆとりある主婦などまず存在しないでしょう。幼い子がいたり、PTAや地域の用事をしたり、仕事もしたり、介護があったりです。可処分時間が少ない中、素材から作るのですから、下ごしらえに時間を取り過ぎないようしたいものです。
そういうとき「切ったら悪い部分ばかりの里芋だった」では、やる気がなくなります。しかも、失った時間は誰も補償してくれません。見るだけで良い悪いが判断できれば理想的ですが、無理な場合は、いもに限らず良い品をいつも置いてある店が良いでしょう。
 あと、私が学生時代「調理学」の講義で習い「知らなかった!」と思いましたのは、「いもがやわらかくなるまで、温度を下げない。下げるとその後どんなに加熱しても、やわらかくならない。」です。「調理と理論」p.158に「ごりいも」として記述があります。
12月は、料理中にお届け物や電話があるでしょうが、火事を出さないように、上手く対処しましょう。
 皆様、飲み過ぎ食べ過ぎで調子を悪くしないように気をつけて、どうぞお元気で新しい年をお迎えください。
 
引用文献等
スタンダード栄養・食物シリーズ6「調理学」畑江敬子・香西みどり編 東京化学同人(2003)
「調理と理論」新版 山崎清子・島田キミエ・渋川祥子・下村道子著 東京同文書院(2003)
おもな参考文献等
「五訂増補 食品成分表2006」香川芳子監修 女子栄養大学出版部 (2005)