「心のコンサート」の開催にあたって           
          
           心のコンサート実行委員長  高35回  井上 達也

 「特別支援教育」って、ご存じですか?現在の障害児学校、障害児学級に加え、普 通学級の在籍する特別に支援を要する子(軽度発達障害児)まで対象を広げ、その子 の発達を支援していこうとする教育です。
 さて、私事ですが、この3月に「特別支援教育応援サイト カメの歩み」を立ち上 げました。( http://www.sienta.org/ )実は、このページは、「心のコンサート」 を実施するために立ち上げたページです。現在は、だいぶ内容が充実し、コンサート 告知よりむしろ、特別支援教育のインターネット上のコーディネターとしての性格の ほうが強くなってきました。特別支援教育については、次回に詳しくお話をしたいと 思います。  
では、「心のコンサート」っていったい何のでしょうか?このことを知ってもらう ために、まずHPから「開催の趣旨」を転載してみます。

 「心のコンサート開催の趣旨」の一部抜粋  
きっかけは、「ひいちゃん日記」というADHD(注意欠陥多動性障害) のお子 さんを持つ父親のホームページにアクセスしたことです。そこで紹介されている「光 への手紙」いう歌を聴き、涙しました。そして、ひいちゃんパパの仲介で、その曲を 歌ったバンド「響きの杜バンド 人力車」のコンサートを実施できることになりまし た。  
このコンサートを通して、こうした障害を持つ方々への理解と支援の輪が広がるこ とを期待しております。でも、難しいことを考えずに、まずは感じてください。コン サートを楽しんでください。そして、心の中に暖かいものを育んでお帰りください。  
心の奥底に芽生えた小さな芽は、やがて大きく育ち、大きな花を咲かせるかもしれ ません。途中で枯れるかもしれません。何十年も眠り続け、やがて芽を出すかもしれ ません。それでいいと思っています。「理解することより感じること」「100粒蒔 いた種のうち、1粒が芽を出せば」こういった障害者福祉の原点に返って、実行に移 そうと思ったのが、このコンサートです。蒔く種は多いほど、芽を出す確率は高くな ります。一歩だけ、足を踏み出して、共に感じあってみませんか。  

 「ひいちゃん」は島根県に住む現在小学校2年生の男の子です。注意欠陥多動性障 害と高機能自閉症を併せ持つ子ですが、普通学級で元気に過ごしています。その様子 は、「ひいちゃん日記(http://plaza.rakuten.co.jp/hiithan)」をごらんくださ い。そして、このHPに載った1編の詩に曲がつきました。

「光への手紙」ひいちゃん パパがひいちゃんへの想いを綴った何ともせつない心にずしんと響く歌です。HP上で 視聴できるので、ぜひ聞いてみてください。 (http://plaza.rakuten.co.jp/hiithan/16005)  

光への手紙              作:ひいちゃんファミリーさん

「お父さん お父さん」
君はいつもそう呼んでしたってくれる
「お父さん 大好き」
その言葉だけで父さんは満たされるよ
同じ年の子よりも 上手にはしゃべれないけど
一生懸命 君の言葉で話してくれるよね いつか 
父さんが自分の仕事をしているときにやって来て
何かを作ってって言ってきたよね
君は懸命に説明するんだけど 
父さんよくわからなくて いらいらしちゃって 
つい君につらくあたってしまった
そんな父さんなのに 君はニッコリ笑って
「お父さん ありがとう」って言って部屋を出て行った
父さんその後すごく後悔したんだ
自分の用事なんてあとまわしにして
もっとしっかり君と向き合えばよかった・・・
ごめんよ
言いたいことが伝わらなくて 
歯がゆい思いをしているのは そうだよね 
父さんよりも君の方なのに
父さんは今 璧にぶちあたっています
押しつぶされそうです
君の大好きなウルトラマンのように
優しさも 強さも 勇気もありません
すぐ怒っちゃう父さんでも 
弱い父さんでも 好きですか
いくじのない父さんでも
頼りのない父さんでも 好きですか ねえ 光
いつか君が 父さんの子でよかったって 思ってくれる
そんな父親になりたいです
そして父さんは 君の父さんになれてよかったと
今日も昨日も そしてこれからもそう思っています
そして父さんは 君の父さんになれてよかったと
今日も昨日も そしてこれからもそう思っています    

この詩の想いを受け止め、曲をつけ、歌い上げたのが「響きの杜バンド 人力車」です。このバンドは千葉県を中心に活動するボランティアバンドです。メン ーは5人。養護学校の先生であったり、福祉施設の職員であったりします。 (http://plaza.rakuten.co.jp/jinrikisha/)何曲か視聴できるので聞いてみてくださ い。(http://www5e.biglobe.ne.jp/~academyr/acr/hatubai/hatubai.html)  
実は、このバンドの主なテーマは、いじめ、不登校、ひきこもりなどです。何故な ら、施設で実際に働き、心に傷を持つ子供たちと接しながら、共に笑い、共に傷つ き、共に励まし合いながら、生まれてきた曲だからです。子供の、親の、教師の生の 心の叫びに曲をつけて歌っているのです。その歌が、徐々に共感を呼び、人を引きつ け、施設内の歌からみんなの歌へとなっていきました。  
今回の「心のコンサートin三島」は、この人力車の静岡発のコンサートです。ただ し、これまでの人力車さんのコンサートと大きく趣を異にすることがあります。それ は、テーマが「特別支援教育」であるということです。ですから、単なるコンサート ではなく、「十人十色なカエルの子」という軽度発達障害を理解するための絵本の朗 読、障害にもめげず自分の生きる道を明るく力強く歩む地元の方の絵や詩の紹介も計 画されています。そして最後に、私が作詞した「ぼくは生きている」が歌われます。 どんな曲になるかは、私もまだ知りません。ですから、このコンサートを一番どきど きしながら待っているのはほかならぬ私自身なのです。

「ぼくは生きている  〜特別支援教育応援歌〜」   

ぼくは 生きている
せいいっぱい生きている

小学校の入学式 
ずっとずっと泣いていた
人がいっぱいの 体育館
マイクの声が響く 体育館
ほかの人には 分からないかも しれないけど
本当に 怖かったんだ
本当に つらかったんだ

普通の人と ちょっと違った ぼくの心
車を見ると 気になって仕方がない
漢字や 計算よく分からないけど
車の種類は すぐ分かるんだ
それって変かな おかしいのかな

ぼくの心は 白いキャンパス
そんな心に 絵を描く
人から見れば 下手かもしれない
立派な絵だって 描けやしない
ぐちゃぐちゃ ダメって 人はいう
でも、そのぐちゃぐちゃの中 ぼくは生きている
自分の世界で 自分の歩みで
せいいっぱい 生きているんだ

ぼくは 学んでる
ゆっくりゆっくり 学んでる
1年生の7月に はじめて言葉が口に出た
ずっと話せなかった ぼくだけど
心を伝えられなかった ぼくだけど
心と言葉 つながってきた つながってきた
本当に 嬉しかったんだ 本当に 楽しくなったんだ

普通の人と ちょっと違った ぼくの心
言葉が口から いっぱいあふれてくる
いつでも どこでも 止めることができないけど 
ぼくの 心は叫んでいる
話せるだけで 楽しいんだよ

ぼくの心は 大きな半紙
そんな心に 字をつづる
人から見れば 下手かもしれない
立派な字だって 書けやしない
ゆっくり進む ぼくの時間 でも、
そのカメの歩みで ぼくは生きている
自分の世界を 自分の道を ゆっくりゆっくり 生きているんだ    

 実は、私は小学校の障害児学級を担当する教員です。この詩は、私と子供の日々の ふれあいの中から生まれたものです。障害を持って生まれたこと、障害を持って生き ること、障害を持つ子と接すること。障害者を、障害児教育を理解してほしいなどと いう気持ちでコンサートを開くわけではありません。金銭的に支援するためのチャリ ティーでもありません。共に生きる仲間として、何かを感じてもらえればそれで十分 です。そんなさりげない日常の中でほっと息をつくようなそんな時間を共有できた ら、それだけで素敵なことではないでしょうか。  

最後に、コンサートの詳細をお知らせします。
 
8月28日(日) 2時開演
三島市生涯学習センター講義室 
定員150名 入場無料


(運営カンパ金は受け付けております。
必要経費を除いた残り全額は、自立支援組織 「人力舎」に寄付させていただきます。)    
なお、ホームページより案内のパンフをダウンロードできるので、印刷してまわり の人に一声かけて分けてくださると嬉しいです。当日、コンサートに来る、来ないで はなく、心のふれあいの輪が少し広がっただけで十分意義深いことですから。当日、 来られなくても、後日、三島ケーブルテレビで放映されます。詳細は未定なので、決 まり次第、HPでお知らせします。
   
次回は、特別支援教育応援サイト「カメの歩み」の紹介を中心にお話をしたいと思 います。

                   <龍城のWA!に戻る>