オトナの食育 資料編 第8回 2007/7/10号掲載    千葉悦子(高28)


 お弁当のすすめ その4

 

      
 皆様いかがお過ごしでしょう?
 私は、人様に調理実習を教え、そのレポートの採点や講評に追われ、日本家庭科教育学会大会に6月30日・7月1日参加し、翌日は講義で・・・、といった私にとってハードな日々を送っております。それで、珍しく2日続けてコンビニおにぎりの世話になりました。2日目は、おいしそうなお弁当があるといいなと思ったのですが、油が多い中食・外食特有の風味を思い浮かべると、暑くて疲労しているときには「選ぶのではなかった」と後悔しそうなものしか置いていなかったので、おにぎりにしました。
 締め切りに追われ、どうにも時間がないときは、たしかに「便利な」コンビニ弁当ですが、「コンビニ弁当16万キロの旅」を読むと、この便利さの中にある光と影を考えさせられます。今回はこの本を紹介しながら、お弁当をはじめとする日常食についての私見を書きます。
 コンビニ弁当は売れているようです。同書p.22によると、1つのコンビニに1日9台の配送車が来て、お弁当は1日3台だそうです。p.27によると、じっさいに売れるお弁当の数は、店によりますが、探偵団が取材したいくつかのお店の平均はだいたい1日130個くらいということです。
 さらにp.70には次のようにあります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 おおざっぱな計算ですが、「和風幕の内」弁当を作り上げるのに、食材は
あわせて約9万5000kmの旅をしてきたことになります。これはおよそ、
地球を2周半近く移動したキョリに相当します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 食料自給率が穀物ベースで28%、カロリーベースで40%という国に住んでいるのですから、ある程度は分かっているつもりでしたが、このような数字が出てきますと、改めて、実家のお経に出てくる「罪障消滅」などということばが身にしみます。公立学校では宗教教育はできないとはいえ、「いただきます」「ご馳走様でした」と言うことが、どうして大事なのか、園児・児童・生徒・学生それぞれの発達段階に応じて説明をしてゆく必要があると思います。
 単に「お百姓さんが汗水たらす」ということを教えるだけでなく、上記のような「フードマイレージ」(食料の輸入量×輸送距離)の概念も伝えてゆきたいものです。むろん、いくら近くで栽培しても、莫大なエネルギーを使ってハウス栽培で夏野菜や南国のフルーツなどを冬に作るという問題も合わせて考える必要もありますが・・・。
 「コンビニ弁当16万キロの旅」という本は、少し難しい漢字には丁寧にルビがふってあり、楽しいイラスト満載、小学生にも読めそうです。小中学校の図書室や、地域の図書館などに置くと良いと思います。夏休みの理科に限定されない自由研究について何も思い浮かばない場合、まずこの本を読んで、その子が興味を持ったことについてさらに詳しく調べてまとめるというのも、すばらしいのでは?と思います。
 手作り弁当にしても、フードマイレージの考え方をする場合、満点近くにはとうていならないでしょうが、少しでも「持続可能な社会」に向けて理想的な内容にしたいものですね。
 今年の6月の関東支部同窓会で、韮高26回卒、山下正行氏(昨年総会の講演者、農林水産省にご勤務)とお話しさせて頂きましたとき「(国民の皆様が)あと1日1膳ご飯を食べてくれればね。」ということでした。そういう意味でも、ご飯をベースにした手作り弁当は、大きな価値があると思います。

第8回のおわりに
 参考文献は、必ずしも全面的に賛成できる内容でない場合もありますが、少なくとも部分的には参考になると思うものです。
 宣伝めいて恐縮ですが、先日の日本家庭科教育学会大会に間に合うように、冊子「とことん家庭科」―ありそうでなかった「調理実習の研究」―を作りました。
私が14年余り所属する『家庭科の授業を創る会』という私的勉強会の現会員12名で執筆しました。ここ3年間、学会大会でのポスター発表をして参りまして、そのプロセスを主に書きました。A4、91ページ、300円です。印刷代だけで500円近いですが、家庭科教育学会関東支部の研究助成を2年間頂けたので、この価格です。
 家庭科関係のお仕事の方などで、ご興味のある方は、28回生千葉悦子に連絡お願いいたします。なお私の住所等は、同窓会名簿でご覧ください。
 暑い時期ですので、皆様、消費期限や賞味期限表示だけに頼らず、五感を使って確かめることもお忘れなく。どうぞお元気でご活躍ください。

引用文献
「コンビニ弁当16万キロの旅」食べ物が世界を変えている 
     千葉保監修 コンビニ弁当探偵団 文  高橋由為子 絵 太郎次郎社エディタス (2005)
参考文献
シリーズ 生活をつくる家庭科「第2巻 安全・安心な暮らしとウェルビーイング」
     日本家庭科教育学会編 ドメス出版 (2007年6月)
「食品の裏側」みんな大好きな食品添加物 阿部司著 東洋経済新報社 (2005)