オトナの食育 資料編 第16回(通巻67回)2011/11/10号掲載 千葉悦子(高28)
「中学生のための 家庭科わくわくワーク集」<改訂版>出版
サツマイモを簡単で素敵なおやつに〜自給率向上に無理なく貢献〜
今年10月下旬、共著で「中学生のための 家庭科わくわくワーク集」<改訂版>を教育図書から出版しました。伊藤葉子千葉大学教授編著で、私は食分野の改訂を担当しました。初版は武藤八恵子先生という、私が学生時代、家庭科教育法を教えてくださった恩師が監修し、食分野も執筆され、私は協力したのですが、先生が亡くなられたので、担当が回って参りました。 来年度から中学の学習指導要領が改訂されますし、食については、年々新しい技術や問題が出て来ます。また、個人がリスクを等身大に捉えて、適切な選択をすることは、社会全体にとっても有益であると考え、ワークの解説を新しくしたいと願っておりました。今回、念願がかないました。 なお、ワークと申しましても、生徒1人1人に持たせるのではなく、生徒向けのワークのページをマス刷りして使い、解説のページは教員向けとなっております。 なぜ「教員向け虎の巻」が必要か? 学校現場をご存じない方は「教員向け虎の巻!けしからん。」と感じられるかもしれませんが、家庭科は単位数が少ないので1校に1名の場合が多く、新任教諭も1人で授業を作らなくてはなりません。その上、地方自治体によっては、音楽の先生などが「女性だから」という理不尽な説明で、家庭科も教える実情があるので、こういう本が必要です。もちろん、そういう状況を改めることが大事で、多くの方々に家庭科の専門性をご理解頂くよう「オトナの食育」を連載してはおりますが、すぐには状況を変えられないので、このような本が求められます。 食以外の分野も改訂し、新指導要領に合わせて「消費生活・環境・地域・国際理解」の分野のワークを新しく入れました。ご一読やご活用をお願いいたします。 普通のサツマイモを簡単で素敵なおやつに〜自給率向上に無理なく貢献〜 自分のかかわった本の紹介だけでは申し訳ないので、私が考案したレシピの紹介もします。 私の上2人の子どもが幼い頃「小食な子どもに栄養バランスの良いおやつを用意する」という観点や、「ありきたりのサツマイモを、いかによりおいしく、かつ、簡単に料理するか?」とう視点から、思いつきました。そういうわけなので、太り過ぎを気になさっている方は、食べ過ぎないようにしてください。 今年の初秋は、野菜が品薄で高かったですよね?そういうとき、不足しがちな食物繊維や各種ビタミン・無機質が豊富で、国産の安価な普通のサツマイモは強い味方です。とはいえ、いつも同じ風味では飽きてしまいます。そこで、風味を変え、栄養バランスを向上させる提案です。 ○クリームチーズを使ったサツマイモのおやつ 材料・・・底面の直径5cm程度のアルミカップ4つ分 ・サツマイモ 100g(皮をむいたときの重さ) ・クリームチーズ 10g〜20g(サツマイモの重さの10%〜20%) ・牛乳 20CC(大さじ1と小さじ1) ・グランマルニエ酒 1CC程度(なければ入れなくてよい) 作り方 (1)サツマイモを洗い、3cm程度の輪切りにし、皮はやや厚めにむく。 切ったイモを水に入れ、褐変を抑え、仕上がりをきれいにする。 材料分量を決めるために、重さを量る。 (2)10分程度、竹串がすっと入るくらいまで蒸す。昔ながらの蒸し器でなくても、 簡易なやり方でよい。 (3)熱いうちにつぶし、クリームチーズをざっと混ぜてから、牛乳などを混ぜる。 なお、冷蔵庫から出したてのクリームチーズがかたくて混ぜにくい場合、 10gにつき500ワットの電子レンジを10秒位かける。 クリームチーズの量は好みによる。牛乳の量は「かたさ」を見ながら調節する。 いもの水分によるので「加減」する。 (4)アルミカップに厚さ1cm強程度に入れて、グリルやオーブントースターで焦げ 過ぎないように焼く。 「スイートポテトのクリームチーズタイプ」です。従来のスイートポテトは、手が込み過ぎて日常生活では作る気になれません。しかも、いもを裏ごすと食物繊維が減りますから、今回はつぶすだけにします。また、普通のスイートポテトはバターを使うのに対し、クリームチーズに変えると脂質を減らせ、日本人が不足しがちなカルシウムを少しとれ、さつまいもに不足する他の栄養素も少しずつとれるという利点があります。 その上、クリームチーズを混ぜると、サツマイモの外側に多いヤラピンやポリフェノールの影響が少なく、比較的きれいな色に仕上がります。たとえば、正月の栗きんとんを作る際は、美しい黄色になるように、さつまいもの外側を6mm程度、非常に厚くむくのがコツですが、それでは食料廃棄が多くて日常食としては問題です。害があるわけでなく、むしろ便秘の改善や健康に良い機能性成分と考えられるので、捨てるのはもったいないです。 売り物のスイートポテトにある、卵黄を水でのばしたものを上に塗る手間は省くので、写真は「・・・」と誉められず素朴ですが、子どものおやつや家族のティータイムにいかがでしょう?個人と社会、両方について、嗜好・健康・経済・労力・環境・食糧自給率向上等に関して、何拍子もそろったおやつであると自負します。ノーベル平和賞受賞者の故マータイさんのように、「出来ることから始める」ことは、個人として大事と思います。 最近はやりの「安納いも」とか、「鳴門金時」や栗きんとんに最適と言われる「金時」といった特別なサツマイモでなく、ごく普通の安価なものが味については洗練されたおやつとなります。 なお、チーズが嫌いな方は、「白みそ」をいもの10%と、牛乳の代わりに「みりん」を使うタイプをお勧めします。塩分が白みその約2倍含まれている普通のみそでは、この分量では塩けが強過ぎますので、上品な風味の「白みそ」がお勧めです。 皆様どうぞお試しください。 ■主な参考文献等 「中学生のための 家庭科わくわくワーク集」<改訂版>伊藤葉子編著 教育図書(2011) 「食品成分表 改訂最新版」女子栄養大学出版部(2011) 「地域食材大百科 第1巻」農文協編 農文協(2010) 「スタンダード栄養・食物シリーズ5 食品学 第2版」―食品成分と機能性― 久保田紀久枝・森光康次郎編 東京化学同人(2008) 「スタンダード栄養・食物シリーズ6 調理学」畑江敬子・香西みどり編 東京化学同人(2003) 「新版 調理と理論」山崎清子・島田キミエ・渋川祥子・下村道子著 同文書院 (2003) |