オトナの食育 資料編 第6回 2007/5/10号掲載    千葉悦子(高28)

お弁当のすすめ その3
主食3:主菜1:副菜2を基本に、バランス良く


 良い季節になりました。私の住まいのベランダに挿し木で増やした赤いバラが咲き、月下美人のつぼみがたくさんついています。


 前回、米を炊くにあたり前の晩から浸水しておくとか、朝から夕食用の米を浸水しておくとき、冷蔵庫に入れるとよいと書きました。また、東京の水なら浄水を使うのも一方法といったことも書きました。が、浄水ですと、塩素がなく水が腐りやすいので、冷蔵庫に入れておくことをお薦めします。冷蔵庫がいっぱいで入れられないときや、タイマーをかけておきたいときは、これから気温が高い時期になるので浄水では心配です。まず衛生面を確保してから、おいしさを考えたいものです。


 今回は女子栄養大学教授・大学院教授、足立美幸先生と高知大学教育学部教授、針谷順子先生の「
312 弁当箱ダイエット法」を紹介して、栄養バランスの良い弁当の具体的な方法を提示します。

 弁当箱を上から見た面積が、ご飯が
3、おもなおかずが1、その他のおかずが2の割合が良いということです。本書p.13に次のようにあります。
 主食・主菜・副菜を312の表面積比に組み合わせると、1食に必要なエネルギーや栄養素を適量かつバランスよくとることができます。「主菜1」なら脂質やたんぱく質をとりすぎる心配はなく、「副菜2」なら1350g以上といわれる野菜の摂取目標に近づきます。

 
「オトナの食育」本編で書きましたが、ある程度しっかりご飯を頂くことは、脂質の摂り過ぎを防ぎます。おかずが多いほど良いわけではありません。 

 たんぱく質を必要量確保することは大事ですが、肉や卵が多過ぎると脂肪を摂り過ぎることになるし、魚にしても多過ぎると、おなかがいっぱいになり、野菜・豆・いもなどを食べられなくなります。


 日本人は、なかなか野菜1350gを食べられないものなので、主菜が1で、副菜が2というのは、なるほどと思います。企業は「野菜を350g食べられないので、当社野菜ジュースを!サプリメントを!」と宣伝しますが、その前に、副菜を多くすることを実行したいものです。

 同書
p.1415の「同じ調理法のおかずを重ねない」のところに
油脂を多く使った料理は「1品」まで塩分の高い料理も「1品」まで
とあります。もっともですが、正直私の作る弁当はそれを守れていません。
だからなのか、運動不足もあり、夫婦二人とも全体的にはやせているのに、近頃ウエストの辺りが怪しいです。発育期の子どもならともかく、中高年の弁当なら、足立先生が20年以上研究してこられた説を素直に受け取る方が賢明でしょう。

 とはいえ、
4月号にも書きましたが、あまり厳密に考えると、幼稚園・中高校生の休むわけにいかない毎日のお弁当作りが苦痛になりそうですから、およその目安と考えるおおらかさも必要でしょう。

 なお、弁当箱のサイズについても同書が指摘しています。
p.6
弁当箱の容量(ml)=1食に必要なエネルギー量(kcalとあります。

 たとえば私は、3049歳女性の基準体重52.7kgに近いので、それを元に計算します。基礎代謝量(動かず・考えず、生きているだけで必要なエネルギー量)が1,140kcal、身体活動レベルがふつう(座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤・買物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合)ですから、1.75を掛けます。
1,140×1.75=1,995kcal)です。これが私のおおよその1日のエネルギー量ですから、3で割ると、昼食1食分くらいになります。
1,995÷3665kcal)です。私のいつも使っている弁当箱は640mlですから、およそのところは、合っているようです。量は詰め方にもよりますが、足立先生は、すき間なくきっちり詰めるようにと書いていらっしゃいます。

 中学生男子の場合、個人差が大きいですが、基準体重
50.0kgですと、基礎代謝量が1,550kcalで、運動部なら身体活動レベルが高いので、2.00を掛けます。1,550×2.00=3,100kcalです。これを3で割ると、1,033kcalです。
弁当箱が何と1000ml以上必要というわけです。

 中高校男子の「どか弁」が理解できますね。我が家の中
3男子が、しょっちゅう「おなかが空いた」状態なのもうなずけます。正直なところ、給食のある学校に通っていますので助かります。

 ところで、
4月号に書きました「粗食のすすめ お弁当レシピ」の幕内秀夫氏が、豆や豆製品種実のおかずを薦めています。が、少し考えないとそういう食品をおかずにするのは難しそうです。例を少し挙げます。

 胡麻和えとか、胡麻みそ和えも煮物・炒め物だけになりやすいとき、変化がつくと思います。たとえば、いんげんの胡麻和えなら、それほど汁気がなくて弁当向きです。青菜で作るときは、よく水気を絞ってから胡麻和えにしましょう。


 ピースご飯は広く知られているでしょう。塩分を気にするなら、普通の白いご飯の上に、塩茹でしたグリーピースを飾るのも良いのではないでしょうか?その方が緑鮮やかに仕上げやすいです。


 この季節は、グリーンピースやソラマメがおいしいですね。ソラマメの塩茹でも簡単でお弁当の彩りを良くしますね。


 来月は韮高関東支部同窓会があります。毎年、笑顔で迎えてくださった故村上信夫氏の「帝国ホテル総料理長のおいしい家庭料理(上)」のグリーンピースのボヌ・ファムのページから書きます。
 付け合せの王様はじゃがいもですが、その次に来るのが、このグリーンピース。王様の次ですからクイーンです。(中略)
 ベーコンと玉ねぎとレタスでくた〜っとなるくらいよく煮ると、それはおいしいものですよ。付け合わせどころか、おかずにしたいものです。

 私は学生時代、調理実習でこのグリーンピースのボヌ・ファムを初めて食べましたとき、すごく感動しました。おいしかったし、グリーンピースのこのようなおしゃれな使い方を知らなかったからです。当時のノートを見ると、エビが入り、レタスは使っていません。隠し砂糖を使うところは村上氏のレシピと共通です。ノートの方は固形スープの素を少し使っています。
ベーコンから塩分が出るので、味付けは濃くならないように注意しましょう。

 「煮物」というと、和風のしょうゆと出しの味付けになりがちですが、たまに洋風煮物はいかがでしょう?弁当のときは、汁気は入れないように盛り付け、家で食べる場合は一緒に食べると、水溶性のビタミンも摂取できて良さそうです。もっとも、感動したのは私だけで、家族はあまり好きではないようです。どう料理しても、グリーンピースが好きでないなら、好まれないのかもしれません。

6回のおわりに
 自分が中高校生の頃、母が作ってくれた弁当を思い出すと、ブック弁当の半分より多くご飯が入っていたような気がします。ご飯が弁当箱の半分というのは、私のような中年にとっては、かなり贅沢な感じがします。皆様はいかがでしょう?

 「
別冊 暮しの手帳 おべんとう」のp.10〜11には、ご飯が半分より少し多くするようにと載っています。そのあたりは、個人に合わせてゆくことが大事と思います。
 312 弁当箱ダイエット法」も「別冊 暮しの手帳 おべんとう」も、おかずのヒント満載。ご自分にピッタリくる本を参考にされてはいかがでしょう。
 なお、「○○ダイエット」の類は、たいがい栄養学を無視した無茶なものですから、妄信しないようにしましょう。今回とりあげました「312 弁当箱ダイエット法」は例外です。「ダイエット」ということばを書名に入れると、大勢の方に手にしてもらえるからでは?と推察されます。

 今回、細かいことを書きましたが、たいがいの外食や市販弁当より、手作り弁当の方が油少な目の健康的なものになるのですから、作り続けることを優先していきましょう。

引用文献等
312 弁当箱ダイエット法」足立美幸・針谷順子著 群羊社(2004
「帝国ホテル総料理長のおいしい家庭料理(上)」村上信夫著 
   中公文庫 
ビジュアル版700 (1995

参考文献等
5訂増補 食品成分表 2006」女子栄養大学出版部
別冊 暮しの手帳 おべんとう」簡単おかず200品と50の詰め合わせ 
   
暮しの手帳社 2003年版